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No. 099 update 2005.12.20 PDF版(136.5 kbyte)

水素エネルギー・燃料電池(その4)

燃料電池

 今回は「燃料電池」について考えてみたいと思います.なお「燃料電池」についてはメルマガ第32号のエネルギー(第16回)でも紹介していますのでご参照下さい.
http://www.3r-net.com/pdf/MM032.pdf

「燃料電池」で用いる「燃料」は「水素」であり,「水素」と「燃料電池」は密接不可分の関係にあります.「水素」は自然界に「水(水素と酸素の化合物)」として大量に存在しますが,「水素」として単体で豊富に存在する資源ではありません.

 すなわち,「燃料電池」は,「石油」を燃やす「エンジン」,「石油」や「石炭」を燃やす「火力発電所」等と同様に「水素」を燃やす「エネルギー変換装置」と考えると理解し易いと思います.

 主に以下のような5種類のシステムが提案されています.

1.固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)
2.固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)
3.直接メタノール形燃料電池(DMFC:Direct Methanol Duel Cell)
4.リン酸形燃料電池(PAFC:Phosphoric Acid Fuel Cell)
5.溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC:Molten Carbonate Fuel Cell)


 燃料電池技術の詳細については,以下のようなホームページをご参照下さい.

燃料電池開発情報センター(FCDIC)
http://www.fcdic.com/ja/cell.html
新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)
http://www.nedo.go.jp/kaisetsu/evm/ev03/#04

 ところで,燃料電池の適用先は以下のように大別されます:

(1)車両用

 2002年12月にトヨタ自動車と本田技研工業が世界に先駆けて燃料電池車の販売を開始しました.燃料電池としては固体高分子質形燃料電池(PEFC)を採用し,高圧ガスタンク内に貯蔵した水素を燃料とするタイプのものです.

 水素搭載型の車両が普及するためには,ガソリンスタンドに相当する「水素ステーション」インフラの整備が不可欠ですが,ガソリンやアルコール等を原料に,車両上で水素を製造する方式もあります.

(2)携帯用

 日本ではNEC,日立,東芝等が直接メタノール形燃料電池(DMFC)をノートPCに搭載することを目指して取組んでいます.また,マイクロ改質器に成功したカシオは固体高分子質形燃料電池(PEFC)の開発を行っています.

(3)定置用−小規模住宅用(家庭用),小規模ビジネス用

 家庭用燃料電池では,都市ガス,LPG,灯油を燃料としたシステムが中心となっています.特に,中心的な役割を担っているのが都市ガス会社であり,共同開発先とする燃料電池メーカの絞込みを2003年春に実施しています.東京ガスは荏原バラード,松下電器産業の2社,大阪ガスは荏原バラード,三洋電機,松下電器産業,東芝IFCの4社をそれぞれ選定しました.

 日本の標準的な家庭で必要となる発電規模は1.0kW程度であり,燃料電池としての設備利用効率やエネルギー効率の観点から電力供給のベースロードを担当する形態が想定されています.

 なお,経済産業省による家庭用を想定した定置用燃料電池大規模実証事業が展開されており,その評価結果等が以下のサイトに掲載されています.
http://www.meti.go.jp/press/20051012006/fc-ranking-set.pdf

(4)定置用−高信頼性,高品質電力用(金融機関,病院,プラント等)

 導入された情報機器,オートメーション機器,制御機器などは,その機能障害により会社や社会に大きな被害を発生させます.特に停電等によるシステム停止の影響を回避する用途では,バッテリーあるいはディーゼル等を用いたバックアップ電源の代用として位置づけられます.数十から数百kW級の電源であり,PEFC,MCFC,SOFCの競争が激しくなっている市場です.


 燃料電池は,水素と酸素の反応であり生成物が水だけという非常に理想的なエネルギー変換方式です.したがって,今後の技術開発による大幅なコストダウンが大きな課題であり,技術的な面での様々なブレークスルーが不可欠と考えます.

 ちなみに私見ですが,燃料電池車の普及のためのインフラ整備にどの程度の資源とエネルギーを投入する必要があるか,正直なところわかりません.急激な転換は資源の浪費になる可能性がありますので,既存のシステムを活かしつつ,徐々にインフラ整備を進める必要があるのではないか,と考えます.

 燃料電池車の普及にある程度の時間を要することを考えると,諸外国ではあまり着目されていなかった「ハイブリッド車」の果たす役割は予想外に大きいように感じています.


 早いもので今年も残すところ2週間たらずとなりました.今年は個人的な事情でかなりの期間にわたり発刊のペースが乱れましたことお詫び申し上げます.来年も本メルマガを何卒宜しくお願いします.読者の皆様も良いお年をお迎え下さい.

[文責:スリー・アール 菅井弘]

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