No.102:風力発電(第2回)

風力発電(その2)

No.101:風力発電(第1回)

風力発電(その1)

No.100:年始のご挨拶(2006年)

「年始にあたって」

No.099:水素エネルギー・燃料電池(その4)

燃料電池

No.098:水素エネルギー・燃料電池(その3)

水素の製造

No.097:水素エネルギー・燃料電池(その2)

水素エネルギーの位置づけ

No.096:水素エネルギー・燃料電池(その1)

水素生産および需要の現状

No.095:バイオマス(第7回)

バイオマス利活用例(3)

No.094:バイオマス(第6回)

バイオマス利活用例(2)

No.093:バイオマス(第5回)

バイオマス利活用例(1)

No. 097 update 2005.11.07 PDF版(125.5 kbyte)

水素エネルギー・燃料電池(その2)

水素エネルギーの位置づけ

 今回は,誤解の多いと考えられる「水素エネルギー」の「エネルギー源」としての位置づけについて考えてみたいと思います.

 まず「エネルギー源」という用語ですが,「エネルギー源」とは広義には他のエネルギー源に変換しうるものを指します.狭義には「一次エネルギー源」を指すことが多いようです.

「一次エネルギー源」は自然界に存在しているエネルギー源を指し,「二次エネルギー源」は「一次エネルギー源」を何らかの形で変換したものを指しています.

「二次エネルギー源」としては「電気」や今回のテーマとなっている「水素」が代表的な例であり,それ以外(化石燃料など)は「一次エネルギー源」と考えることができます.

「一次エネルギー源」としては以下のようなものがあります:

化石燃料(石炭,石油,天然ガス等) 
原子力 
再生可能エネルギー 
 うち太陽起源のもの 
  水(水力発電など) 
  太陽光(太陽光発電、太陽熱発電) 
  風力(風力発電) 
  バイオマス(バイオマス発電等) 
  波力(波力発電) 
  海洋温度差発電 
 以外のもの 
  潮力(潮力発電) 
  地熱(地熱発電) 

(出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)


 最初に「水素」は「一次エネルギー源」ではないことを理解しておく必要があります.選択肢としての比較対象となるのは例えば「電気」であって,他の「一次エネルギー源」に対する代替エネルギーではありません.すなわち「水素」は「一次エネルギー源」の問題を解決する方法としては限界があることを理解する必要があります.

 さて,私たちの「一次エネルギー源」の選択肢は大雑把に整理すると「化石燃料」,「原子力」,「再生可能エネルギー」の3種類となります.

 先進国では国により違いはあるものの,「一次エネルギー源」の主役は「化石燃料」であり,「原子力」や「再生可能エネルギー」はエネルギー供給の電力供給分野において補完的な役割を果たしているに過ぎません.また,再生可能エネルギーの中心は「水力発電」です.


 ところで,実用化が進められている燃料電池等用の「水素」の原料は「化石燃料」か「水」です.「水」を原料に「水素」を製造する方法としては「電気分解」が中心であり,「一次エネルギー源」を用いて発電された「電力」を用いています.したがって「水素」は「電気」という「二次エネルギー源」から「変換」されて得られたものと位置づけられます.

 この種の「変換」には手間がかかり,「電気」を用いた「水素」を製造することは決して得策ではありませんが,例えば夜間の余剰電力を用いた「水素」製造は一つの選択肢にはなります.

「電力」は貯蔵が容易ではありませんが「水素」貯蔵は「電気」と比較すれば容易ですから,エネルギーの利用効率を改善するための「手段」の一つとして利用できる可能性があります.

 また「水素」を用いた「燃料電池」では「電気」と「廃熱」を組み併せることでシステム「効率」の高いエネルギー利用が可能となります.例えば「家庭用燃料電池」では,天然ガスを原料として「改質装置」で水素を製造した場合,「電気」とともに「改質装置」等で発生する「廃熱」で温水を得ることで,トータルとしての家庭内でのエネルギー利用効率を高めることが可能となる見込みです.


 将来,「水素」製造に要するエネルギー供給を「再生可能エネルギー」により行い,「熱源」や「動力源」として用いる方法は,かなり理想に近いシステムであるとは思います.

 しかし,理想に近いシステムでのエネルギー利用が,いつ実現できるかは明確ではありません.「再生可能エネルギー」を利用するシステムの拡大が叫ばれていますが,「インフラの再構築」が必要であり「経済性」や「新たな環境負荷の増大」にも配慮が必要です.

「経済性」よりも「環境保護」が重要という指摘はある意味で正論です.しかし,「コスト」が高い原因について考える必要があります.「コスト」はある意味,投入する「資源」や「エネルギー」量と無関係ではありません.

 高「コスト」であることは,大量の「資源」と「一次エネルギー」を投入してシステムを構築する必要性が高いことを意味します.理想と考えるシステムが,実は大量の「資源」や「一次エネルギー」を投入することで維持できるシステムであったとすれば,ある意味で本末転倒です.

 同様の問題は,過去に「原子力」発電においても指摘されていました.しかし,国や事業者らはあえて高い「コスト」を負担し,「発電所」や「核燃料サイクル」というインフラを整備してきました.現在の「原子力」発電は大量の「化石燃料」を消費して整備したシステムです.


「再生可能エネルギー」は環境負荷の少ない「エネルギー源」と考えられます.しかし,「夢のエネルギー源」であった「原子力」が安全や廃棄物処理処分という問題に直面し,「夢の気体」であった「フロン」がオゾン層を破壊し,「夢の材料」であった「アスベスト」が最大規模の健康被害の原因となるような現状を踏まえれば「夢の○○○」は存在しない,と考えた方が良さそうです.

「地球」という生態系が現在のような文明をどの程度まで許容してくれるのかは全くわかりませんが,「再生可能エネルギー」を中心とした社会システムの構築は時間を要するとともに,インフラ整備には大量の「一次エネルギー」の投入が必要です.

 また,「再生可能エネルギー」のみで,現在のような過大なエネルギー消費を伴う社会システムの維持は困難です.エネルギー問題も「供給」や「生産」側の立場から見るのではなく,「需要」や「消費」側の立場から考える時代に入っています.

 最も理想的かつ現実的な解決策は「生活様式」の変革によるエネルギー消費量の削減,と言えそうです.

 都会に生活する人にとっては1年に「数ヶ月」くらいは仕事を離れて自然と触れ合ったり,異なる環境で生活をする機会が必要なのかもしれません.日本や米国では効率,特に「経済」的な効率が最優先となっていますが,ある意味で欧州の人々の生活様式は参考になるのかもしれません.

 私自身,自営業の身で「数日」の休暇を取るのもそれなり準備が必要です.しかし,今後はできればせめて「数週間」程度を「日常」とは異なる環境に身を置いて,普段の生活とは異なる視点から物事を捉える機会を持ちたい,と考えています.

[文責:スリー・アール 菅井弘]

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