今回は,諸外国のエネルギー事情の最後ということで「エジプト」について考えたいと思います.まず,エジプトの基礎データは以下のとおりです.人口 6,398万人(2000年) (日本の55%)面積 100.15万km2 (日本の2.7倍)国民総所得 953億8,000万ドル (日本の2.1%)1人当たりの国民総所得 1,490ドル (日本の4.2%)輸入額 140億1,000万ドル(2000年) (日本の3.7%)輸出額 46億8,900万ドル(2000年) (日本の1.8%)二酸化炭素排出量 1.6t/人(1998年) (日本の17.8%)自動車台数 206万4,000台(1998年) (日本の2.9%)(出典:集英社,世界情報アトラス2003) エジプトは人口が日本の約半分で経済規模は日本の数%程度となっています.しかし,経済規模に比べて二酸化炭素排出量は大きく,エネルギーは比較的多く消費していると考えられます.参考データ1: 日本 中国 韓国 台湾 人口 1億1,628万人 12億6,583万人 4,614万人 2,239万人 面積 37.78万km2 960.78万km2 9.94万km2 3.62万km2国民総所得 4兆5191億ドル 1兆629億ドル 4,210億ドル 2,692億ドル 国民総所得/1人 3万5,620ドル 840ドル 8,910ドル 1万2,360ドル輸入額 3,795億ドル 2,251億ドル 1,605億ドル 1,400億ドル輸出額 4,792億ドル 2,493億ドル 1,723億ドル 1,484億ドル二酸化炭素排出量 9.0t/人 2.5t/人 7.9t/人 - 自動車台数 7,003万台 1,283万台 1,043万台 522万台参考データ2: アメリカ カナダ ドイツ フランス 人口 2億8,142万人 3,075万人 8,202万人 5,889万人面積 962.84万km2 997.61万km2 35.7万km2 55.12万km2国民総所得 9兆6,015億ドル 6,498億ドル 2兆637億ドル 1兆4,383億ドル国民総所得/1人 3万4,100ドル 2万1,130ドル 2万5,120ドル 2万4,090ドル輸入額 1兆2,576億ドル 2,448億ドル 5,028億ドル 3,054億ドル輸出額 7,811億ドル 2,766億ドル 5,515億ドル 2,981億ドル 二酸化炭素排出量 19.9t/人 15.3t/人 10.1t/人 6.3t/人自動車台数 2億1,549万台 1,701万台 4,474万台 3,249万台参考データ3: イギリス ロシア スウェーデン ブラジル人口 5,950万人 1億4,549万人 887万人 1億6,772万人面積 24.3万km2 1707.5万km2 45万km2 851.2万km2国民総所得 1兆4,595億ドル 2,410億ドル 2,407億ドル 6,100億5,800万ドル国民総所得/1人 2万4,430ドル 1,660ドル 2万7,140ドル 3,580ドル輸入額 3,370億ドル 455億ドル 728億ドル 585億3,200万ドル輸出額 2,841億ドル 1,052億ドル 869億ドル 550億8,600万ドル二酸化炭素排出量 9.2t/人 9.8t/人 5.5t/人 1.8t/人自動車台数 3,093万台 2,193万台 426万台 1,563万1,100台参考データ4: インド 人口 10億214万人 面積 328.72万km2 国民総所得 4,548億ドル 国民総所得/1人 450ドル 輸入額 504億5,500万ドル 輸出額 422億9,500万ドル 二酸化炭素排出量 1.1t/人 自動車台数 1,153万8,000台 エジプトは天然資源を有しており,石油や天然ガスの輸出は重要な国家収入になっていますが,埋蔵量は限られています.現時点でのエネルギーの90%近くは石油と天然ガスにより供給されています.エジプトを含む各国の一次エネルギー消費構成および自給率は以下のとおりです.------------------------------------------------------------------------------ エジプト インド ブラジ スウェ 露 英 仏 独 加 米 日 中 韓 ------------------------------------------------------------------------------石油 57.6 20.4 47.9 30 19.0 34.0 37.4 39.3 32.0 40.0 48.0 28.2 52.6石炭 1.5 32.9 7.4 4 17.8 18.0 4.3 25.2 10.5 24.8 20.0 61.4 23.3天然ガス 35.4 4.4 4.1 1 52.2 38.3 14.3 22.3 23.8 24.8 13.8 3.2 10.6原子力 - 0.9 0.9 31 4.8 9.1 37.0 11.5 6.3 8.2 14.1 0.5 13.0水力他 5.5 39.9 39.7 34 6.2 0.7 7.1 1.7 27.3 2.2 4.0 6.8 0.5------------------------------------------------------------------------------(出典:http://eneken.ieej.or.jp/data/old/pdf/0112_08.pdf(1999))(出典:BP統計(2001,2002))(出典:http://wwwsoc.nii.ac.jp/jseg/r_new/committee/daiei/takatama.htm)(出典:http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g30124b04j.pdf)各国のエネルギー自給率(単位:%,1999年) 原子力含む 原子力除くエジプト 124.1(2000年)インド 74(1999年)ブラジル 77.4(1998年) -スウェーデン 67.5 -ロシア 158 -日本 20 4イギリス 123 112 フランス 50 10 ドイツ 39 26カナダ 152 - アメリカ 75 65中国 95 95韓国 17 3(出典:http://eneken.ieej.or.jp/data/old/pdf/0112_08.pdf) 電力生産は水力発電への比率が高まっており,現在推進されている経済改革に伴い大型工場が建設されるなど工業分野でのエネルギー消費の急増で電力需要は毎年8%増にもなるとの予想もあり,電力も含めたエネルギー需要は今後急速に伸びると予想されています.----------------------------------電力源 1980年 1998年----------------------------------水力 51.8% 19.4%石油 27.7% 30.2%天然ガス 20.5% 50.4%----------------------------------(出典:http://www.eic.or.jp/jfge/report/34/pdf/06-08.pdf)以上,エジプトのエネルギー事情をまとめると以下のようになります.(1)一次エネルギー供給の95%は石炭,石油,天然ガスに依存(2)特に石油への依存率は約60%と高い(3)エネルギー自給率は124%と高い(4)電力供給の半分は水力で残りは石油と天然ガス(5)原子力は利用していない(6)水力以外の再生可能エネルギー利用率は現時点では小さい 新エネルギー開発機構(NEDO)の報告によると,エジプトは1970年代はエネルギー問題に関し,各機関が独自に取り組み,再生エネルギー高等委員会が取りまとめていた,とのことです.しかし,1986年に専門推進機関として,電力エネルギー省傘下に新・再生エネルギー庁(New and Renewable Energy Authority(NREA)が設立され,石油に替わるクリーンなエネルギー源への転換に取組んでいることが紹介されています.ちなみに財源は主に米国,デンマーク,ドイツ,イタリア等からの支援が中心となっています.(出典:http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/foreigninfo/01-4/P052-P078.pdf) 今回のエジプトで本年3月より考えてきました諸外国のエネルギー事情に関するテーマは完了となります.エネルギー問題については,一旦,区切りをつけ,今後,環境問題について考えていく予定です.なお,環境問題に関して考える前に,読者からいただいたご要望等を踏まえ,次回はこれまでとりあげていませんでした「海洋温度差発電」について考えてみたいと思います. |