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No.082:年始のご挨拶(2005年)
「年始にあたって」
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No.081:原子力(第4回)
国策と原子力の関係
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No.080:原子力(第3回)
国内外での原子力利用の現状
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No.079:原子力(第2回)
原子力って何?
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No.078:原子力(第1回)
なんとなく原子力
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No.077:環境(第25回)
プラスチック
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No.076:環境(第24回)
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No.075:環境(第23回)
家電
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No.074:環境(第22回)
パソコン
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No.073:環境(第21回)
生ごみ
No. 095 update 2005.10.06 PDF版(118.1 kbyte)
今回は,バイオマス利活用例として,バイオマスの「ガス化」について考えてみたいと思います. バイオマスの「ガス化」と呼んでも原料により実際の「ガス化」の方法は大きく異なりますが,一般的に「ガス化」で得られる「ガス」はエネルギー資源として活用されることになります. 既存のバイオマス発電は一般的に「ガス化」ではなく,「燃焼」を利用した通常の蒸気タービンによる発電方式を採用しています.この方式はエネルギー変換効率が低く,コスト的にも競争力が高いものではありません. しかし,低コストのバイオマス資源を燃料として確保し,かつある程度の規模とすることで経済的に成り立つようになります.また,電気以外の熱を活用することで高効率化も実現できます. これらの「燃焼」を利用した「バイオマス」の活用としては直接燃焼,混焼,固体燃料化等に分類できます.いずれの方法でも,「エネルギー利用」としては,「燃焼」時に生じた熱を直接利用しています. 酸素共存下での熱化学反応である「焼却」技術がベースのため,技術的に実証された方法であり,積極的な活用が期待されています.秋田県能代市,宮城県石巻市,岩手県葛巻町に木質系燃料を用いた導入例があります. これに対して「ガス」化では,「バイオマス」原料から有用な「ガス」を生成することが出発点になります.ただし,原料等によって「ガス化」方法も異なりますので,具体的な方法の違いについて理解しておく必要があります. 例えば生ごみや家畜糞尿の場合は,微生物による発酵を活用した「メタン化」と呼ばれる方法があります.「メタン化」は,バイオマスから,燃料となるメタンガス(CH4)を取り出す技術の一つです. 嫌気性菌によるメタン発酵を利用した「含水率」の高いバイオマスに対する処理法と位置づけることができます.最近は,「バイオガス化」という名称で呼ばれています.「嫌気性」発酵というのは,その名のごとく空気のあまりない条件下で行う「発酵」です.「メタン化」では「湿式」や「乾式」等の種々の方法が提案されています.北海道滝川市,宮城県白石市,新潟県上越市や津川市等に主に生ごみを対象とした「メタン化」導入例が,また北海道別海市,京都府八木町に家畜糞尿を対象とした「メタン化」導入例があります. もう一つの方法が木質系廃棄物等に利用される「燃焼」ではない「熱分解」を活用した「ガス化」です.無酸素あるいは低酸素濃度条件で「バイオマス」を熱分解し,メタン,水素,一酸化炭素等を生成させ,これらをガスエンジンに導入し,直接発電を行う技術です. 酸素濃度の非常に低い条件での熱分解反応が中心であるため,原理的にダイオキシン生成を回避できることや,ガス化生成物を直接エンジン内で燃焼させることで,既存バイオマス発電の中心技術である「燃焼」と「ボイラー」を組合せた既存技術と比較してエネルギー効率面で有利です. ヨーロッパでは,原則として廃棄物「焼却(燃焼)処理」が困難な状況にあることから「ガス化」技術が徐々に活用され始めています.日本でも国産技術の開発が行われるとともに,海外技術の導入等が行われており,今後,これらの技術を用いたプラントが国内に建設されることが期待されます. ところで「ガス化」により得られた「メタン」等のガスは改質と呼ぶ操作を行うことで「水素」を製造することも可能です.将来の「新エネルギー媒体」である「水素」供給技術として期待できます. ここで,「水素」を「新エネルギー媒体」と呼んだのは,太陽エネルギー等の再生可能エネルギーを用いて直接「水」からの水素製造が可能となれば「新エネルギー源」と呼べますが,化石燃料を原料あるいは変換エネルギーに用いて製造した水素は「新エネルギー源」ではなく,既存エネルギー資源の「転換」による「新エネルギー媒体」としての新しい「エネルギー貯蔵」様式と捉える必要があると考えます. ちなみに再生可能なエネルギー資源である「バイオマス」を原料として製造した「水素」は,「新エネルギー媒体」であるとともに「新エネルギー源」と捉えることができると考えます. 現代社会を本質的に支えているエネルギー資源は化石燃料であり,極論を言えば石油こそが最も重要な資源です.石炭や天然ガスの採掘や,輸送も大部分が石油に依存しています.まして,バイオマス,風力,太陽,水力,原子力等は化石燃料があってこそ,発電機器の製造,発電プラントの建設や運転を可能としているのは石油です. 国際的に見れば,化石燃料の供給が無限ではなく,一方で確実に需要は増加しています.日本は強い経済力で世界から化石燃料を確保することができていました.しかし,経済力が弱まれば資源の確保さえも容易ではなくなります.エネルギー問題とはいかに石油を節約するか,と言っても良いのではないでしょうか. エネルギーも食料も,欲しい時にいつでも手に入るような時代は決して長くは続きません.好き嫌いを言えたこれまでの時代はある意味で幸せでした.これまで「ごみ」と呼ばれていたものはこれは大切な資源と考える必要があります.まさしく「ごみ」は「宝」の時代を迎えているように感じています. 次回からは話題を変えて,最近,メディアでも紹介されることの多い「水素エネルギー」と「燃料電池」について考えてみたいと思います.
[文責:スリー・アール 菅井弘]
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