No.062:環境(第10回)

オゾン層破壊

No.061:環境(第9回)

酸性雨

No.060:環境(第8回)

廃棄物処分と不法投棄

No.059:環境(第7回)

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No.058:年始のご挨拶(2004年)

日本の物質フロー

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国内の物質フロー

No. 060 update 2004.02.01 PDF版(138.5 kbyte)

環境(第8回)

廃棄物処分と不法投棄

 今回は「廃棄物処分と不法投棄」について考えてみたいと思います.

 「廃棄物処分と不法投棄」はメルマガ58号で述べた「物質フロー」という概念により,問題の所在をある程度理解することができると思います.繰り返しになりますが,以下に国内の「物質フロー」データを掲載します.

 
国内物質フローの入口側

自然界からの資源採取    18.4億トン
 国内における資源採取  (11.2億トン)
 海外における資源採取  ( 7.2億トン)
製品等輸入          0.7億トン
循環利用量(リサイクル)   2.2億トン
---------------------------------------------------- 
合計            21.3億トン

国内物質フローの出口側

輸出             1.3億トン
新たな蓄積         10.8億トン
エネルギー消費        4.2億トン
食料消費           1.3億トン
最終処分           0.6億トン
減量化            2.4億トン
自然還元           0.8億トン
循環利用量(リサイクル)   2.2億トン
---------------------------------------------------
合計            23.6億トン

*出口−入口の差は水分取込みに起因する物質量の増加に相当します.

(出典:平成15年版環境白書)

 これらのデータから,いかに大量の物質が流通しているか理解する必要があります.物質フローの総投入量の入口側21.3億トンの内訳を見ると7.9億トン(約37%)が海外からの資源および製品の輸入に相当します.残りの物質フローのうち2.2億トン(約11%)が国内での物質循環であり,11.2億トン(約52%)は国内資源の新たな採取によるものです.

 出口側では循環される2.2億トン(約11%)と輸出される1.3億トン(約5%)以外は国内に滞留します.その内訳は4.2億トン(約20%)がエネルギー消費,残1.3億トンが食料消費,2.4億トンが減量化,0.8億トンが自然還元,0.6億トンが最終処分となっています.そして,残りの10.8億トン(約50%)が国内蓄積の純増加です.


 環境省の上記報告で示されている最終処分となる0.6億トンという数値ですが,これは産業廃棄物や一般廃棄物として排出された廃棄物のうち最終処分に至るものが0.6億トンということを意味します.

ちなみに産業廃棄物排出量は以下のとおりとなっています.

    排出量(万トン/年)

1990  39,500
1991  39,800
1992  40,300
1993  39,700
1994  40,500
1995  39,400
1996  42,600
1997  41,500
1998  40,800
1999  40,000
2000  40,600

(出典:環境省ホームページ)

 排出された年間4億トンの産業廃棄物が中間処理等を経て最終処分に至ります.年間の不法投棄は40万トン前後と報告されていますので,産業廃棄物排出量に対する不法投棄の比率は0.1%となり,異常に高いという状態とは言えません.

 実はこの公式発表の40万トンは「確認された量」であり氷山の一角で,実際には10倍あるいは100倍の廃棄物が不法投棄されているのかもしれません.正直言って「土」をかぶせてしまえば「不法投棄」の実態は全く闇の中です.

 ところで,廃棄物の最終的な行き場である最終処分場の残余容量は決して十分な状況ではありません.


最終処分場残余容量(1999年4月1日現在)
         (単位:m3)

遮断型処分場     35,005 (39,527)
安定型処分場総数  約0.84億m3(約0.83億m3)
管理型処分場総数  約1.06億m3(約1.27億m3)
 内海面埋立    約0.36億m3(約0.37億m3)
計         約1.90億m3(約2.11億m3)

( ) 内数字は1998年度
(出典:産業廃棄物行政組織等調査(1999年4月1日現在))


 年間4億トンの産業廃棄物を排出する国で最終処分場の残余容量はわずか2億トン分しかありません.そのまま廃棄すればたった半年分に過ぎません.かなり頑張ってリサイクルや中間処理による減容を行って,最終処分となる量を減らすのが最善の解決策ということになります.

 「不法投棄」は発生量と処分可能容量間の大きな落差に起因する構造的な問題と考えざるを得ません.このような状態に対する解決策は結局,次の3つということになります.

○産業廃棄物排出量を大幅に削減する,
○最終処分場を大幅に増強する,
○中間処理により排出された廃棄物を適切に減容する.

 産業廃棄物の問題を考える上で石渡正佳氏の著書「産廃コネクション」(WAVE出版)が非常に参考になります.石渡氏は「不法投棄」を回避するには「中間処理施設の増設により,最終処分と不法投棄を同時に減らす」ことが有効と述べています.


 次に,現在の「廃棄物処理事業者」の実態です.産業廃棄物法では,産業廃棄物処理業者は収集・運搬業,中間処理,最終処分,有害廃棄物処理の4つに分類されています.

          平成12年4月1日  平成11年度   平成11年度
          許可件数     新規許可件数  更新許可件数
  
収集運搬業     136,523      21,428          16,732
処分業       9,914       1,037           1,394
 中間処理のみ  (8,166)           (1,005)         (1,123)
 最終処分のみ   (915)             (19)            (135)
 中間・最終   (833)            (13)            (136)

(出典:長沢伸也,森口健生著,「廃棄物ビジネス論」,p.106,同友館)
(出所:環境省編,「産業廃棄物処理業の許可状況」)


廃棄物処理業の売上と従業員数

業種別             調査企業件数 売上高(千円) 従業員(人)

廃棄物処理業全体        1,706     204,873       17.1   
ごみ収集運搬業                  208           196,854       18.7
ごみ処分業                      23            209.898       27.4
清掃事業所                      70            152,626       40.2
産業廃棄物収集運搬業            233           254,707       15.9
産業廃棄物処分場                236           364,297       15.6
特別管理産業廃棄物収集運搬業    3             177,399       10.6
特別管理廃棄物処分業            3             251,398       10.6

(出典:長沢伸也,森口健生著,「廃棄物ビジネス論」, p.110,同友館)
(出所:TKC全国会システム,「TKC経営指標」,2002年, p.1001)


 以上のデータから,現在の廃棄物処理処分は小規模な多数の事業者により何とか乗り切っているのが実情です.しかし,業界としての認知度を改善するためには,ある程度の規模で取組む事業者の育成が不可欠と思います.

 アメリカとは法律や国土面積等の違いから比較はできませんが,例えば,ウェイスト・マネージメント社という廃棄物処理処分事業者があります.従業員数は約5万7,000人,2001年度の売上は日本円で約4兆4,000億円に達しています.まさに大企業と呼べる廃棄物処理処分事業者です.

 日本では「廃棄物」は「厄介者」という潜在的な意識があるように思います.この負のイメージが強いため,「大企業」は「リスク」を恐れ,積極的に参入するという流れではありません.したがって,期待されるのは小規模処理業者の連携・ネットワーク化が進み,大きな事業者連合が形成されるような流れと感じています.

 最近,良く耳にする「コンプライアンス(遵法)」,すなわち,法律を守るという姿勢は企業が成長する過程で一層強化されていく可能性が高いと思います.確かに現在は大学生や高校生の就職希望先に廃棄物処理処分事業者の名前はありません.しかし,将来,社会貢献をする企業として,「廃棄物処理処分」事業者が誕生し,多くの若者が生きがいのある廃棄物ビジネスに積極的に取組むことを期待したいと思います.

[文責:スリー・アール 菅井弘]

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