No.032:エネルギー(第16回)

燃料電池

No.031:エネルギー(第15回)

氷雪冷熱

No.030:エネルギー(第14回)

廃棄物燃料製造

No.029:エネルギー(第13回)

廃棄物熱利用

No.028:エネルギー(第12回)

太陽熱利用

No.027:エネルギー(第11回)

バイオマス

No.026:エネルギー(第10回)

廃棄物発電

No.025:エネルギー(第9回)

風力発電

No.024:エネルギー(第8回)

太陽光発電

No.023:エネルギー(第7回)

地熱発電

No. 057 update 2003.12.16 PDF版(132 kbyte)

環境(第6回)

水質汚染

 今回は「水質汚染」について考えてみたいと思います.

 「水質汚染」の問題は非常に広範囲な領域に及ぶことから全体を理解することは容易ではありません.「川」,「湖沼」や「海」などの環境汚染を始め,「地下水」や「水源」汚染など多岐にわたります.そこで,まず「人」と「水」との関係や,地球における「水」について考えたいと思います.

 人間のからだの約60〜80%は水分で,特に血液の90%は水分とのことです.すなわち「水」は「大気」と同様に人間の生存にはなくてはならないものです.

 一方,地球は「水の惑星」や「水球」と呼ばれるほど,水の豊富な惑星で14億km3の水が存在すると言われています.この大部分は「海水」で高濃度の塩分を含んでいるため,人がそのまま利用できる「淡水」は地球に存在する水の2.5%に過ぎません.

地球上の水の内訳(%)

海水       97.5
淡水        2.5


淡水の内訳(%)

地下水      30.1 
河川水       0.006
沼地水       0.03
湖水        0.26
氷河,万年雪等 約70 


 日本の水資源は2兆4540億トンで,そのうちの90%が「地下水」と言われています.すなわち約2500億トンが比較的容易に利用できる水ということになります.

(出典:
http://www.pref.nagano.jp/nousei/totikai/suirofu/kinag_s1.pdf)


 一方,日本の1975年および1998年における水の使用量(用水量)に関するデータは以下のとおりです.

1975年の用水量

生活用水 114 億トン
工業用水 166 億トン
農業用水 570 億トン
合計   850 億トン

1998年の用水量

生活用水 164 億トン
工業用水 137 億トン
農業用水 586 億トン
合計   887 億トン

(出典:国土交通省水資源部のホームページ
http://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/wrd.htm
昭和50年以降の全国における水使用量の変遷
http://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/hakusyo/h13/2.htm#2-2)


 現時点で比較的容易に利用できる「水」資源の相当量を既に使用していることになります.この数値は最近でも比較的増加の幅が小さいことから新たな水資源の開発が容易ではないことは類推できます.


 以上からみて「水」資源は「量」的には厳しさはあるものの,国内では当面は何とか確保できるものと思われます.しかし,「質」的にはどうかという点が大変気になります.

 日本のミネラルウォーター消費量は年々増加していますが,諸外国と比較するとまだ非常に少ない量となっています.すなわち,日本やイギリスでは水道水の品質が良好であるため直接飲用に用いられていると推定されます.

日本及び諸外国のミネラルウォーター年間消費量(リットル/人)

年度    日本   アメリカ  イギリス フランス イタリア 

1991  2.3  36    8    104   116 
1992  2.8  37    8    110   117 
1993  3.3  40    9    112   120 
1994  4.5  43    11   106   141 
1995  5.2  45    13   111   125 
1996  5.0  49    14   111   128 
1997  6.3  53    14   116   134 
1998  6.9  58    15   121   137 
1999  8.9  64    16   130  138 
2000  8.9  69   
2001  9.8 

(出典:日本ミネラルウォーター協会資料)


 水道水を飲用に用いている割合の高いわが国では水源の水質は人々の健康に直接大きな影響を与える可能性があります.このような背景から水道水の「新水質基準」が1993年12月1日に施行されました.その中で細菌,重金属や有機物質について様々な基準値が定められています.

 個人的には,これらの基準値は守られていれば安全という値というよりも,最低守られることが必要な目安という位置付けと考えています.ところで,水道水という観点から注目されるのは消毒剤として注入される塩素剤からの「残留塩素」と,塩素注入により生成する「トリハロメタン」ということになります.

 これらが注目されることになる根本的な原因は,水源の汚染による塩素注入量の増加です.水道水を供給する「浄水場」では塩素を以下のような目的で注入しています.

(1)消毒
(2)藻類など微生物の制御(凝集・沈澱や濾過の効率改善)
(3)Fe2+除去やMn2+の除去
(4)アンモニア性窒素の除去
(5)ろ過池内などの嫌気性腐敗の防止

 水源が汚染されれば処理のための塩素注入量も大幅に増加します.これらは廻り回って飲用水にも影響を与えることになります.これら水源の汚染原因は私たちの日常生活様式とも密接に関連しており,私たちは加害者にも被害者にも成り得ると考えることができます.


 例えば水源汚染の一つに「富栄養化」があります.「富栄養化」とは,湖沼や湾などの水域で窒素やリンなどの「栄養塩類」が多くなる現象です.この栄養の代表である窒素やリンが急速に増えると植物性プランクトンが増加し生態系のバランスが崩れます.また,見た目にも汚くなって悪臭を発したり,魚などの他の生物にも影響を与えるなどの問題が生じます.

(出典:合成洗剤と富栄養化,http://www.live-science.com/bekkan/intro/fueiyou.html

 主な原因は生活廃水や工業排水,農業廃水などの人為的なものです.最近の合成洗剤は無リン化が進んでおり影響は小さくなっていますが,決して無害化された訳ではありません.合成洗剤と石鹸の影響等に関する議論等も行われていますが水源汚染防止の観点から洗剤や石鹸の使用量削減が最も本質的と言えます.


 いずれにしても「水質汚染」の問題は,環境問題の中でも最も身近で,かつ切実なものの一つです.様々な視点から環境問題の一つとして「水質汚染」の問題を読者の皆様ご自身でお考えいただければと思います.

[文責:スリー・アール 菅井弘]

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