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No.072:環境(第20回)
まとめ
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No.071:環境(第19回)
ガラスびん
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No.070:環境(第18回)
スチール缶
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No.069:環境(第17回)
アルミ缶
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No.068:環境(第16回)
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No.067:環境(第15回)
ペットボトル
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No.066:環境(第14回)
電池
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No.065:環境(第13回)
リサイクル
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No.064:環境(第12回)
ダイオキシン
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No.063:環境(第11回)
PCB
No. 056 update 2003.12.01 PDF版(144.2 kbyte)
今回は「室内空気汚染」について考えてみたいと思います. 「室内空気汚染」とは化学物質等により室内空気が汚染され,様々な健康被害をもたらす状態と捉えることができます.最近,よく耳にする「シックハウス症候群」もこの室内空気汚染が原因と考えることができます. WHO(世界保健機関)は「大気汚染」(前回テーマ)や「室内空気汚染」によって年間約300万人が死亡しており,このうちの280万人が「室内空気汚染」による死亡,残り20万人が「大気汚染」による死亡であると試算しています. 「大気汚染」よりも「室内環境汚染」による死亡者数が圧倒的に多いという報告は私にとって驚きでした.これは屋外では拡散等による汚染物質の「希釈」が期待できますが,室内では汚染物質の「滞留」や「濃縮」が起こり得ることが原因のようです.CNNの記事によるとアジアやアフリカ諸国での死亡者が多いのは室内での石炭やバイオマス燃料の使用が原因と記載されています.(出典:http://www.cnn.com/NATURE/9908/30/air.pollution.enn/)世界における室内空気汚染による年間死亡者 比率(%) 死亡者数(万人)開発途上国(都会) 23 64開発途上国(地方) 67 188先進国(都会) 9 25 先進国(地方) 1 3 合計 280世界における大気汚染による年間死亡者 比率(%) 死亡者数(万人)開発途上国(都会) 93 18.6先進国(都会) 7 1.4 合計 20(出典:http://www.kcn.ne.jp/~azuma/news/Feb2000/000207.htm) 世界の年間における交通事故死者の総数約100万人と比較しても「室内空気汚染」は普段感じている以上に深刻な環境問題の一つと言えます.その汚染源は極めて多種多様ですが,今回は「室内空気汚染」と関連の深い「シックハウス症候群」,「ラドン」,「たばこの煙」の3テーマについて考えます. まず,「シックハウス症候群」という言葉ですが,「シック」は英語で病気,「ハウス」は家という意味の和製英語です.欧米では「シックビルディング症候群(SBS)」と呼ばれています.「シックハウス症候群」は「室内空気汚染」の汚染が原因となっています.室内空気の成分例(%)窒素 77酸素 21その他*1 1有害化学物質*2 1*1)その他はアルゴン,ネオン,二酸化炭素,メタン,ヘリウム,水素,クリプトン,キセノン,二酸化窒素,一酸化窒素等*2)有害化学物質はホルムアルデヒド,揮発性有機化合物,防虫剤,殺虫剤,洗剤,農薬,たばこの煙,粒子状物質,ラドン,ハウスダストなど(出典:http://www.kcn.ne.jp/~azuma/news/Feb2000/000207.htm) 「シックハウス症候群」の代表的な原因物質はホルムアルデヒド,トルエン,キシレン,パラジクロロベンゼンその他の建築物に用いられる建築材料等に含まれる化学物質です.これらは蒸気になり易い物質を持っており,VOC(揮発性有機化合物)とも呼ばれています. シックハウス症候群の患者数は国内で100万人を越えると推定されており,近年,著しく増加している状況のようです. 次に「ラドン」による室内汚染について考えてみたいと思います. ラドンは天然土壌に含まれるウランが崩壊していく過程で発生する崩壊生成物の一つです.ラドンの半減期は3.8日と短い物質ですが,肺に入るとその崩壊生成物が気管支や肺胞に沈着し,α線と呼ばれる放射線を放出します.これは天然由来であり日常生活から切り離すことはできません.これら自然放射線による年間被ばく線量は以下のとおりです.内部被ばく 空気中のラドンなどの吸引 1.3mSV 食物などから 0.35mSv外部被ばく 大地放射線から 0.4mSv 宇宙線から 0.35mSv合計 2.4mSv 年平均2.4mSvのうち約半分がラドンに起因する被ばくです.米国・環境保護庁(EPA)は米国内でラドンが原因と考えられる肺ガンで年間2万人が死亡していると推定しています.ただし,日本における屋内ラドン濃度は欧米に比べかなり低く,世界のラドンによる平均被ばく線量が1.3mSvに対し,わが国の線量は0.5mSvと推定されています. しかし,最近,日本でも密閉度の高い住宅が増えており,室内ラドン濃度も欧米なみに高くなってきています.放射線医学総合研究所が昭和59年から5年計画で行った調査では,マンションや木造家屋など一般的な日本の住まいの室内ラドン濃度は平均すると外気の8〜80倍に達すると報告されています. 「たばこ」の煙は,性質により2種類に分けられます.一つはたばこを吸う人(喫煙者)が吸い込む主流煙,もう一つは火のついた先から出る副流煙です.主流煙は燃焼温度の高い部分で発生し,たばこの内部やフィルターを通過するのに対して,副流煙は燃焼温度が低いため,主流煙に比べて有害物質が高い濃度で含まれます.たばこ煙に含まれる有害物質 物質名 主流煙に対する副流煙の含有量比(倍) ニコチン 2.8 ナフチルアミン 39.0 カドミウム 3.6 ベンツピレン 3.9 一酸化炭素 4.7 ニ卜ロソアミン 52.0 窒素酸化物 3.6 アンモニア 46.0 ホルムアルデヒド 50 (出典:http://www.hit-1.net/tabako/in.html(データ:米国健康教育福祉省ほか)) 副流煙がより有害であると言っても,喫煙者が非喫煙者より安全である訳ではもちろんありません.喫煙/非喫煙死亡率(倍)喉頸ガン 20.3肺ガン 4.6食道ガン 2.1 口腔ガン 4.6乳ガン 1.5喫煙者 :▲5分30秒/1本(寿命短縮率)非喫煙者:▲1分/1本(受動喫煙により)(出典:http://www.daikinaircon.com/catalog/d-catalog/air/alecole/tabaco_1.html ちなみに肺ガン罹患のうち,男性では70.4%,女性では26.3%が,本人の喫煙に起因すると推定されています.(出典:肺ガンのリスクファクター,http://epi.ncc.go.jp/ronbun/sobue.pdf) 「室内空気汚染」は日常生活様式と密接に関係し,様々な要因が重なる形で発生しています.しかし,この問題に対する有効な対策の一つが「換気」である点は共通です.最近は省エネを実現できる「高気密」住宅が増加していますが,これからは「省エネ」と「換気」のバランスへの配慮が不可欠となります. 最近は物質的に大変豊かな生活が,逆に様々な問題を引き起こしています.私たちは自分たちの生活の安全のためにも,今一度,現在の生活様式を見直してみることが必要なのかもしれません.
[文責:スリー・アール 菅井弘]
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