今回は,「ペットボトル」のリサイクルについて考えてみたいと思います.
ペットボトルはPETボトルとも記載されますが,この「PET」は,原料であるポリエチレンテレフタレートの頭文字に由来しています.
ペットボトルは,びんと比較して軽量で取り扱いが便利という利点から,国内では広く利用されています.具体的なペットボトルの用途を以下に示します.
ボトル用PET樹脂需要実績推移及び予測(単位:トン) 用途 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年(予測)
(指定PET) 清涼飲料 194,748 258,793 308,222 338,654 380,372 391,126 395,000 しょうゆ 13,222 12,900 12,501 12,829 11,265 12,076 12,300 酒類 10,836 10,234 11,479 10,461 11,090 9,363 9,000 合計 218,806 281,927 332,202 361,944 402,727 412,565 416,300
(その他) 洗剤等 12,807 10,657 9,630 9,443 5,998 5,022 5,000 食用油 1,461 1,511 2,079 2,487 3,264 2,734 3,000 調味料 10,565 11,489 14,267 13,653 12,838 12,654 12,700 化粧品 3,590 4,787 6,149 6,524 7,310 5,865 6,000 医薬品他 4,500 3,528 6,159 7,345 10,643 7,033 7,000 総合計 251,729 313,899 370,486 401,396 442,780 445,873 450,000 (出典:PETボトルリサイクル推進協議会ホームページ)
ペットボトルの用途としては清涼飲料用が全体の90%程度を占めています.需要としても年々増加の傾向にありますが,最近は多少なりとも増加傾向が弱まってきていることが上記データからも理解できます.
これらのペットボトルのリサイクルは,1995年に公布され,2000年に完全施行となった「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(通称,包装容器リサイクル法)」に基づき実施されています.
PETボトルの生産量,市町村収集量および回収率
生産量(トン) 市町村収集量(トン) 市町村回収率(%)
1993 123,798 528 0.4 1994 150,282 1,365 0.9 1995 142,110 2,594 1.8 1996 172,902 5,094 2.9 1997 218,806 21,361 9.8 1998 281,805 47,620 16.9 1999 332,202 75,811 22.8 2000 361,944 124,873 34.5 2001 402,727 161,651 40.1 2002 412,565 188,194 45.6 2003 416,300(推定)
(出典:PETボトルリサイクル推進協議会ホームページ)
PETボトルの回収率は1997年以降急激に増大し,2002年時点では50%近い回収率に達しています.
容器包装リサイクル法では,市町村が回収した一般廃棄物の中から包装容器だけを分別して指定法人に渡すことになっています.この指定法人が「財団法人日本包装容器リサイクル協会(http://www.jcpra.or.jp/)」という団体です.
上記協会の設立目的は『「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」に基づいて,特定事業者等から分別基準適合物の再商品化を受託し,併せて,容器包装廃棄物の再商品化に関する普及及び啓発並びに情報の収集及び提供等を行うことにより,我が国における生活環境の保全及び国民経済の健全な発展に寄与する』,ということになっています.
財団は特定事業者から委託を受けて再商品化事業を行います.平成16年度の予算書には特定事業者からの再商品化受託料収入の一つとしてPETボトルについては約107億円が計上されています.一方,PETボトル再商品化委託料として同額が計上されています.
特定事業者と呼ばれる事業者には,容器や包装を利用する中身製造事業者,商品を販売する際に容器や包装を利用する小売・卸売事業者,容器の製造事業者,容器包装に入った商品の輸入販売事業者,容器を輸入する事業者が含まれます.
特定事業者からの受託金をもとに,財団は再商品化事業者に委託費用を支払って再商品化を委託します.PETボトル再商品委託料は平成16年度予算ではトン当り48,000円となっています.
注意が必要なのは,市町村が収集・分別に要する費用は市町村負担,すなわち税金負担となっている点です.ちなみに,市町村が負担している一般廃棄物(PETボトルも含まれます)の収集・分別コストはトン当り200,000円程度と言われています.
構図としては,PETボトルのリサイクルは,最も費用の要する収集・分別の部分を市町村にまかせて,比較的負担の少ない再商品化事業の部分を事業者負担で成立しているリサイクルシステムとも言えます.
ところで「再商品化」という言葉ですが,現在国内で実施されているPETボトルのリサイクル方法は,「マテリアルリサイクル」に該当します.これはPETボトルから薄片(フレーク)状の再生樹脂を回収し,これらを用いた繊維製品やシート製品などを製造するというものです.
PETボトル再商品化受託量(特定事業者から財団へ)
再商品化受託量(トン)
1997 15,986 1998 27,746 1999 21,101 2000 96,584 2001 196,256 2002 230,684 2003 236,062 (出典:財団法人日本容器包装リサイクル協会ホームページ)
PETボトルの協会引取実績量(市町村から財団へ)
1997 14,014 1998 35,664 1999 55,675 2000 96,652 2001 131,027 2002 153,860 2003 185,095(引取契約量) (出典:財団法人日本容器包装リサイクル協会ホームページ)
PETボトル再商品化量(財団から再商品化事業者へ)
再商品化量(トン)
1997 8,398 1998 23,909 1999 39,605 2000 68,575 2001 94,912 2002 112,485 2003 124,298
(出典:財団法人日本容器包装リサイクル協会ホームページ)
最終的なPETボトルのリサイクル率は今ひとつわかりませんが,2002年度実績では再商品化されたのは112,485トン,一方PETボトルの生産量は412,565トンなので27%程度であることがわかります.ただし,輸出入があるためリサイクル率の算出にはより詳細な検討が必要です.
先述のとおり,現在のPETボトルのリサイクルは,PETボトルを用いて再度PETボトルを製造している訳ではありません.このような方法は「ボトルtoボトル」と呼ばれるリサイクルで,最近になって実用化の見通しが得られつつあります(化学分解法と呼ばれています).
ところで,ドイツ等のEUではリターナブルPETボトルが利用されています.これはビール瓶等のように洗って繰り返し使用する『リユース(再使用)』タイプのペットボトルで日本で検討されているリサイクルとは全く異なります.ただし,日本では種々の利用,例えば衛生上あるいは外観上の理由から基本的に認められていません.
日本でリターナブルPETボトルが話題にならない最大の理由は,リターブル化による事業者負担の増加かもしれません.現在のリサイクルシステムでは,少なくとも回収費用は市町村,すなわち税金による負担がなされています.しかし,リターナブル化すれば事業者負担となることは不可避です.
いずれにしても,PETボトルのリサイクルはシステムとしては機能し始めているようですが,本当に合理的なシステムなのかどうかは今一つ理解できません.ちなみにリサイクルのために各家庭で負担している手間もばかになりません.PETボトルから表示シートを外すだけでも大変なものがあります.本当に,社会や個人の負担に見合った効果のあるリサイクルシステムとなることを期待せざるを得ません.あくまでも私見ですが,事業者の都合だけを考えたリサイクルシステムは何れは立ち行かなくなるように感じています.
最後に,PETボトルリサイクルを含む様々分野における「リサイクル」にまつわる話題は石渡正佳氏の「リサイクルアンダーワールド」(WAVEE出版)が参考になります.機会があれば是非ご一読下さい.
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