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No.092:バイオマス(第4回)
バイオマス利活用の概要(2)
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No.091:バイオマス(第3回)
バイオマス利活用の概要(1)
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No.090:バイオマス(第2回)
『バイオマス』利用の現状
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No.089:バイオマス(第1回)
『バイオマス』って何ですか
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No.088:原子力(第10回)
複雑な中央と地域の関係
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No.087:原子力(第9回)
これまでの原子力施設で起きた事故
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No.086:原子力(第8回)
放射性廃棄物をどう扱うか
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No.085:原子力(第7回)
高速増殖炉とプルトニウム
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No.084:原子力(第6回)
核燃料サイクルと再処理
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No.083:原子力(第5回)
将来における原子力の扱い
No. 078 update 2004.11.03 PDF版(158.8 kbyte)
2001年9月よりスタートした本メルマガも,本号で第78号となりました.読者の皆様にとって決して楽しい内容ではない,と私自身も十分承知致しておりますが,ご興味をお持ちいただける課題だけでも引き続きご一読いただけると大変光栄です. さて,前号で若干予告致しておりましたとおり,本号からエネルギー分野のテーマとして「原子力」,「水素」,「バイオマス」の3つのテーマについて考えてみたいと思います.もちろん,風力,地熱を始めとする再生可能エネルギーや石炭,石油等の既存エネルギーの重要性も十分認識しておりますが,私自身がある程度,取組んだ経験がある分野ということから,とりあえずこの3テーマをとり上げました. 早速,「原子力」について考えてみたい思いますが,サブテーマとしては以下の項目を考えています.①なんとなく原子力②原子力って何③国内外での原子力利用の現状④国策と原子力の関係⑤将来における原子力の扱い⑥高速増殖炉とプルトニウム⑦核燃料サイクルと再処理⑧放射性廃棄物をどう扱うか⑨これまでの原子力施設で起きた事故⑩複雑な中央と地域の関係 今回は,「なんとなく原子力」という非常に曖昧なテーマから始めたいと思います.世の中には「原子力」に関する情報は沢山あります.インターネットで検索しても原子力と関連するサイトは非常に沢山あります.あまりに多すぎて,どのサイトにアクセスするのが良いのかわからないほどです. 原子力を扱うサイトのスタンスは様々ですが,中立的なサイトは少なく,いわゆる推進(政府,電力系)あるいは反対(反原子力,自然エネルギー推進系)の立場から,情報を提供しているケースが他のエネルギーをテーマをした場合とは大きく異っている点が非常に目立ちます.このようなことから,できるだけ沢山のサイトをご覧いただくのが良いと思いますが,代表サイトとしては以下の2つを紹介させていただきます.原子力情報なび http://www.atomnavi.jp/(経済産業省がスポンサーとなって運営しているサイト)原子力資料情報室 http://cnic.jp/(原子力に依存しない社会の実現をめざしてつくられた非営利の調査研究機関のサイト)なお,原子力関連の種々の情報入手は,弊社のホームページにもリンク集を掲載しています.http://www.3r-net.com/html/gensi/gensi_1.htm 歴史的にみると,日本での「原子力」利用は昭和30年代(1950年代)から始められており,当時は「夢のエネルギー」という位置づけでした.私が原子力の勉強を始めた1970年代後半でもそれなりに期待感があったように思います.しかし,現在の「夢のエネルギー」は「再生可能エネルギー」で,「原子力」はやっかいもの扱いという印象を受けます.いずれにしても「原子力」というと,何故か賛成か反対かの極論に走りがちです. 