今回は「産業廃棄物」処理事業者の現状について考えてみたいと思います. 前号で記載したとおり廃棄物処理事業者は収集運搬事業が,廃棄物処理事業者の90%近くを占めており,残り10%の2/3が中間処理,1/3が最終処分という構成になっています.収集運搬業が多いのは,参入障壁が低く,兼業で新規参入する個人事業者が多いことに起因しています. さて,日本における産業廃棄物処理事業者の事業規模は決して大きなものではありません.若干データが古くなりますが,TKCの「TKC経営指標」による廃棄物処理業事業者1,706社を対象とした企業概要は以下のとおりとなります.廃棄物処理業の打上げと従業員数業種別 調査企業 売上高 従業員数 (件) (千円) (人)廃棄物処理業全体 1,706 204,873 17.1ごみ収集運搬業 208 196,854 18.7ごみ処分業 23 209,898 27.4清掃事務所 70 152,626 40.2産業廃棄物収集運搬業 233 254,707 15.9産業廃棄物処分業 236 364,297 15.6特別管理廃棄物収集運搬業 3 177,399 10.6特別管理廃棄物処分業 3 251,398 10.6(出所:TKC全国会システム委員会『TKC経営指標』2002年)(出典:長沢伸也,森口健生著,『廃棄物ビジネス論』,同友館) また,データとしては最新のものではありませんが,日本の産業廃棄物処理企業大手10社の概要を以下に示します. 社名 売上高 申告所得 従業員数 所在地 (100万円) (100万円) (人)1. (株)ダイカン 6,594 2,577 131 大阪市2. (株)ダイセキ 12,097 2,024 301 名古屋市3. 寿和工業 4,723 1,444 104 岐阜県可児市4. ひびき灘開発 3,812 1,265 51 北九州市5. (株)富山環境整備 3,014 980 38 富山市6. 太平興産 2,150 927 65 東京都7. (株)テクノ中部 21,051 816 696 名古屋市8. ミヤマ 12,476 718 660 長野市9. 向洋産業 980 673 30 大阪府茨木市10 杉田建材 3,320 672 40 千葉県市原市(出所:『会社年鑑』日本経済新聞社,2002年,p.1406)(出典:長沢伸也,森口健生著,『廃棄物ビジネス論』,同友館) 一方,米国における廃棄物処理企業大手10社の概要は以下のとおりです. 社名 年間売上高 従業員数 事業内容 (100万ドル) (人)1. Waste Management,Inc. 12,494 57,000 廃棄物処理 2. Allied Waste Industries,Inc. 5,707 32,500 固形廃棄物処理3. Republic Services,Inc. 2,103 12,000 廃棄物処理4. The IT Group,Inc. 1,447 7,000 環境保全サービス5. Waste Connections,Inc. 304 2,010 固形廃棄物処理6. Waste Holding,Inc. 242 1,741 固形廃棄物処理7. Clean Harbors,Inc. 234 1,459 有害廃棄物処理8. Duratek,Inc. 230 1,670 廃棄物処理9. McClain Industries,Inc. 141 700 廃棄物処理機器10.Indusrial Services of America 89 155 廃棄物処理 米国最大の廃棄物処理会社であるWaste Management社の2005年度の売上は13,074百万ドル(約1兆5700億円)、営業利益1,710百万ドル(約2,000億円)となっています.また,同社の事業概要(2004年12月31日現在)は以下のとおりです.操業区域 : 国内48州他顧客数 : 22,000,000操業中の埋立処分場 : 286ヶ所収集拠点 : 431ヶ所運搬拠点 : 381ヶ所収集&運搬車両 : 25,000台LNG- およびCNG-車両 : 400台リサイクル施設 : 119ヶ所従業員 : 51,000名 日本の産業廃棄物処理企業には急成長中の企業もあります.しかしながら,企業規模という観点からは,米国の廃棄物処理企業とは格段の相違があります.これは,事業としての社会的な認知度の違いにも一因があると感じています. 今後,日本においても廃棄物産業が社会において重要な役割を担っているという認識が一層向上し,若者にも魅力ある産業と感じられるようにするための施策が不可欠と考えます. |