No.062:環境(第10回)

オゾン層破壊

No.061:環境(第9回)

酸性雨

No.060:環境(第8回)

廃棄物処分と不法投棄

No.059:環境(第7回)

土壌汚染

No.058:年始のご挨拶(2004年)

日本の物質フロー

No.057:環境(第6回)

水質汚染

No.056:環境(第5回)

室内空気汚染

No.055:環境(第4回)

大気汚染

No.054:環境(第3回)

地球温暖化

No.053:環境(第2回)

国内の物質フロー

No. 094 update 2005.09.02 PDF版(145.7 kbyte)

バイオマス(第6回)

バイオマス利活用例(2)

 今回は,バイオマス利活用例として,個人的に関心のある「ペレットストーブ」について考えてみたいと思います.

 ペレットストーブとは,製材工場及びチップ工場等から産出される端材及び樹皮などを活用し,粉砕したものを円筒形に固めた「ペレット」を燃料として使用するストーブのことです.

 「ペレットストーブ」も,バイオマスの熱利用に相当します.北欧諸国の中には,「バイオマス」による一次エネルギーの供給は10〜20%に達している国がありますが,日本での実績は欧州諸国とは比較にならないほど小さいものと言えます.

 しかし,日本でも新エネルギーの導入については,以下のような目標を掲げて取組んでいます. 

新エネルギー導入の実績と目標

         '10年度見通し 2010年度目標 2010/1999

太陽熱利用    72万kl    439万kl   約4倍
廃棄物熱利用   4.4万kl   14万kl    約3倍
バイオマス熱利用 -      67万kl    -
黒液・廃材    479万kl   494万kl   約1.1倍
未利用エネルギー 9.3万kl   58万kl    約14倍
(雪氷冷熱を含む)  

※「目標ケース」の値は,官民の最大限の努力を前提とした目標量.


 次に,欧州で炭素税または二酸化炭素税を導入している例を示します.

オランダ、フィンランド(1990年1月)
スウェーデン(1991年1月)
ノルウェー(1991年1月)、
デンマーク(1991年12月)

 多くの国々で既に10年以上も前に環境税の一つとしての炭素税が導入されています.バイオマスの場合,石油,石炭,天然ガス等の化石燃料とは異なり,燃焼させることで生成されるCO2は,もともと大気中のCO2が植物により固定されたものと考えることができます.

 スウェーデンの一次エネルギーの約18%が木質バイオマスから得られていますが,これは木質バイオマス利用の場合はエネルギー税や炭素税が免除されるという,バイオマスの利用を推進する環境が整っていることが背景にあります.

 日本では国内バイオマス資源は限られており,かつエネルギー消費量自体の規模が大きいことから,国内で利用できる既存バイオマス資源を全て利用できたとしても,一次エネルギーとして供給できる比率は5%前後であることも理解しておく必要があります.

 ところで化石燃料も元をたどればバイオマス燃料ですが,循環のサイクルは極めて長く,しかも人間が人為的に復元することはできません.一方,木材等の木質バイオマスの場合の循環サイクルは数10年程度と考えることができますので,非常に短い時間で炭素を循環させることができます.

 木質バイオマス等も確かに燃やせば二酸化炭素を発生しますが,同一量の二酸化炭素を新たな植物の育成で吸収できれば,実質的な大気中の二酸化炭素の増加は防ぐことができると考えることができます.したがって,木質バイオマス等を炭素税の対象から除外することは,炭素の循環という観点からは根拠があります.


 さて,実際の利用されている「ペレットストーブ」用の燃料は,おが屑や鉋屑などの製材廃材や林地残材,古紙といった木質系の副産物,廃棄物を粉砕,圧縮し,成型したものが中心です.

 長さは1〜2cm,直径は6,8,10,12mmが一般的で,最大25mmまで製造されているようです.家庭での利用には6mmのものが最良の燃焼状態を実現できるとしてスウェーデンで推奨されているそうです.また,ペレットの製造は,木材の成分であるリグニンを熱で融解し固着させて成形しているので,バインダー(接合剤)の添加は不要とのことです.

 1トンの乾燥された木材は1,000kWhの電力または4,500kWhの熱と同等のエネルギーを含有しています.ペレット化に必要なエネルギーの割合を対製品ペレットで示すと,乾燥済みの原材料の場合は8〜13%,湿った原材料(おが屑)を乾燥させた後にペレット化を行う場合は10〜25%であり,木質チップのペレット化工程の全て(乾燥や破砕を含む)を行うと18〜35%になります.
(出典:http://www.pelletclub.jp/jp/pellet/about.html) 

 ペレット化に必要なエネルギーは決して無視できるものではありませんが,それでも65%以上はエネルギーとして利用できます.

 留意点としては,木質ペレットの焼却灰については,重金属の溶出についての指摘がありました.岩手県では木質ペレットの灰の分析調査を行い,県産ホワイトペレットを燃焼させた灰の一部から、基準値を超える六価クロムが溶出することがあることと報告しています.

 確かに「バイオマス」と言えども問題のないエネルギー資源という訳ではありません.「燃料」の輸送にコストを要するし,「灰」の後始末も必要です.「灰」の取扱にはそれなりの配慮が必要です.「灰」は自然に戻すのが一番ですが実際に灰を撒くような土地を持っていないと処理に困りそうです.

 ストーブには排気設備も必要となるため,建物が排気設備の設置を可能とする構造である必要があり,例えばマンション等の共同住宅での戸別設置は容易ではないかもしれません.将来,環境配慮型マンションとして,ペレットストーブ設置が可能となるような集合住宅が出てくれば利用し易いかもしれません.

 いずれにしても暖房用途であるならば,「燃料」の「燃焼」により発生した「熱」で「蒸気」を発生させ,「タービン」を回して得られる「超高級」なエネルギー源である「電気」を再度,熱に変換する暖房機器よりも,「燃料」をそのまま「燃焼」させて暖房用に用いる「ペレットストーブ」を用いた方が合理的です.


 地球規模の二酸化炭素の問題を考えたら,「ペレットストーブ」による寄与は小さいことも事実です.しかし,環境活動ではThink globally, Act locally(地球規模で考え、身近なところから行動せよ)というスローガンがあります.

 「ペレットストーブ」は,身近なところからの行動例として,有意義なエネルギー利用形態の一つと思います.

 ちなみに私自身の自宅では,今でも10年前に設置した「石油」ファンヒーターを使っています.「ペレットストーブ」は実際に使ったことはなく,子供のころの石炭や木炭ストーブや薪を使ったお風呂の記憶からのイメージで捉えているに過ぎません.実際にご利用中の読者の皆様からのご意見を伺えれば,紹介させていただきますので,ご連絡下さい.

[文責:スリー・アール 菅井弘]

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