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No. 070 update 2004.07.01 PDF版(119.7 kbyte)
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環境(第18回) |
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スチール缶 |
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今回は,「スチール缶」のリサイクルについて考えてみたいと思います. 前回のテーマであったアルミ缶と同様にスチール缶も飲料容器として馴染みの深い容器です.スチール缶の生産量,再資源化量,再資源化率(単位:トン) 1993 1996 1998 2000 2001 2002 生産量 1,359,741 1,422,420 1,284,546 1,215,357 1,055,000 949,000 資源化量 829,010 1,100,220 1,059,572 1,022,800 899,000 817,000 再資源化率(%) 61 77.3 79.6 84.2 85.2 86.1 アルミ缶の消費量,回収量,回収率(単位:億缶) 1993 1996 1998 2000 2001 2002 消費量 117.8 163.9 166.5 167.5 174.4 177.8 回収量 68.0 115.0 123.9 135.0 144.3 147.2 回収率(%) 57.8 70.2 74.4 80.6 82.8 83.1 (出典:食品容器環境美化ホームページ http://www.kankyobika.or.jp/recicl/recicl_2.html) 金属容器としてのスチール缶とアルミ缶の違いは前回紹介しましたが,以下のとおりです.『2種類の缶は材質だけでなく構造も異なっています.スチール缶は3ピース構造と言って,胴体・上ブタ・下ブタがそれぞれ別々になっています.一方,アルミ缶は2ピース構造で胴体と底が一続きになっていて,上ブタが別に取り付けられています. さて,果汁やコーヒー,お茶などは高温で熱して殺菌した後に缶に入れられ,中の空気を抜かれて封をされます.このとき,缶の中の空気が減り,気圧が下がるために外圧がかかります.そこで,外圧に強い堅いスチール缶が使われます. また,炭酸を含むコーラやビールは,炭酸が缶の中で気化するため,内圧がかかります.そこで膨らんでも大丈夫な柔らかいアルミ缶が使われます.アルミ缶の底はドーム状にへこんでいますが,これは内圧に対応するためです.』出典:『科学的雑学のすすめ』http://scientific-browser.hp.infoseek.co.jp/zatugaku/28_can.html国内における飲料缶の用途別・素材別内訳 数量(億缶) スチール缶 アルミ缶炭酸飲料 29.1 32% 68%果実飲料 24.8 75% 25%スポーツ飲料 13.9 29% 71% 茶系飲料 33.7 81% 19%紅茶飲料 14.5 100% -コーヒー飲料 101.8 99% 1% その他飲料 12.0 77% 23%清涼飲料合計 229.8 80% 20%ビールその他酒類 119.6 - 100%総合 394.4 52% 48%(出典:http://www.steelcan.jp/knowledge/drink.html) 別のデータ等も考慮するとスチール缶の比率は上昇し,アルミ缶は減少しているようです.世界各国のスチール缶リサイクル率の推移(%) 1993 1995 1997 1999 2001日本 61.0 73.8 79.6 82.9 85.2アメリカ 48.0 55.9 60.7 57.9 58.5ドイツ 48 67 84 80 78フランス 35 40 46 48 55イギリス 13 16 31 30 37 (出典:http://www.steelcan.jp/recycle/index.html)国別飲料缶需要(1995年) 総需要 1人あたり需要 スチール缶 アルミ缶 (億缶/年)(缶/年) (%) (%)日本 370 300 61 39 中国 70 6 43 57アメリカ 981 373 0 100欧州 254 69 45 55 ドイツ 58 72 90 10 フランス 16 28 78 22(出典:http://www.jisf.or.jp/scans/images/steelcans.pdf) ここで,対象を少し広げて考えてみたいと思います.最近は缶というと飲料缶が思い浮かびますが,以前は食缶すなわち缶詰めの缶が主流でした.缶詰は1804年にフランスで考案されたそうですが,実用化されたのは1860年代とのことです. 缶詰缶はスチール缶,飲料缶も最初はスチール缶でした.日本では1955年にオレンジジュース缶,1958年にビール缶,1963年にコーラ缶,1968年にコーヒー缶が商品化されました.日本・アメリカ・欧州のブリキ用途別需要(1996) 飲料缶 食缶 一般缶 (%) (%) (%) 日本 51 5 44 アメリカ 0 87 13欧州 15 75 10(出典:http://www.jisf.or.jp/scans/images/steelcans.pdf) 軽金属協会によるとアルミ缶を再生する方がボーキサイトから作る新地金に比べてエネルギーとしては3%で済む,とのことです.一方スチール缶の方は材料1トンを生産するのに必要なエネルギーはアルミの5分の1程度とのことです. 優劣は複雑に絡み合っているようですが,コスト面では最終的にスチール缶の方が有利なようです.これが国内で飲料缶としてスチール缶が増加している理由と考えられます. 個人的に興味深いのはアメリカでは飲料缶にスチール缶ではなく,全てアルミ缶が用いられている点です.この理由としては,米国では炭酸飲料が多いことと,スチール缶がアルミ缶と比較して2〜3倍程度重量が大きい点にあるように考えます. 国土の広いアメリカでは日本と比べて輸送コストが大きく,できるだけ重量の軽いアルミ缶を好んで用いているのではないか,と考えます. 缶用材料の用途でも日本は欧米と比べて極めて異なる特徴を示しています.食缶は長期保存性も良く重要な用途と思いますが,日本では保存性への認識は低いようです.また,飲料缶が多いのは自動販売機の普及等と関係があるのかもしれません.スチール缶やアルミ缶という身近なものでも,お国柄が表れているようです. 前回はアルミ缶,今回はスチール缶を中心にリサイクルについて考えてきました.基本的に日本が世界の中でもリサイクル優等生であることは間違いありません.一方で日本の飲料缶の1人あたりの消費本数はフランスの10倍,ドイツの4倍程度で,アメリカに次ぐ消費大国となっています. 個人的にはリサイクル率はあくまでも一つの指標で,リサイクル率が100%になったとしても消費大国であれば決して環境に優しいシステムとは言えない,と感じています. |
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[文責:スリー・アール 菅井弘] お願い:ご意見等がございましたら是非メールにてご連絡下さい.頂いたメールはサイトやメール配信記事に掲載することもありますので,あらかじめご了承ください.掲載時に匿名もしくはペンネームを希望の方はその旨を明記してください. |
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