No.032:エネルギー(第16回)

燃料電池

No.031:エネルギー(第15回)

氷雪冷熱

No.030:エネルギー(第14回)

廃棄物燃料製造

No.029:エネルギー(第13回)

廃棄物熱利用

No.028:エネルギー(第12回)

太陽熱利用

No.027:エネルギー(第11回)

バイオマス

No.026:エネルギー(第10回)

廃棄物発電

No.025:エネルギー(第9回)

風力発電

No.024:エネルギー(第8回)

太陽光発電

No.023:エネルギー(第7回)

地熱発電

No. 055 update 2003.11.18 PDF版(128.7 kbyte)

環境(第4回)

大気汚染

 今回は「大気汚染」について考えてみたいと思います.

 「大気汚染」とは『火山噴火などの自然災害でではなく,人間の経済・社会活動による物質の燃焼などによって大気が汚染されることをいう.大気汚染物質には,一酸化炭素,硫黄酸化物,窒素酸化物,炭化水素,有機塩素化合物,鉛化合物,重金属などがある.日本では,高度経済成長期に問題になり,以来,窒素酸化物,フッ素化合物,アスベスト粉塵などによる大気汚染が数多く発生している.』と説明されています.
(出典:環境gooホームページ:http://eco.goo.ne.jp/ecoword/files/word/26.html)

 日本では1968年に「大気汚染防止法」が施行されました.この法律は燃料等で発生する「ばい煙」,工場等で発生する「粉じん」,「自動車排出ガス」,「有害大気汚染物質」等を規制することが目的でした.

 その後,「有害大気汚染物質」として234種類が指定され,このうちアクリロニトリル,アセトアルデヒド,ダイオキシン類,テトラクロロエチレン等の22種類が優先取組物質となっています.


 また,環境基本法では「大気の汚染に係わる環境上の条件につき人の健康を保護する上で維持することが望ましい基準」として以下の値が定められています.

二酸化硫黄(SO2):1日平均値が0.04ppm以下,1時間値が0.1ppm以下.
二酸化窒素(NO2):1日平均値が0.04ppm〜0.06ppmの領域内あるいは領域以下.
光化学オキシダント:1時間値が0.06pp以下.
一酸化炭素(CO):1日平均値が10ppm以下,1時間値の8時間平均が20ppm以下.
浮遊粒子状物質:1日平均値が0.10mg/m3以下,1時間値が0.20mg/m3以下.


環境基準値に対する達成率や大気汚染の推移に関する報告の一例を以下に示します.

環境基準達成率(%)

    SO2   NO2          浮遊粒子状物質
                (<0.04ppm) 
1974    70      -              20
1975    80      -              15
1980    98      70             30 
1985    100     75             50
1990    100     68             42

(出典:http://www.mst.e.chiba-u.jp/misawa/m_rep/m_r_9503.pdf)


大気汚染の推移(ppm)

    SO2      NO2      CO 

1965    0.058    -        -
1970    0.048    0.022    2.38
1975    0.021    0.026    1.38
1980    0.016    0.027    1.00
1985    0.011    0.024    0.80
1990    0.010    0.028    0.72
1995    0.008    0.029    0.7
1996    0.009    0.029    0.7

(出典:日本国勢図会)


 かつて頻発した高濃度の二酸化硫黄(SO2)による「大気汚染」は大幅に改善されていますが,二酸化窒素や浮遊粒子状物質については一進一退の状況にあります.

 これらの「大気汚染」の発生源として,例えば二酸化硫黄や一酸化炭素は火山活動に伴って発生する場合もありますが,大部分は石油・石炭の燃焼によって排出されたものです.また,二酸化窒素は自動車排ガスが代表的な発生源と考えられます.

 浮遊粒子状物質の発生源も多種多様です.自動車排ガス中の粒子状物質の寄与が大きいと考えらますが,風による土壌の舞い上がりや海塩などの寄与もあります.以前はスパイクタイヤにより発生する粉塵も問題となる時期がありました.

 「大気汚染」は,様々な生産活動や利便を享受する際に発生します.車を運転したり,電気を利用することを日常的に行っています.これらの活動の裏側には,大気汚染物質の発生という「リスク」が常に生じています.


 汚染源としては一般的ではないかもしれませんが,大気中に放出された「ベンゼン」という化学物質による「リスク」に関する報告があります.数値で示された「リスク」はあまり実感がわきませんが,「リスク」の地域差がいかに大きいか,という点はよく理解できます.

ベンゼンによるがん死亡リスク(1km2当たりのガン死亡者数)

東京都 板橋区   0.006682
東京都 練馬区   0.005615
大阪府 大阪市   0.004325
兵庫県 伊丹市   0.002388
愛知県 名古屋市  0.002045
福岡県 福岡市   0.000917
香川県 高松市   0.000493
北海道 札幌市   0.000425
長崎県 長崎市   0.000421
広島県 広島市   0.000364
岡山県 岡山市   0.000295
北海道 滝川市   0.000064

(出典:全国大気汚染マップ(ベンゼンリスク)http://risk.kan.ynu.ac.jp/air/chizu/benzGanmap.html)


 「大気汚染」による健康被害は大きな問題ですが,これらの問題で私たちが被害者となる可能性がある一方,加害者ともなりうるという事実は忘れてはならないように思います.

 「大気汚染」の問題は経済の発展とも密接に関連しています.最近では「大気」の品質改善がほとんど進展していないのが現状で,「経済」的に成り立つ方策での「大気汚染」回避もそろそろ限界に近づいている,と言えそうです.


 これまで「経済」の発展を前提に,その枠中で「環境」(実際には「人間」の健康)への負荷を低減するための対策が実施されてきました.しかし,現在は「環境」制約を前提に「経済」の展開を考えることが不可欠な時代になったと言えるのかもしれません.

[文責:スリー・アール 菅井弘]

お願い:ご意見等がございましたら是非メールにてご連絡下さい.頂いたメールはサイトやメール配信記事に掲載することもありますので,あらかじめご了承ください.掲載時に匿名もしくはペンネームを希望の方はその旨を明記してください.