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No. 077 update 2004.10.15 PDF版(140.7 kbyte)

環境(第25回)

プラスチック

 今回は,「プラスチック」のリサイクルについて考えてみたいと思います.まず,日本における「プラスチック」の生産および消費状況を以下に示します.

プラスチック製品の生産・消費および廃棄の状況(単位:万トン)

年   樹脂生産量  国内樹脂  一般廃棄物  産業廃棄物  廃プラ総量
                  消費量     (A)         (B)     (A)+(B)
 
1990  1,263       999        313         244        557 
1991  1,280       1,007      345         277         622
1992  1,258       928        391         301         692
1993  1,225       902        419         337         756
1994  1,304       966        423         423         846
1995  1,403       979        443         441         884
1996  1,466       1,081      455         454         909  
1997  1,521       1,136      478         471         949
1998  1,391       1,020      499         485         984
1999  1,457       1,081      486         490         976
2000  1,474       1,098      508         489         997
2001  1,388       1,096      528         489         1,016
2002  1,385       1,057      508         482         990

(出典:(社)プラスチック処理促進協会ホームページ)

 国内のプラスチック生産量は,1997年の1,521万トンをピークに減少していますが,ここ数年は横ばいで推移しており2002年は1,385万トンでした.廃プラスチック総排出量も最近は横ばい傾向を示しています.大雑把な数値としてはプラスチックの年間生産量は1,400万トン前後で,廃プラスチック(以下,廃プラ)として処理が必要なのは年間約1,000万トン程度という感じです.


 ところで,1,000万トン近い廃プラの用途別発生内訳を以下に示します.用途としては容器包装が半分近くを占めており,リサイクル等を考える上で非常に重要な項目であることが理解できます.

 2004.5.15付けのメルマガ第67号で飲料容器の一つであるPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルのリサイクルを考えました.PETボトルの年間生産量は約40万トンでしたから,容器包装で排出されるプラスチックの約1割がPETボトルに相当します.

 2000年に完全施行となった「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(通称、包装容器リサイクル法)」は,PETボトルに限らず,容器包装で発生する廃プラのリサイクルの促進には非常に有効と考えられます.


2002年の廃プラ総排出量(990万トン)の用途別内訳

          重量(万トン) 比率(%)

容器包装      454      45.8 
電気・機械     148           15.0 
家庭用品他     132           13.3
建材        74            7.5
農林水産      20            2.0
その他       39            4.0
生産・加工ロス 85           8.6

(出典:(社)プラスチック処理促進協会ホームページ)


 回収した廃プラは一般廃棄物と産業廃棄物に分類されます.2002年実績では一般廃棄物扱いが508トン,産業廃棄物扱いが482トンとほぼ半々という状況です.これら廃プラのリサイクル法は大きく3つに分類されています.
(1)マテリアルリサイクル
(2)ケミカルリサイクル
(3)サーマルリサイクル

 マテリアルリサイクルは,海外ではメカニカルリサイクル(機械的リサイクル)と呼ばれています.例えばPETボトルから薄片(フレーク)状の再生樹脂を回収し、これらを用いた繊維製品やシート製品などを製造するというものです。いわば「材料」としてのリサイクルです.

 ケミカルリサイクルは,海外ではフィードストックリサイクル(原料リサイクル)と呼ばれる方法で,原料・モノマー化、高炉還元剤、コークス炉化学原料化、ガス化、油化など幅広い技術があります.例えばPETボトルから再度PETボトルを製造するような「原料」としてのリサイクルです.

 サーマルリサイクルは,海外ではエネルギーリカバリー(エネルギー回収)と呼ばれています.セメントキルン、ごみ発電、RDFなどを用いた方法です.
 

 上述のリサイクル方法等も適用した最終的な廃プラの処理処分方法は以下のとおりとなっています.


