No.092:バイオマス(第4回)

バイオマス利活用の概要(2)

No.091:バイオマス(第3回)

バイオマス利活用の概要(1)

No.090:バイオマス(第2回)

『バイオマス』利用の現状

No.089:バイオマス(第1回)

『バイオマス』って何ですか

No.088:原子力(第10回)

複雑な中央と地域の関係

No.087:原子力(第9回)

これまでの原子力施設で起きた事故

No.086:原子力(第8回)

放射性廃棄物をどう扱うか

No.085:原子力(第7回)

高速増殖炉とプルトニウム

No.084:原子力(第6回)

核燃料サイクルと再処理

No.083:原子力(第5回)

将来における原子力の扱い

No. 089 update 2005.04.19 PDF版(111.9 kbyte)

バイオマス(第1回)

『バイオマス』って何ですか

 今回は「『バイオマス』って何ですか」というテーマで考えたいと思います.

 最近,新聞等でも『バイオマス』という言葉を見かけるようになりました.『バイオ』は「バイオテクノロジー(生命工学)」とか,映画の「バイオハザード」などでなんとなく「生物」や「生命」に関する用語かなあ,というイメージをお持ちになる方は多いのではないかと感じます.

 一方の『マス』は『マスコミ』や『マスプロ』などと使われていますから,「大量」という意味かなあ,とそれとなく考えることができます.

 ある意味で『バイオマス』は「生物」+「大量」というイメージどおりのものと考えますが,改正「新エネ法」では『バイオマス』を「動植物に由来する有機物であってエネルギー源として利用することができるもの(原油,石油ガス,可燃性天然ガス及び石炭並びにこれらから製造される製品を除く)」と定義しています.

 植物は光合成を行うために二酸化炭素(CO2)を吸収します.逆に,植物からエネルギーを取り出す過程でCO2が排出されます.排出される炭素の源は大気中にあったCO2が植物に固定化されたものと考えると,燃焼させた分だけ再度,植物を育成すれば大気中に排出されるCO2量は増加しないことになります.

 この性質を「カーボンニュートラル(「CO2量の増減には中立」の意味)」と呼んでいます.このため,京都議定書で定められた先進各国の温室効果ガス削減目標上も、バイオマス由来のCO2は排出量としてカウントされません。

 すなわち,バイオマスは,太陽,風力,水力などとともに,地球の自然環境の中で繰り返し得られるエネルギーで,「再生可能エネルギー」の一つです.バイオマスは,世界の一次エネルギーの約12%(大部分は開発途上国)を占め,石油,石炭,天然ガスに次ぐ重要な資源です.


 バイオマスについて考える前に日本における「エネルギー」の現状についてある程度理解しておくことは有効と考えます.日本における一次エネルギー供給の現状にデータを以下に示します.

日本の一次エネルギー供給量の推移

          1973年度    1990年度  2000年度

一次エネルギー供給 414      526         604
(原油換算百万kl)

(出典:資源エネルギー庁ホームページ)

日本の一次エネルギー供給構成比の推移(%)

         1973年度    1990年度  2000年度

石油      77     58     52
石炭      15     17     18
天然ガス  2      10     13
原子力      1           9           12
水力      4           4           3
地熱      0           0.1         0.2
新エネルギー等  1           1      1

(出典:資源エネルギー庁ホームページ)


「一次エネルギー」という用語はわかり難いのですが,「エネルギーの源」となるものを示す言葉で,例えば石油,石炭,天然ガス等の化石燃料,原子力で燃料として使うウラン,水力・太陽・地熱等の自然エネルギー等の「自然界からの恵み」として人間が利用できるエネルギーのことを言います.

 日本における一次エネルギー自給率(カッコ内は原子力を国産エネルギー扱いとしない場合)は20%(4%)に過ぎません.諸外国の一次エネルギー自給率の一例としてアメリカ73%(64%),フランス51%(9%),イギリス117%(108%),ドイツ40%(27%)等の数値と比較すると,日本の自給率の低さはある意味で際立っています. 

 一次エネルギーの確保は,少なくとも現在のようなエネルギー依存型社会を維持するためには重要な課題です.したがって,できれば国産の一次エネルギー資源をできるだけ有効に活用しようと考えるのは自然な流れということになります.

 上記のデータには「一次エネルギー」としてバイオマスエネルギーという記載はありませんが,「新エネルギー等」の一つがバイオマスエネルギーということになります.バイオマスエネルギーは,国産の一次エネルギーという位置づけにあります.

 バイオマスを「エネルギー資源」と捉えて考えた場合,国内における年間当たりのバイオマス資源を合計し,エネルギー量に換算すると約1,300PJ(ペタジュール)になると見積もられています(出所:バイオマス・ニッポン総合戦略).これを原油に換算すると約3,500万キロリットルとなります.
 
 2000年度における日本の一次エネルギー原油換算供給量は約60,400万キロリットルですから,国産バイオマスを可能な限り活用することで一次エネルギー供給の約5%を賄うことができる可能性があります.この数値を『たった』5%と感じるか,逆に5%『も』と感じるかは人それぞれと思います.

 一次エネルギー供給可能量として5%は少ないという印象かもしれませんが,「廃棄物」を新たなエネルギー「資源」に変えることができれば,回収できるエネルギーのみならず,焼却や埋立処分の削減等の大きな効果が期待できます.さらにCO2排出削減にも大きく寄与できます.

「新エネルギー」全体での一次エネルギーに占める比率が1%前後という現状を考えれば,とにかく使えるものは何でも活用する,という考えが大切です.いずれにしても,日本にとってバイオマスは非常に大切な「一次エネルギー資源」であると考えます.

[文責:スリー・アール 菅井弘]

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