個人的には「原子力は何となく人を不安にさせる」技術の代表という印象を持っています.このようなお話から入ること自体,残念なのですが,「何か生命とは相容れない技術に対する不安」という形で「人」の心を脅かすような潜在的に固有な特性を「原子力」は持っている,という点を十分理解する必要があると考えています. 私たちの身近なエネルギー源は,その大部分は「化学反応」に基づくものです.例えば,「木を燃やして暖をとる」,「石油ストーブ(最近はファンヒーター)で部屋を暖める」,「ガスでお湯を沸かす」等は目に見える「火」を利用しています.「ガソリンやディーゼル油で自動車を走らせる」や「石油,石炭,天然ガスを燃やして電気を起こす」も「反応」を実際に目で見ている訳ではありませんが,何かを燃やした「火」を利用して,「動力」に変えたり,「電気」を起こしたりしているというイメージはそれとなく浮かびます. 一方,原子力はというと,「ウラン」や「プルトニウム」等の聞きなれない物質が「核分裂」をして「膨大なエネルギー」が出るらしい」という実に訳のわからない存在ということになります.技術としての原子力の特性は燃料の使用量に端的に現れています.100万kWの発電所を1年間運転するために必要な燃料濃縮ウラン 21トン (基準として1を仮定)天然ガス 97万トン (約4.6万倍)石油 131万トン (約6.2万倍)石炭 236万トン (約11万倍)(出典:「考えよう,原子力」 経済産業省編) 原子力の本来の魅力は少量の燃料から膨大なエネルギーを生産できる点にあるのですが,化石燃料等とはあまり桁違いで,本当に人間に管理できる技術なのか,という素朴な疑問が生じてきます. しかも運転後に出てきるのは,天然ガス,石油,石炭では,炭酸ガスや硫黄酸化物(SOx:「ソックス」と読みます)や窒素酸化物(NOx:「ノックス」と読みます)等です.最近になって炭酸ガスは温室効果ガスや温暖化ガスということで気にし始めましたが,人類の存亡に影響するほど有害な物質という印象はありません(最近は映画「デイ・アフター・トゥモロー」などで炭酸ガスが原因となった大規模な気候変動をテーマとする例もでてきました). また,原子力の利用に伴い生じる「放射性廃棄物」は未来永劫の管理が必要なやっかいな廃棄物として問題視されています.何れにしても「何となく感じる原子力の印象」は概してマイナスイメージが強いという気がします. 話題が変わりますが,私たち人間の生命を維持するために不可欠なエネルギー源は何か,と言えば多くの方は「太陽」を思い浮かべることと思います.化石燃料である石油や石炭は,太古の動植物の蓄積による太陽エネルギ-の「遺産」と言えるものです.風力,水力,波力等を利用する技術も根源にあるのは太陽エネルギ-です.これらあらゆるエネルギーの根源となっている太陽からのエネルギーの源は,ご存知のとおり水素の「核融合」による「原子力」です.身近なエネルギー源で,太陽エネルギーに直接依存していないものは,「核分裂」を利用した「原子力」と「地熱」くらいしか思い浮かびません.「地熱」は,地球形成時から蓄えられてきた熱,及び放射性元素が壊変する時に生じた熱に由来しています.微惑星が衝突・合体を繰り返して地球が現在の大きさまで成長する時には,大量の重力エネルギーが解放されこれが熱に変わり,また地球の中心に金属核が作られる際に解放された重力エネルギーも地球内部で熱になります. これらが地球形成の比較的初期に生産されて蓄えられてきた熱とは別に,ウラン、トリウムやカリウムなどの放射性元素の壊変エネルギーにより生じた熱は,初期地球と比べて熱生産量として現在では1/3程度に減っていると推定されていますが,今もなお地球内部で生産され続けています.つまり,地球自体が誕生以来運転されている天然の原子炉と考えることができます. 「原子力」対する議論は,政治,宗教,哲学,生命の尊厳等の非常に多くの要因が複雑に絡みあっており,個人の人生観とも繋がりが深いことから,どこまでいっても結論が得られるような問題ではない,と考えます. 確かに天然の「原子力」は地球や人類にとって必需品ですが,人工的な「原子力」は人類にとって必需品ではありません.しかし,現代社会の維持には「エネルギー」(実際にはエネルギー量が問題ですが)は恐らく必需品であろう,と考えます. 「原子力」を含む全てのエネルギー技術は「エネルギー」を得るための一つのオプションという位置づけを忘れてはなりません. 近い将来における「エネルギー」の確保という課題に対して,「お手上げ」の状態となること回避し,少しでも後世の負担を和らげることのできる選択肢として,一体どのような道があるのかを,私自身として今一度考えてみたいと思います.
[文責:スリー・アール 菅井弘]
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