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No.042:エネルギー(第26回)
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メタンハイドレート
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No.035:エネルギー(第19回)
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天然ガスコージェネレーション
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No.033:年始のご挨拶(2003年)
日本の財政
No. 051 update 2003.09.15 PDF版(139.6 kbyte)
今回は,シリーズ最後のテーマとして「海洋温度差発電」について考えてみたいと思います. 「海洋温度差発電」は,「再生可能エネルギー」である海洋エネルギーを利用した発電方法(海洋温度差発電,波力発電,潮流・潮汐発電)と位置付けることができます. 同時に「海洋温度差発電」は,「新エネルギー」の一つである「温度差発電」の一つと位置付けることもできます.「温度差発電」とは温水(約25〜80℃)と冷水(約5〜20℃)のわずかな温度差(15℃以上)で発電する発電システムで,温水には海の表層水(約25℃〜30℃)や温泉水・工場温排水・船舶のエンジン冷却水の排水(いずれも約60〜80℃)等が利用できます. 「温度差発電」の中で海水を熱源とする温度差発電を「海洋温度差発電(OTEC:Ocean Thermal Energy Conversion)」と呼んでいます.(参考資料:株式会社ゼネシス(http://www.xenesys.com/japanese/index.html)のホームページ) 「海洋温度差発電」のより具体的な原理は以下のとおりとなっています:(1)海洋表層部の温かい海水で,沸点の低いアンモニア等の熱媒体を蒸発させる,(2)発生したアンモニア蒸気でタービンを回転させて発電する(通常の火力発電も原子力発電では「水」を蒸発させ「水蒸気」を発生させますが,海洋温度差発電では蒸発しやすいアンモニア等を使います),(3)次に深層部の冷たい海水をくみ上げて,気体状態のアンモニアを冷やし液体に戻す,(4)液体に戻ったアンモニア等を再度,表層部の温かい海水でアンモニアを蒸発させる,(1)〜(4)の操作を繰り返し,発電を行うことになります. 「海洋温度差発電」の原理そのものは一世紀以上も前の1881年にフランス人科学者のダルゾンバール(J. D'Arsonval)により最初に考案され,1970年代の石油ショックをきっかけに,特に日本とアメリカにおいて本格的な研究が行われるようになりました. 「海洋温度差発電」の潜在的なエネルギー資源量は,地球に到達する太陽エネルギーから推定することができます.太陽から地球表面への入射光を83.6×10^12[kW]とすると,海表面には毎秒55.1×10^12[kW]のエネルギーが到達していることになります.このエネルギーの2%を海洋温度差発電に利用できると仮定すると1.1×10^12[kW]となります.この量は2000年に世界で必要なエネルギー量の100倍に相当し,資源量としては極めて膨大なものです.(出典:http://members.jcom.home.ne.jp/okumayama/mare.pdf). いずれにしても,海洋の表層部の温海水と深層部の冷海水との温度差を利用して発電するシステムであり,温海水と冷海水との温度差ができるだけ大きくなる条件が望まれます.具体的には15℃以上あることが発電の経済性を確保するために必要と言われており,赤道を挟んで南北緯30度あたりまでが海洋温度差発電に適した地域となります. ちなみに比較的良好な条件下でも熱効率は3〜5%程度となっており,大きな温度差が実現できる火力発電や原子力発電等と比較して見劣りしますが,発電のために化石燃料やウラン燃料等を用いる必要がありません. 「海洋温度差発電」プラント実証のための試験もできるだけ条件の有利な地域で行われています.その一例が「海洋温度差発電」研究のパイオニアである佐賀大学とインド政府が共同開発した海洋温度差発電(OTEC)実証プラントで,本年から稼働試験が開始されています.このプラントの発電能力は1000キロワット規模でOTECとしては世界最大級とのことです. この実証プラントは,佐賀大の技術支援を受けたインド国立海洋技術研究所が,インドの南端に近いトゥーティコリンの東約35キロの沖合に約7億円で建設したもので,取水管により深さ約1000mの海底から深層水をくみ上げる構造になっています. 「海洋温度差発電」の発電コストについてはインド側の試算例があり,1キロワット当たりの発電単価は21円20銭程度,将来10万キロワット規模のプラントが実用化されれば,火力発電より安い7円60銭程度になる,と報告されています.(出典:http://www.zakzak.co.jp/top/t-2003_04/3t2003041129.html) 当然のことながら,日本近海にも温度差発電に利用可能な潜在的エネルギーが豊富にありますが,当面は,大きな温度差の確保が実現できる国々で実績を得ることが優先課題と考えられます. また,大規模での利用となると経済性の確保以外にも,熱媒体となるアンモニア等の漏洩による環境汚染の防止や,熱利用に伴う海洋環境への影響も無視できなくなる可能性もあり,今後も様々な観点からの研究や技術開発が不可欠と思います. 一方,「海洋温度差発電」は取水した多量の海洋深層水を発電だけでなく,海水の淡水化による飲料水の生産,魚や貝,海藻などの養殖と生産,家やビルの冷房等の様々な用途に利用できます. 将来のエネルギー供給構造を大きく変革する可能性のある「燃料電池」用の「水素」を「海洋温度差発電」で製造することも可能となります.エネルギー供給は様々な方法を組み合わせることで,効率的な利用が実現できるように思います. 当面のエネルギー供給で既存エネルギー資源の役割はまだまだ大きいと考えますが,エネルギー資源の供給制約やエネルギー利用に伴う環境負荷の軽減の観点から,「再生可能エネルギー」への移行が期待されており,「海洋温度差発電」の今後の展開に注目したいと思います. 最後に,今回で2002年5月1日より34回にわたり考えてきました「エネルギー」をテーマとした取組みを終了させていただきます.なお,「エネルギー」の中でも最も賛否が分かれる「原子力」については,改めて考える機会を持たせていただくこととし,次回からは「環境」をテーマとして考えていきたいと思います.本メルマガを今後とも宜しくお願い申し上げます.
[文責:スリー・アール 菅井弘]
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