今回は,「ガラスびん」について考えてみたいと思います.ガラスびんはこれまで考えてきた「ペットボトル」,「アルミ缶」,「スチール缶」と比較して状況が複雑です.これは「リサイクル」以外に「リユース」等の流れがあるためです.
「リユース」は洗浄して何度も再使用する方法で,このような使い方をするびんを「リターナブルびん」といいます.使い終わったビールびんは99%が回収され,約30回以上もくり返し使用することができます.
リターナブルびんの詳細は下記のホームページをご参照下さい. http://www.zenbin.ne.jp/
飲料容器を考える際に,どのような容器を用いるのが最も環境負荷の面で有利なのか,という根本的な問題があります.このような比較を数値的に扱う手法はライフサイクルアセスメント(LCA)と呼ばれています.
例えば,共通容器(500ml)の各種容器における環境負荷発生量を比較した結果が報告されています.ワンウェイびんは1回だけ使うびんで,使用後は破砕され,新しいびんの原料となります.
地球温暖化物質CO2発生量(kg)
リターナブルびん(5回使用) 0.07 リターナブルびん(20回使用) 0.04 ペットボトル 0.14 ワンウェイびん 0.19 アルミ缶 0.17 スチール缶 0.28
大気汚染物質SOx発生量(kcal)
リターナブルびん(5回使用) 0.13 リターナブルびん(20回使用) 0.08 ペットボトル 0.33 ワンウェイびん 0.37 アルミ缶 0.25 スチール缶 0.24
エネルギー消費量(kcal)
リターナブルびん(5回使用) 250 リターナブルびん(20回使用) 160 ペットボトル 530 ワンウェイびん 680 アルミ缶 620 スチール缶 800
水資源(kg)
リターナブルびん(5回使用) 1.2 リターナブルびん(20回使用) 1.0 ペットボトル 11.2 ワンウェイびん 2.8 アルミ缶 7.0 スチール缶 2.9
(出典:LCA手法による容器間比較報告書改訂版,容器間比較研究会)) (引用:http://www.zenbin.ne.jp/chosho.html)
また,LCA手法による容器間比較報告書<改訂版>の概要 http://www1.ttcn.ne.jp/~kankyo/lab/t9_1.htm には紙容器も含めた評価結果が紹介されています.この結果をまとめると以下のようになります.
①環境負荷の統合値はワンウェイびん,ペットボトル,スチール缶,アルミ缶が大きく, ②リターナブルびん,紙容器が少ない. ③いずれの容器の場合も,未来型の環境負荷が小さくなり, ④ガラスびんはリターナブル回数が増えるほど環境負荷が小さくなる.
これらの結果は,感覚的にも理解しやすい結果と思います.ガラスびんの場合はリターナブル化しない場合には環境負荷が大きいことがわかります.ところで,代表的なリターナブルびんは一升びん(1.8L)とビールびんです.このうち,1.8Lびんにおける新びんと回収びんの使用状況は以下のとおりです.
1.8Lびん使用本数および回収びん状況(単位:千本)
平成10年 平成11年 平成12年 平成13年 平成14年 日本酒 307,837 278,949 244,124 220,911 195,130 焼酎(甲) 20,562 15,277 18,105 10,585 8,637 焼酎(乙) 72,539 65,508 59,324 60,632 65,764 みりん 11,975 11,921 10,693 8,393 7,265 しょうゆ 75,622 68,014 62,193 58,345 49,918 食用酢 16,554 14,496 13,574 12,208 11,899 その他 20,868 17,979 16,058 14,667 13,664 出荷量合計 525,957 472,144 424,071 385,741 352,277
新びん購入量 80,789 75,732 74,358 64,572 63,574 回収びん購入量 436,267 388,802 350,048 317,797 284,800 内びん商購入量 294,233 259,086 236,538 217,217 196,282
(出典:1.8Lびん再利用事業者協議会 2004年2月10日))
明らかに「リターナブルびん」が減少している傾向が読み取れます.これらは飲料容器の多様化と,新しい流通経路の形成によるものと思われます.
リターナブルびんの活用には「びん商」と呼ばれる方々の役割が重要ですが,徐々に減ってきています.また酒類も旧来の酒屋さん以外の経路でも販売されるようになりました.確かにコンビニでビールびんや一升瓶は見たことがありません.
日常生活の便利さの陰で,旧き良きシステムはかなり破壊されてきています.ちなみにリターナブル化の難しさはドイツのリターナブル容器率の動向を見ても理解できます.リターナブル化は余程の強制力がない限り衰退する運命にあるのかもしれません.
ドイツのリターナブル容器率(%) 1991 1997 1998 1999 飲料全体 71.69 71.33 70.13 68.68
ビール 82.16 77.88 76.14 74.90 ミネラルウォーター 91.33 88.31 87.44 84.94 炭酸入清涼飲料 73.72 77.76 77.02 74.81 ワイン 28.63 28.10 26.20 26.75 ミルク 26.27 30.21 25.00 21.90
(出典:http://www.zenbin.ne.jp/kaigai.html)
ところで,ガラスびんの場合にはリサイクルも積極的に行われています.ガラスびんを細かく砕いて,びんの原料であるカレットに加工して新しいガラスびんをつくるという流れです.
ガラスびんは,けい砂・石灰石・ソーダ灰などの天然資源とあきびんを細かく砕いたカレットを混ぜてつくられますが,カレットだけでもつくることができ,あきびんを90%以上利用してつくったびんはエコロジーボトルと呼ばれています.さらに無色と茶色以外のその他のあきびんを90%以上利用してつくったびんはスーパーエコロジーボトルと呼ばれています.
このようなカレット使用量等の動向を示したのが以下の表です.
1989 1993 1995 1997 1998 1999 2001 2002
生産量 242.9 237.0 223.3 221.0 197.5 190.6 173.8 168.9 カレット使用量 115.5 133.2 136.9 143.6 145.9 149.8 142.5 140.8 カレット利用率(%) 47.6 56.2 61.3 65.0 73.9 78.6 82.0 83.3
(出典:ガラスびんリサイクル促進協議会
ガラスびんは使い方次第で,環境負荷が大きく変化します.安井至氏のホームページ(http://www.ne.jp/asahi/ecodb/yasui/Binsho.htm)によると,「ガラス瓶の製造量が年間191万トンぐらい.輸入が23万トン.そのうち,リターナブル瓶が31万トン.以前は,リターナブル:ワンウェイの比率が1:3ぐらいだったのが,いまでは1:6ぐらいになっている」と紹介されています.
すなわち,ガラスびんもワンウェイの時代となり,リターナブルびんは衰退の一途をたどっている状況です.私たちは,声だかに「環境保護」を叫んでいますが現実の生活はそれとは逆の方向に進んでいる可能性が高いと言えます.
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前回記事のスチール缶の構造に関してコメントをいただきました.読者の皆様にもご参考になるかと思いますので以下に紹介させていただきます.
『現在はスチール缶も2ピース缶があります(用途により違いますので,3ピース缶もありますが)ビールなどの炭酸飲料系はスチール缶でもほとんど2ピースです.一見,見分けが付きませんが(と同時に比率も高くないかもしれませんが)まったく同じに見える缶ビールでも,スチールの表示のあるものがあります.非常に薄い材料で作られているので,重量の面でも,持った感じだけではわかりません.空になるとぺこぺこするのも同じです.』
これまでも記事の中でもご専門とされている読者の皆様にとっては,疑問を感じられるような箇所が多々あるのではないかと思います.できるだけ正しく理解する上でも,コメントをいただければ大変参考になります.今後とも何卒宜しくお願い申し上げます.
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