一般廃棄物

年    再生  油化/   固形  廃棄物 熱利用 単純  埋立
     利用  ガス化等 燃料  発電   焼却  焼却

1996   2    -         3      133     36      181    100      
1997   5       -         3      143     37      186    104         
1998   6       -         3      158     40      183    109 
1999   10      -         3      161     39      168    105    
2000   15      5         4      175     38      168    103
2001   20      14        5      188     36      168    98      
2002   26      19        5      183     33      152    91    

(出典:(社)プラスチック処理促進協会ホームページ)


産業廃棄物

年    再生  油化/   固形  廃棄物 熱利用 単純 埋立
     利用  ガス化等 燃料  発電   焼却  焼却

1996   101     -         2      4       77      33    237        
1997   108     1         2      4       96      39    221      
1998   116     4         4      6       98      38    219 
1999   124     4         6      8       97      38    213   
2000   124     5         16     16      97      27    204 
2001   127     7         24     19      96      24    192     
2002   127     7         27     21      95      21    185   

(出典:(社)プラスチック処理促進協会ホームページ)


 一般廃棄物として回収された廃プラの再生利用はまさに始まった段階というところにあります.2002年時点では焼却および埋立処分により,ほぼ半分は活用されることなく処理処分されています.一方,40%以上の廃プラは発電や熱源用燃料として再利用されています.

 廃プラのリサイクル手法の中で,時に批判の対象となるのが,サーマルリサイクルです.サーマルリサイクルは,石油を原料として製造されたプラスチックを再度,燃料として利用する方法で,石油の有効利用という観点からは,本来推進されても良い選択肢です.
 
 ただし,エネルギー回収時に有害物質の発生が抑制できることや,サーマルリサイクルをすれば良いからと言ってプラスチックの無制限な利用は認められない等の基本ルールの確立は必要です.

 サーマルリサイクルは課題の多い方法ですが,単純焼却や埋立がより適切な方法である,という訳ではありません.個人的には,使い捨てPETボトルを大量に使用しているような現状では,サーマルリサイクルは「不可避」なリサイクル法と考えています.

 具体的なリサイクル方法の選択に関する議論は重要ですが,PETボトルのリターナブル化等の廃棄物量の削減方法について議論するほうが,より本質的であると感じています.このような本質的な議論が十分になされるまでの間は,サーマルリサイクルに限らず,現時点で使える方法は何でも適用して,少しでも資源の有効利用を心がけることが不可欠と考えています.


 今回の「プラスチック」のリサイクルで2001.10.1より25回にわたって考えてきた「環境」をテーマとした話題が完了となりました.1年以上に渡り考えてきたので,「環境」問題の複雑さは感覚的に理解できましたが,一方で問題の解決が如何に難しいかも感じました.

 日本は,エネルギーに限らずあらゆる資源を海外から輸入している国であることを無視することはできません.現在の「経済」や「産業」という側面を全く無視できるのであれば,環境負荷を軽減するための具体策は非常に沢山あるように思います.

 しかし,これまでの方法や考え方を大きく変えることなく,環境問題を解決することは非常に難しいように思えてなりません.これは,何も日本に限ったことではないように思います.

 現在の環境問題への取組みは,「地球環境」に対しては余りに配慮のないものなのかもしれません.人間の活動が原因となって,近い将来に大きな気候変動等が起きないという保証は誰にもできません.残念ながら問題の本質をある程度理解できたとしても具体的な対策を講じるまでには多くの時間を要するような問題は身近にも沢山あると思います.

 一方で,具体的な解決策の提示や実行が困難であっても,問題の本質をできるだけ客観的に把握しておくことは,決して無駄な行為ではないはないと考えます.理解していながら対策を講じないのは理解していないのと同じ,との批判は当然かと思いますが,全てはやはり自分なりに理解することから始まると考えます.


 ところで,次号からはエネルギーとしての「原子力」,「水素」,「バイオマス」の3つのテーマについて考えてみたいと思います.これらの情報は世の中に溢れていますが,断片的なものが多く,全体像を理解するためには不便と感じています.

 そこで,これらのテーマについてある程度まとまった形で考える機会にしたいということから取り上げました.現時点ではそれぞれのテーマについて半年程度の期間を想定しています.これまで同様,地味な展開となることが予想されますが,できれば読者の皆様にもお付き合いいただければ幸いです.

 今後とも本メルマガを宜しくお願い申し上げます.

[文責:スリー・アール 菅井弘]

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