今回は「風力発電の将来」について考えてみたいと思います. わが国では2004 年に経済産業省により「2030 年のエネルギー需給展望」が策定され,新エネルギーを含むエネルギーの長期需給見通しに関するケーススタディーが実施されました. また,新エネルギー分野においては,新エネルギー産業としての自立化を目指す「新エネルギー産業ビジョン」が2004 年に経済産業省において検討・発表されました. 風力分野においても上記「新エネルギー産業ビジョン」での将来展望を含める形で、2005 年にNEDOが、風力発電導入に関する長期の可能性(目標)と実現するために必要な対応策を検討した「風力発電ロードマップ」を策定しました. この中で提案された風力発電設備容量に関する目標は以下のとおりです:年度 導入目標 備考2010年度 300万kW (3,000MW) 現時点における国の設定目標(陸上のみ)2020年度 1,000万kW(10,000MW) 陸上620 万kW、洋上 380 万kW を予測2030年度 2,000万kW(20,000MW) 陸上700 万kW、洋上1,300 万kW を予測 設備容量としては,代表的な原子力発電所の出力は100万kW程度であることを考えると決して小さい数値ではないのですが,風力発電における設備利用率が20%台であるため,総発電量はどうしても小さい数値になります. 発電における国内総電力需要量に対する寄与率から見ると2004年実績で0.15%,2030年でも約3%程度と想定され、欧米主要国の目標レベルから見ても決して高い値ではありません. ところで,風力発電に熱心な国々上記10ヶ国の2001〜2005年までの動向を整理した結果は以下のとおりです.風力発電上位10ヶ国における動向(単位:MW) 成長率 成長率 2001 2002 2003 2004 2005 2004-2005 4年平均ドイツ 8,754 11,994 14,609 16,629 18,428 10.8% 20.9% スペイン 3,337 4,825 6,203 8,263 10,027 21.3% 31.9%アメリカ 4,275 4,685 6,374 6,725 9,149 36.0% 21.8% インド 1,502 1,702 2,125 3,000 4,430 47.7% 31.8%デンマーク 2,489 2,889 3,116 3,118 3,122 0.1% 6.0% イタリア 682 788 905 1,265 1,717 35.7% 26.5% イギリス 474 552 667 907 1,353 49.2% 30.6% 中国 400 468 567 764 1,260 64.9% 34.4%オランダ 486 693 910 1,079 1,219 13.0% 26.4% 日本 274 414 687 936 1,078 15.2% 42.1%合計 22,673 29,010 36,163 42,686 51,783 21.3% 23.0% (出典:世界風力エネルギー協会(GWEC,ブリュッセル),Global Wind 2005 Report http://www.gwec.net/uploads/media/Global_WindPower_05_Report.pdf#page=7) 最近,日本での風力発電導入は鈍化しており,今後5年間程度で現在の3倍程度まで増加させることは容易ではない,と推測できます.このような数値と比較すると2005年時点で日本の2030年時点での達成目標に近づいているドイツの取り組みはある意味際立っている,と感じます. 以前,調べた「バイオマス」の利用(メルマガ第89号)では,わが国における一次エネルギー供給の5%を賄える可能性がある,と記載しました.風力発電は利用方法(特に洋上発電)により拡大は可能と考えますが,やはり一定の制約は生じると考えられ,バイオマスと同様な規模が一つの目安になるのではないか,と感じています. しかし,「夢のエネルギー源」が実現できていない現状では,できるだけエネルギー源を分散しておくことが必要です.このような意味合いからも風力発電には相応の役割を担って欲しいと考えます.一方で,風力発電に対する過度な期待は禁物と考えます. ドイツ並みの導入を達成しても電力の数パーセント,一次エネルギー供給で考えるとさらに小さい部分を担えるに過ぎないことも十分理解しておく必要があります.PS 今回で,風力発電に関するシリーズを完了します.次回からは,少しテーマを変えて産業廃棄物や一般廃棄物の問題についてシリーズで考えていきたいと思います. |