No.102:風力発電(第2回)

風力発電(その2)

No.101:風力発電(第1回)

風力発電(その1)

No.100:年始のご挨拶(2006年)

「年始にあたって」

No.099:水素エネルギー・燃料電池(その4)

燃料電池

No.098:水素エネルギー・燃料電池(その3)

水素の製造

No.097:水素エネルギー・燃料電池(その2)

水素エネルギーの位置づけ

No.096:水素エネルギー・燃料電池(その1)

水素生産および需要の現状

No.095:バイオマス(第7回)

バイオマス利活用例(3)

No.094:バイオマス(第6回)

バイオマス利活用例(2)

No.093:バイオマス(第5回)

バイオマス利活用例(1)

No. 098 update 2005.12.02 PDF版(103.3 kbyte)

水素エネルギー・燃料電池(その3)

水素の製造

 今回は,「水素」の製造について考えてみたいと思います.

 水素製造方法は,原料またはエネルギーとして化石燃料資源を用いる方法と化石燃料資源を用いない方法に大別できます.現在,化石燃料資源を用いる水素製造法は工業的な方法として確立していますが,二酸化炭素の放出を伴います.

 例えば,今日主流となっている水蒸気改質プロセスでは,最も二酸化炭素の副生が少ない天然ガスを原料とする場合でも,水素を1m3生成する際に約0.9kgの二酸化炭素を放出します.

「水素」製造法は「化石燃料」あるいは「非化石燃料」起源のエネルギーを利用する方法に大別できる他,原料として「化石燃料」を用いるか,「水」を用いるかで分類できます.

a.化石燃料等(再生可能エネルギー以外)を用いた製造

a-1)原料は化石燃料等
 (1)コークス炉ガス
 (2)水蒸気改質
 (3)部分酸化改質
 (4)自己熱改質(オートサーマル)

a-2)原料は水・水蒸気
 (1)食塩水電解
 (2)アルカリ水電解
 (3)固体高分子水電解
 (4)高温・高圧水電解
 (5)高温水蒸気電解
 (6)高温水熱分解

b.再生可能エネルギーを用いた製造

 (1)高温・高圧水電解
 (2)固体高分子電解質水分解
 (3)高温水蒸気電解
 (4)光触媒を用いた水分解
 

 正直,いろいろな方法があってわかり難いのですが,代表的な水素製造反応は以下の2つと考えることができます.

 1.CH4(メタン) + 2H2O(水) ⇒ 4H2(水素) + CO2(二酸化炭素)
 2.H2O(水) ⇒ H2(水素) + (1/2)O2(酸素)

 1.の反応が水蒸気改質反応ですが,より正確には次の2つの反応から構成されています:
 反応1-1:CH4(メタン) + H2O(水蒸気) ⇒ CO(一酸化炭素) + 3H2(水素)
 反応1-2:CO(一酸化炭素) + H2O(水蒸気) ⇒ CO2(二酸化炭素) + H2(水素)

 この反応1-1が用いる水蒸気ではなく,酸素や二酸化炭素の場合には以下のような反応となります:
 CH4(メタン) + 1/2O2 ⇒ CO(一酸化炭素) + 2H2(水素)
 CH4(メタン) + CO2(二酸化炭素) ⇒ 2CO(一酸化炭素) + 2H2(水素)

反応1-1は改質反応,反応1-2はシフト反応と呼ばれ,シフト反応は共通です.

 2.の反応は水や水蒸気の分解反応で,電解法や熱分解であっても共通の反応です.反応生成物が「水素」と「酸素」だけであり,CO2(二酸化炭素)は発生しませんので,理想的な「水素」製造法であることがわかります.


 国の描くシナリオのもとでの水素ステーションにおける水素出口価格の目標は、2005年150円/Nm3(ほぼm3と同等),2010年80円/Nm3、2020年40円/Nm3となっています.

 これら目標値は,熱量等価(HHV基準)のガソリン価格(税込)に換算すると2.7倍の価格となり,それぞれ2005年407円/L,2010年217円/L、2020年109円/L相当となっています.
(出典:http://oilresearch.jogmec.go.jp/publish/pdf/2005/200507_037a.pdf)


 二酸化炭素排出削減等の環境負荷の軽減効果やエネルギー利用効率の向上効果を期待できる「二次エネルギー」としての「水素」の利用は有効な方策ですが,「水素」製造コストが高いということは,何らかの形で「資源」や「エネルギー」を投入して「水素」が製造されていることを意味します.

 このような背景を十分に理解した上で,「水素」を用いた燃料電池の活用を推進することは意義あることと思います.一方,これらのインフラを整備するためには相応の「資源(原材料)」と「エネルギー(化石燃料)」を投入することが不可欠であり,数年という短期的な視点ではなく,10年以上の時間軸で考える必要があると考えます.

[文責:スリー・アール 菅井弘]

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