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No.032：エネルギー(第16回)
燃料電池
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No.031：エネルギー(第15回)
氷雪冷熱
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廃棄物燃料製造
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No. 059 update 2004.01.16 PDF版(144.9 kbyte)
今回は｢土壌汚染｣について考えてみたいと思います． 最近，｢土壌汚染｣問題がメディアでも良く報道されるようになっています．この背景には２００３年２月に｢土壌汚染対策法｣が施行され，｢土壌汚染｣に対する本格的な対応が求められる状況になってきたことも一因と考えられます． ところで，いわゆる｢公害｣に関連する法律としては以下のようなものがあります．�‖腟け�染防止法 1968年�⊃綣善�濁防止法 1970年�Ａ�音規制法 1968年�た尭圧�制法 1976年�ス�業用水法 1956年�Ψ�築物用地下水の採取の規制に関する法律 1962年�О�臭防止法 1971年 ｢土壌汚染対策法｣が｢大気汚染防止法｣や｢水質汚濁防止法｣等のような｢防止法｣ではなく，また｢騒音防止法｣や｢振動規制法｣等のような｢規制法｣でもないことに気がつきます． 土壌汚染原因物質の多くは，法律を遵守した｢排気｣や｢排水｣に含まれたものが長い年月をかけて｢土壌｣にストックされてきた，という背景や，自然由来の汚染源もあることなどから｢防止｣や｢規制｣には馴染み難いことが理由なのかもしれません． したがって，｢対策｣は従来どおり｢水質汚濁防止法｣等で対応せざるを得ないのが実態です．裏を返せば｢土壌汚染｣を｢防止｣や｢規制｣することがいかに難しいか，ということが推察できます．｢土壌汚染対策法｣は原則として，�〕�害物質を使用している施設が廃止され住宅地等になる場合，�⊆�辺住民から懸念の声が上がるなどして都道府県知事が｢健康被害が生じる恐れがある｣と判断した場合，に土地所有者に対して調査を求める，という内容になっています．換言すれば，周辺住民の懸念がなく，かつ特に施設の廃止等が計画されていない場合には，当面は現状維持が可能ということになります． 海外に目を向けると，アメリカでは１９８０年に｢包括的環境対処・補償・責任法(通称，スーパーファンド法)｣が，オランダでは１９８３年に｢暫定土壌浄化法｣，１９８７年に｢土壌保全法｣，１９９４年に｢土壌保護法(暫定土壌浄化法と土壌保全法の一括化)｣が，ドイツでは１９９０年に｢環境賠償責任法｣，１９９９年に｢連邦土壌保護法｣がそれぞれ制定されています． 日本の｢土壌汚染対策法｣の制定は，これらの国々の対応と比べて１０年以上の遅れをとったことになります．１９９０年前後はバブル経済の絶頂期で｢土地｣取引が活発であり，これを阻害するような法律の制定はできるだけ先延ばしにしたかったのかもしれません． 国内の土壌汚染については，都道府県が把握した調査結果が環境省により｢平成12年度土壌汚染調査・対策事例及び対応状況に関する調査結果の概要｣(平成14年2月環境省環境管理局水環境部)として整理，報告されています． 土壌汚染物質は重金属等，ＶＯＣとこれらの複合物に分類でき，ほぼ同程度の超過事例が報告されています．ちなみにＶＯＣとは揮発性有機化合物(volatile organic compounds)のことで，溶剤・洗浄剤などとして使用されているものです． 物質別の超過事例数（累積）(重金属等)鉛 170ヒ素 143六価クロム 95総水銀 77シアン 61カドミウム 33セレン 24PCB 10(VOC)トリクロロエチレン 178テトラクロロエチレン 152シス-1,2-ジクロロエチレン 105ベンゼン 251.1-ジクロロエチレン 24ジクロロメタン 16 ｢土壌汚染浄化｣の作業を良く｢土壌汚染修復｣という言葉で表現しています．これは｢Environmental Remediation(環境修復)｣に由来して使用されているものと思います． ところで，具体的な｢土壌汚染浄化｣法としては汚染された場所で行う｢原位置浄化｣と｢掘削浄化｣に分類できます．｢原位置｣とは汚染された状況のままを意味し，掘削を伴わない方法です．一方，｢掘削｣は土壌を掘り起す操作を伴う方法で，掘り起した土の浄化作業を敷地内で行うか，敷地外に持ち出して行うかは別の問題となります． 最も時間のかからない方法は，｢掘削｣して｢汚染土壌｣を取り除き，他の土と入れ替える方法です．この場合，｢汚染土壌｣は封じ込め等の処理を適宜行った後に最終処分場に運び込んで処分することになります． 環境ビジネスの中でも土壌汚染浄化は注目されています．具体的な市場規模の一例として，以下の式に従った推定(ポテンシャルの推定)が行われています．土壌汚染対策費用＝(土壌汚染調査費用)＋(土壌汚染浄化費用)ちなみに，｢土壌汚染調査費用｣としては２兆３，０００億円，｢土壌汚染浄化費用｣は１１兆円，合計１３兆３，０００億円という推定金額が報告されています．（出典：http://www.gepc.or.jp/news/16-houkoku.html） ｢汚染土壌｣修復はあくまでも後始末の｢コスト｣と考えられます．したがって，｢土壌｣を管理する合理的なシステムの構築がより先決です．たとえば，現行法では，掘削した汚染土壌は特別管理産業廃棄物として扱われます．このため｢汚染土壌｣は，完全に浄化した後も｢特別管理産業廃棄物｣のレッテルを貼られ続ける可能性があります． 費用を掛けて浄化しても，結局，｢特別管理産業廃棄物｣として処分することを求められるならば，土壌汚染を浄化すること自体への関心が失われかねません．このような建前優先では，処分場確保の困難さからみても｢汚染土壌｣の｢不法投棄｣が拡大する恐れがあります．しかし，現実には浄化した土壌を再利用するような社会システムの構築は，日本の最も｢不得意｣な分野です． 浄化土壌に｢完全性｣を求めればシステムは成り立ちません．この種のシステムには｢リスク｣はつきものです．しかし，できるだけ｢リスク｣を軽減できるシステムを構築することはできます．一方，この種の｢リスク｣を背負うことで，｢汚染土壌｣の｢不法投棄｣の抑制等が原因となる別の大きな｢リスク｣が回避できる可能性があります． さらに｢リスク｣を負う覚悟ができたとしても，実現のためには大きな課題が残ります．この種のシステム構築には国，地方自治体を越えた連携，関係省庁間の連携が不可欠です．時間を要するかもしれませんが，これらの連携の構築に私自身も積極的に取組んで行きたいと考えています． 日本では｢不動産取引｣のための｢土壌汚染修復｣ビジネスという見方に偏りがちですが，人への健康被害をできるだけ合理的なコストで最小限に抑え，住み易い環境を子どもたちに残すためにどのような｢汚染土壌｣の管理システムが必要か，を考えることは大切な課題であると思います．
[文責：スリー・アール 菅井弘]
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