No.112:廃棄物(第5回)

廃棄物(その5)

No.111:廃棄物(第4回)

廃棄物(その4)

No.110:廃棄物(第3回)

廃棄物(その3)

No.109:廃棄物(第2回)

廃棄物(その2)

No.108:廃棄物(第1回)

廃棄物(その1)

No.107:風力発電(第7回)

風力発電(その7)

No.106:風力発電(第6回)

風力発電(その6)

No.105:風力発電(第5回)

風力発電(その5)

No.104:風力発電(第4回)

風力発電(その4)

No.103:風力発電(第3回)

風力発電(その3)

No. 093 update 2005.08.02 PDF版(136 kbyte)

バイオマス(第5回)

バイオマス利活用例(1)

 今回からバイオマス利活用例について考えてみたいと思います.バイオマス利活用として最も代表的な例は製紙業における「黒液」のエネルギーとしての利用です.供給サイドの新エネルギーとしてのバイオマスは以下のとおりであり,現時点でも最も有効活用が行われています.

 製紙産業界における回収黒液によるエネルギー供給は31%にも及んでおり,既に拡大の余地はほとんどないほどに活用されています.ちなみに紙・パルプ製造工程でのエネルギーは,大部分が蒸気や電力の形で消費されているようです.

供給サイドの新エネルギーとしてのバイオマス 
  
                               黒液・廃材等※3   バイオマス熱利用   

2002年度                       471万kl           - 
2010年度レファレンスケース     483万kl           -
2010年度現行対策推進ケース     483万kl           67万kl
2010年度追加対策ケース         483万kl           308万kl※1
2010年度現行大網目標           494万kl           67万kl 

※1 輸送用燃料におけるバイオマス由来燃料(50万kl)を含む。
※3 黒液・廃材等はバイオマスの1つであり、発電として利用される分を一部含む。
(出典:資源エネルギー庁ホームページ)


製紙産業における使用エネルギーの構成比
(2002年度)

化石エネルギー       62.6
 重油           (25.5)
 石炭                    (22.2)
 購入電力                ( 9.4)
 その他                  ( 5.5)

再生可能/廃棄物エネルギー 37.4
 回収黒液                (31.0)
 その他                 ( 6.5)

(出典:日本製紙連合会ホームページ)


 ここで「黒液」とは何かということを考えてみる必要があります.日本では紙の原料となるパルプはKP(クラフトパルプ…ドイツ語で“強いパルプ”の意味)法と呼ばれる方法で製造されています.

 代表的な原料は木材(チップ)です.原料となる木材(チップ)は,セルロースが主成分の繊維部分と繊維同士を接着する役割をもつリグニンなどで構成されています.KP法は,これらの原料チップに薬品(「白液」と呼ばれています)を加え,蒸解釜を用いて高温高圧下で蒸煮し,繊維をとり出します.繊維分はパルプとして洗浄工程・漂白工程を経て,紙の原料として抄紙機に送られます.

 一方,繊維以外のリグニンなどが「白液」中に溶け出し,「黒液」と呼ばれる溶液となります.このKP法で回収される「黒液」(濃度20%程度)は,このままでは燃料として利用できず,蒸留器(エバポレーター)で70%程度まで濃縮して回収ボイラー等での燃焼利用されています.

「黒液」中の燃料成分を燃焼させ,発生エネルギーは蒸気・電力として工場内で利用することになります.一方,「黒液」を燃焼させた後に残る残渣は水溶性で「緑液」(スメルト)と呼ばれるものとなります.これを,化学処理により「白液」にもどし,蒸解工程で再利用しています.ここでの薬品回収率は98%以上に達し,新しい薬品の補給は少量で済みます.


 ところで世界で一年間に生産される紙の総量は約2億7700万トンに達し,最大の生産国はアメリカで年間約8100万トン,一人当たりの年間消費量は約332kgに相当します.日本の生産量はアメリカにつぐ第2位で約2,966万トン,一人当たりの年間消費量は約239kgです.

 また,生産に占める古紙消費率でみるとアメリカが約38%,日本は約53%となり,日本は世界でもトップクラスの古紙利用先進国になっています.(出典:http://www.ojipaper.co.jp/wonderland/labo/index.html)

 古紙からのパルプ製造は木材チップからとは異なる方法が用いられています.まず,家庭やオフィスから収集された古紙(新聞や雑誌,OA古紙など)は,「ベーラー」と呼ばれる機械で1,000kg程度の箱型に圧縮され,製紙工場へ搬入されます.

 これらの古紙は,まずパルパーと呼ばれる離解機に入ります.離解とは,機械と薬品の力によって紙を繊維状にほぐす工程です.次に、除塵工程(クリーナー)へ送られ,古紙に含まれる異物やゴミ(ホチキスなど)を取り除きます.さらにスクリーン工程でクリーナーで除去できない細かいゴミを除去します.

 その後,脱墨工程へ送られ,フローテーターと呼ばれる機械で繊維から薄利されたインキを気泡と共に液面に浮上させ,掻きとることによってインクを落とします.さらにシックナーと呼ばれる装置で脱水され,過酸化水素などで漂白された後,調整工程を経て原料として抄紙機へと送られます.
(出典:王子製紙ホームページ)


 私自身,「情報」を媒体とした事業を営んでおり,ある意味で「報告書」や「資料」が商品となります.このため「紙」の使用量も多く,「スリー・アール」の視点からは正反対の消費活動を行っています.

 確かに使用後の紙はリサイクル利用へ廻すことも行いますが,例えば印刷を急ぐことも多く,両面印刷による紙の消費量節約も十分ではありません.「紙」は大切に使うことを今一度,再考したいと思います.


 ところで余談ですが紙のことを調べている内に日ごろ何気なく使っている紙のサイズに関する情報がありましたのでご紹介します.私たちは紙の大きさとして“A4”とか“B4”と表現していますが,由来については知らずにおりました.

 紙の仕上寸法にはA列とB列があって,A列はドイツ工業規格(現在の国際規格),B列は江戸時代の公用紙「美濃紙(みのがみ)」に由来しているそうです.このため日本の役所の書類はB判が多いとのことです.

 また,紙の幅(短い辺),長さ(長い辺)の比率はA判、B判とも常に1:√2となっています.これは19世紀末のドイツの物理学者オズワルドによって提案された「ルート長方形」と呼ばれる形とのことです.このように幅と長さを1:√2にしておけば,A判,B判いずれの紙も長辺で半分に折りさらに半分に折ることを何回繰り返しても,相似形のまま面積が半分になっていくのでまったく紙に無駄がでないとのことでした.紙の世界は「資源」の有効利用の観点から実に参考になる話の宝庫という気がします.
(出典:【「おもしろい紙のはなし」(日刊工業新聞社)】)


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[文責:スリー・アール 菅井弘]

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