No.002:将来の社会像(第1回)

将来の社会像(第1回)

No.001:発行にあたって

発行にあたって

No. 110 update 2006.08.1 PDF版(105.3 kbyte)

廃棄物(第3回)

廃棄物(その3)

 今回は「産業廃棄物」の現状について考えてみたいと思います.


 産業廃棄物の取扱いは通称『廃棄物処理法』(「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」)において, 廃棄物の排出抑制,再生利用,適正処理を進めるが定められています.

 日本における産業廃棄物の排出量は,平成15年度の実績では約4億1,200万トンと推計されています.この排出量を比重1(1立方メートルあたり1トン)で換算すると,東京ドーム(約124万立方メートル)の約332個分に相当するとのことです.

 ところで,廃棄物を排出する事業者を『排出事業者』と呼びます.排出事業者は,事業活動で生じた産業廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならないことが,前述の廃棄物処理法で定められています.工作物の建設や解体などの建設工事の場合は,原則として発注者から直接工事を請け負った者,いわゆる元請業者が該当します.


  国内における産業廃棄物の処理方法としては、全体の49%が再生利用(リサイクル)、44%が中間処理等での減量化、7%が最終処分と推計されます。

 再生利用(リサイクル)とは,不用物を処理・加工して,再び有用物として利用することをいいます.「再利用」,「再資源化」,「再商品化」と言われることもあります.中間処理とは廃棄物を減量・減容化,安定化,無害化,資源化することで,廃棄物の性状に応じて焼却,破砕,粉砕・圧縮、中和、脱水などが行われます.

 最終処分は,廃棄物を最終的に処分するために埋立処分等を行うことです.埋立処分は,廃棄物の無用な拡散や流出を避けるため,陸上や水面の限られた場所を区切って貯留構造物を造成し,廃棄物を埋立貯留し,年月をかけて自然に戻そうとするもので遮断型,安定型,管理型の3つに分類されます. 


 これらの産業廃棄物の処理に取組んでいる事業者を『産業廃棄物処理業者』と呼んでいます.

 まず,最初に産業廃棄物の「収集運搬」が必要です.これは排出事業所から出た産業廃棄物の性状を変えることなく中間処理施設や最終処分場などへ輸送することで,主として車両が利用されています.業を行うためには区域を管轄する都道府県知事または政令市長の許可が必要であり,収集運搬業の場合は産業廃棄物を積卸す場所でそれぞれ許可を取得しなければなりません.  

 また,実際に産業廃棄物の処理を行う施設を「産業廃棄物処理施設」と呼んでいます.産業廃棄物の脱水,焼却,中和,分解,破砕などの処理を行う中間処理施設や最終処分場をいいます.

 設置する場合は,処理業の許可とは別に都道府県知事または政令市長から施設の設置許可を受ける必要があります.処理施設の設置にあたっては,周辺地域の環境保全や周辺住民への配慮を目的とした調査や協議を進める必要があります.


 このように産業廃棄物は,「排出」,「収集運搬」,「中間処理」,「最終処分」等の一連の流れで適正な処理を行う必要があります.このような流れを明確なものとするための制度は「産業廃棄物管理票(マニフェスト)制度」です.

 この制度の基本は,あくまでも『排出事業者』が産業廃棄物の収集運搬・処分を委託する際に,処理の流れを自ら把握して不法投棄の防止など,適正な処理を確保することを目的とした制度です.


「廃棄物」処理は『排出事業者』の立場から見ると,できるだけ費用を抑制したくなる部分と言えます.再生利用(リサイクル)等をできるだけ実施すると,中間処理の費用は当然のことながら増加します.「処理費」や「処分費」は中間処理や最終処分の方法により異なりますが,一定の費用が要することは自明です.

 いずれにしても「産業廃棄物」の適正処分の責任は『排出事業者』にありますので,コスト面にばかり目を奪われるのではなく『産業廃棄物処理業者』の取組みを理解し,適正な費用で処理を委託することが不可欠です.このような基本原則が常識となれば不法投棄は自ずと減少すると考えられます.

[文責:スリー・アール 菅井弘]

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