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No.012:30年間の変化(第9回)
交通
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No.011:30年間の変化(第8回)
再生可能エネルギー
No.010:30年間の変化(第7回)
電力
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食料
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No.003:将来の社会像(第2回)
将来の社会像(第2回)
No. 054 update 2003.11.01 PDF版(147.5 kbyte)
今回は「地球温暖化」について考えてみたいと思います. 「地球温暖化」による地球気温の変動を考える前に,極めて長期的な気温変動について理解しておく必要があると思います.そこで氷河期について考えてみます. 人類の歴史が始まった新生代第四紀更新世は氷河時代と呼ばれ,北半球のかなりの部分が大陸氷河で覆われていたようです.その間に気候の寒冷化が見られ,更新世には以下に示す4回の氷河期があったと言われています.ギュンツ氷期(約120万年前 〜 80万年前頃 ) ミンデル氷期(約 50万年前 〜 30万年前頃 ) リス氷期 (約 20万年前 〜 13万年前頃 )ヴェルム氷期(約 7万年前 〜 1万年前頃 ) 現在は最後の氷河期(ヴェルム氷期)と次の氷河期のあいだの間氷期にあたります.この間氷期は1〜2万年と比較的短期であると言われています. 最後の氷河期は,現在から1万年前に終わったとされ,今は次の氷河期にむかって気温が下がり始めている時期にあたります.10万年サイクル説をもとにするとあと2000年位で氷河期に入るようです.これが,いわゆる「人間」が寄与しない状態における「地球」の気温変動の方向として理解できます. 一方,短期の気温変動については「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第3次評価報告書に以下のデータが記載されています. 1861年以降の140年間における平均気温上昇は0.6±0.2℃で,紀元1000から2000年までの1000年間の温度変化は1850年半ばまでやや気温低下傾向(0.1〜0.2℃程度)にあると報告されています.(出典:http://www.jccca.org/education/datasheet/01/data0101.html) マクロ的な視点から1850年半ばまでの緩やかな気温低下は次の氷河期に向けた気温低下という説明と合致します.一方,1850年以降の150年程度の短期間での温度上昇は人類の活動に起因した温度上昇である可能性が高いことが理解できます. すなわち,これが「地球温暖化」と呼ばれる事象です. この「温暖化」という事象は,太陽による日射エネルギーと地球から宇宙へ出ていく熱のバランスから生じます.「温暖化」は「温室効果」とも呼ばれますが,これは太陽からの可視光(目に見える光)等は透明なガラスやビニールシートを透過して温室内に到達し,土や植物等の表面で吸収されます. 温められた土や植物等から熱(赤外線)が放射され冷えていきますが,熱(赤外線)はガラスやビニールシートを透過しにくい性質があるため,温室内の温度は上昇します.「地球温暖化」も,地表を包む大気中に温室のガラスやビニールシートに相当する物質が蓄積されてきたために発生します. この「温暖化」の原因物質として二酸化炭素,メタン,一酸化二窒素が代表的なものとなっています.これら原因物質の南極及びグリーンランドのいくつかの観測点における氷床コア及び万年雪から得られた大気中濃度データと最近数十年に大気を直接測定して得られた濃度データを以下に示します.主な原因物質の大気中濃度(概数)年 二酸化炭素[ppm] メタン[ppm] 一酸化窒素[ppm]1000 280 650-750 265-2701200 280 650-750 265-2701400 280-285 650-750 270-2751600 275-280 650-750 265-2701800 275-280 700-800 265-2801900 300 800-900 270-2802000 350以上 1500以上 310以上(出典:気象庁「気候変動監視レポート2001」) 以上のデータから,1861年以降の気温上昇と大気中の二酸化炭素,メタン,酸化窒素等の濃度上昇傾向とは時期的に極めて一致していることがわかります.すなわち,産業革命以降の人類の活動が気温に影響を与えている,と考える必要があります. 一方,「温暖化」が地球にどのような影響を及ぼすか,という「将来」予測については様々な報告があり,「将来」を考えることが如何に難しいかということだけは容易に理解できます. ところで,地球の誕生から現在までの歴史でも大気の組成は大きく変動しています.また,太陽系の他の惑星と比較しても地球の大気組成は極めて特異的であり,酸素濃度が高く,二酸化炭素濃度は極めて低いという特徴があります.惑星の大気組成 地球 金星 火星 木星窒素 78% 3.5 2.7 - 酸素 21% - - - アルゴン 0.9% - 1.6 -二酸化炭素 0.035%(350ppm) 96 95 -水素 - - - 93ヘリウム - - - 7メタン - - - 0.3(出典:http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~keikei/enlighten/atmos.html) 地球大気で二酸化炭素濃度が低い原因として,光合成生物の働きと地球大気から二酸化炭素を取り除く大気・陸・海をめぐる水の循環が注目されています.しかし,これらは自然界の作用であり,科学技術を駆使して人為的に大気組成を制御することは極めて難しいと感じています. 一方,「化石燃料」や「化学物質」を使用せずに現在のような「経済」中心の社会を維持することも現実的とは思えません.エネルギー分野で期待される「太陽光」,「風力」,「燃料電池」等にしても,少なくとも現段階では石油をベースとした社会システムの存在が不可欠です.すなわち,人類の活動に伴う二酸化炭素の発生は,抑制はできても完全な回避は極めて難しいと考えざるを得ません. 日本でも排出量の低減に取組んでいますが,実績では京都議定書の目標達成は非常に厳しい状況にあります.このような状況から考えると,日本は森林吸収分や排出権取引等を活用して数合わせをすることになりそうです.日本の温室効果ガス排出量年度 温室効果ガス排出量[億トン-CO2]基準年 12.241990 11.761991 11.981992 12.131993 11.941994 12.651995 11.381996 13.361997 13.331998 12.811999 13.07 (基準年の約7%増加)2008-2012 11.5 (基準年の6%削減) (出典:http://www.env.go.jp/press/file_view.php3?serial=3420&hou_id=3254) 前回のメルマガ53号で石炭,原油,液化石油ガス,液化天然ガス等の輸入量を示しましたが,これらの総量は年間4〜5億トン程度です.一方,二酸化炭素排出量原単位は液化石油ガスで約3[kg-CO2/t-LPG],ガソリン,重油の石油類では2.3〜3.0[kg-CO2/l]となっています. 4〜5億トンの化石燃料を利用するとその約3倍程度の重量に相当する二酸化炭素が排出されると推定され,ほぼ上記数値と一致しています.すなわち,「地球温暖化」の問題は,エネルギー問題として理解する必要があります. 「地球温暖化」の問題は,ある意味で人類が現在のような社会を継続する限り,ほとんど回避できない問題と捉えることがより現実的です.技術主体の解決策は,化石燃料を用いないエネルギー発生技術を開発できたとしても汎用化されるには多くの時間を要するため問題の一部を解決するにしか過ぎません. 個人的には,氷河期に向かう気温の長期トレンドを踏まえ,あまり悲観的に考えずにできるだけ自然界の二酸化炭素吸収能力を破壊する行為を回避する取組みや,日常生活の中で無駄使いはしないという地道な活動を継続するしかないように感じています.
[文責:スリー・アール 菅井弘]
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