No.102:風力発電(第2回)

風力発電(その2)

No.101:風力発電(第1回)

風力発電(その1)

No.100:年始のご挨拶(2006年)

「年始にあたって」

No.099:水素エネルギー・燃料電池(その4)

燃料電池

No.098:水素エネルギー・燃料電池(その3)

水素の製造

No.097:水素エネルギー・燃料電池(その2)

水素エネルギーの位置づけ

No.096:水素エネルギー・燃料電池(その1)

水素生産および需要の現状

No.095:バイオマス(第7回)

バイオマス利活用例(3)

No.094:バイオマス(第6回)

バイオマス利活用例(2)

No.093:バイオマス(第5回)

バイオマス利活用例(1)

No. 073 update 2004.08.18 PDF版(137.3 kbyte)

環境(第21回)

生ごみ

 今回は「生ごみ」について考えてみたいと思います.

「生ごみ」は「食料」との関連が非常に深い問題と考えています.エネルギー同様日本は食糧の大量輸入国でもあります.食料の供給状況に関しては農林水産省の食料需給表が参考になります.
http://www.kanbou.maff.go.jp/www/fbs/fbs-top.htm

国民1人・1日当たり供給熱量及び構成比の推移

    熱量(kcal)  蛋白質  脂質    糖質(炭水化物)

1965年 2,459    12.2%  16.2%  71.6%
1985年 2,596    12.7%  26.1%  61.2%
2000年 2,642    13.1%  28.7%  58.2%
2003年 2,588    13.1%  29.0%  57.9%
 
 上記データから,摂取エネルギーの総量は若干増加という状況ですが内訳は大きく変化していることが理解できます.また,日本における食料自給率の観点から,穀物自給率,主食用穀物自給率,供給熱量総合食料自給率および金額ベースでの食料自給率に関するデータを以下に示します.

1965年

穀物自給率        62%
主食用穀物自給率     80%
供給熱量総合食料自給率  73%
金額ベースの食料自給率  86%

2003年

穀物自給率        27%
主食用穀物自給率     60%
供給熱量総合食料自給率  40%
金額ベースの食料自給率  70%

 比較のため諸外国の供給熱量ベースに自給率のデータが見てみますと,1998年の試算ではオーストラリア309%,カナダ159%,フランス141%,アメリカ132%,ドイツ100%,スペイン93%,イギリス78%,イタリア77%,スイス60%という報告があります.

低自給率国の供給熱量自給率(%)の推移

      1970   1980  1990  1998
日本    60    53   48   40
イギリス  46    66   76   78
ドイツ   68   76   95   100
フランス  105   133  145  141

 自給率の低い国々は何とか自給率を改善しようという姿勢が上記数値からも読み取れます.唯一の例外は日本で,ひたすら自給率を低下させているにもかかわらず国内には危機感はほとんどありません.

 確かにスーパーマーケットやコンビニエンスストアは魅力的な食料品で溢れています.私自身も週末には必ず買物にお付き合いしますが,商品が山積みされたお店の商品棚から食料品を含む商品がなくなることなど想像できるはずもありません.日本と同様,アメリカは「物質」の豊富な国ですが,欧州諸国では日本ほど食料品(食料品に限らず日用品も含めて消費財全般に共通かもしれませんが)の種類は豊富ではないという印象を受けます.これは決して「物」を無駄にはしないという意思表示のように感じます.

 さて,本題ですが飽食の時代と呼ばれる近年,食料の無駄使いも膨大なものになってきています.いわゆる食品廃棄物の問題です.ちなみに食品廃棄物は,次の3つに分類されています.この中の(3)がいわゆる最も身近な「生ごみ」です.

(1)製造段階(食品製造)  動植物性残渣
(2)流通段階(食品流通)  売れ残り食品廃棄
(3)消費段階(外食,家庭)  調理くず, 食品廃棄, 食べ残し

※(1)は産業廃棄物扱い,(2)および(3)は一般廃棄物扱い

食品廃棄物の発生及び処理状況(単位:トン)は以下のとおりです.

                  種々の方法による再生利用   
       発生量   焼却埋立 肥料化 飼料化 その他 小計  

一般廃棄物  1,600万  1,595万  5万   -    -       5万
(事業系)   (  600万)
(家庭系)   (1,000万)
産業廃棄物   340万      177万  47万    104万   12万  163万  
合計          1,940万    1,772万  52万  104万  12万  168万  
             (91%)              (9%)
事業系の合計  940万   775万  49万    104万   12万    165万   
                              (17%)  
(出典:「月刊廃棄物」,2000年10月号)

 比較的覚え易い数値ですので,読者の皆様も,日本では年間2,000万トン程度の食品廃棄物が発生しており,半分が一般家庭から生ずる「生ごみ」であることを是非ご記憶いただければと思います.

 このような状況を改善するため,日本では「食品循環資源の再利用等の促進に関する法律」(通称;食品リサイクル法)が制定され,2001年5月1日より施行されました.この法律は,食品廃棄物全般を対象としていますが,特に食品関連事業者の責務が大きく,2006年度までに事業系廃棄物における再生利用等の実施率20%以上(上記データで17%)を達成することを目標にしています.なお,年間の排出量が100トンを超える事業者が未達成の場合,企業名の公表,罰金等の罰則が適用されることになっています. 

 一方,一般家庭で発生する「生ごみ」には特に目標は設定されておらず,最終的には各自治体が中心になって問題の解決を図る必要があります.正直なところ「生ごみ」は,別の見方をすると貴重な資源です.微生物発酵によりメタン等のエネルギー資源を取り出すことも可能です.家庭でも導入されているコンポスト(堆肥)化も一つの選択肢です.

 しかし,コンポスト(堆肥)化したものを再度利用するようなシステムや,メタン等のエネルギーを有効に活用できるシステムがないと必ずしもうまく機能できないことも事実です.また,家庭で発生する「生ごみ」は塩分濃度が高いものが混入しやすく,コンポストとしてのリサイクルが容易ではない,等の問題もあります.個別技術の開発には官民あげて積極的ですが,既存システムとの兼ね合いもあり,新しい「全体システム」を構築することには必ずしも積極的ではありません.

 「生ごみ」対策として私たち自身ができることは,できるだけ家庭での食事で食べ残しをしないことや,外食した折にも必要以上の注文をしないようにするという身近な事柄で,その積み重ねが大切という気がします.日本では,食料問題やエネルギー問題は「何とかなる」という安易な考え方が支配的なように見えます.お金さえあれば国外から食料やエネルギーを,いつでも,いくらでも買ってくることができるという時代は決して長続きしない,と私個人は感じています.

[文責:スリー・アール 菅井弘]

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