今回は,「インド」のエネルギー事情について考えたいと思います.まず,インドの基礎データは以下のとおりです.人口 10億214万人(2000年) (日本の8.6倍)面積 328.72万km2 (日本の8.8倍)国民総所得 4,548億ドル (日本の10%)1人当たりの国民総所得 450ドル (日本の1.3%)輸入額 504億5,500万ドル(2000年) (日本の13.3%)輸出額 422億9,500万ドル(2000年) (日本の8.8%)二酸化炭素排出量 1.1tU/人(1998年) (日本の12%)自動車台数 1,153万8,000台(1997年) (日本の16.5%)(出典:集英社,世界情報アトラス2003)参考データ1: 日本 中国 韓国 台湾 人口 1億1,628万人 12億6,583万人 4,614万人 2,239万人 面積 37.78万km2 960.78万km2 9.94万km2 3.62万km2国民総所得 4兆5191億ドル 1兆629億ドル 4,210億ドル 2,692億ドル 国民総所得/1人 3万5,620ドル 840ドル 8,910ドル 1万2,360ドル輸入額 3,795億ドル 2,251億ドル 1,605億ドル 1,400億ドル輸出額 4,792億ドル 2,493億ドル 1,723億ドル 1,484億ドル二酸化炭素排出量 9.0t/人 2.5t/人 7.9t/人 - 自動車台数 7,003万台 1,283万台 1,043万台 522万台参考データ2: アメリカ カナダ ドイツ フランス 人口 2億8,142万人 3,075万人 8,202万人 5,889万人面積 962.84万km2 997.61万km2 35.7万km2 55.12万km2国民総所得 9兆6,015億ドル 6,498億ドル 2兆637億ドル 1兆4,383億ドル国民総所得/1人 3万4,100ドル 2万1,130ドル 2万5,120ドル 2万4,090ドル輸入額 1兆2,576億ドル 2,448億ドル 5,028億ドル 3,054億ドル輸出額 7,811億ドル 2,766億ドル 5,515億ドル 2,981億ドル 二酸化炭素排出量 19.9t/人 15.3t/人 10.1t/人 6.3t/人自動車台数 2億1,549万台 1,701万台 4,474万台 3,249万台参考データ3: イギリス ロシア スウェーデン ブラジル人口 5,950万人 1億4,549万人 887万人 1億6,772万人面積 24.3万km2 1707.5万km2 45万km2 851.2万km2国民総所得 1兆4,595億ドル 2,410億ドル 2,407億ドル 6,100億万ドル国民総所得/1人 2万4,430ドル 1,660ドル 2万7,140ドル 3,580ドル輸入額 3,370億ドル 455億ドル 728億ドル 585億ドル輸出額 2,841億ドル 1,052億ドル 869億ドル 550億ドル二酸化炭素排出量 9.2t/人 9.8t/人 5.5t/人 1.8t/人自動車台数 3,093万台 2,193万台 426万台 1,563万台 インドに関しては人口が中国に次ぐ規模であり,数学が得意でコンピュータソフトの分野に強い,というくらいのイメージしかありません.したがって,基礎データの中で中国と比べて国民一人当りの所得が半分程度で,貿易規模も1/5から1/4程度であることは初めて知りました.インドを含む各国の一次エネルギー消費構成は以下のとおりです. インド ブラジル スウェーデン 露 英 仏 独 加 米 日 中 韓 石油 33.3 25 30 19.0 34.0 37.4 39.3 32.0 40.0 48.0 28.2 52.6石炭 55.7 - 4 17.8 18.0 4.3 25.2 10.5 24.8 20.0 61.4 23.3天然ガス 7.4 - 1 52.2 38.3 14.3 22.3 23.8 24.8 13.8 3.2 10.6原子力 1.2 - 31 4.8 9.1 37.0 11.5 6.3 8.2 14.1 0.5 13.0水力他 2.4 67 34 6.2 0.7 7.1 1.7 27.3 2.2 4.0 6.8 0.5(出典:http://eneken.ieej.or.jp/data/old/pdf/0112_08.pdf(1999))(出典:BP統計(2001,2002))(出典:http://wwwsoc.nii.ac.jp/jseg/r_new/committee/daiei/takatama.htm)各国のエネルギー自給率(単位:%,1999年) 原子力含む 原子力除くインド 74(1999年)ブラジル 77.4(1998年) -スウェーデン 67.5 -ロシア 158 -日本 20 4イギリス 123 112 フランス 50 10 ドイツ 39 26カナダ 152 - アメリカ 75 65中国 95 95韓国 17 3(出典:http://eneken.ieej.or.jp/data/old/pdf/0112_08.pdf)インドの発電電力構成(2000年) インド ブラジル スウェーデン 露 英 仏 独 日本石油 1.1 (火力) 1.9 4.8 1.5 1.4 0.8 14.7石炭 75.3 3.6 2.1 19.1 33.4 5.8 52.7 23.5天然ガス 5.6 0.3 42.4 39.4 2.1 9.3 22.1原子力 1.6 1.0 47.2 14.4 22.9 77.5 29.9 29.8水力他 13.1 89.1 48.6 19.2 2.8 13.2 7.3 9.9(出典:http://eneken.ieej.or.jp/data/old/pdf/0112_08.pdf)(出典:OECD/IEA,http://www.jepic.or.jp/overseas/data/index03.html)(http://www.jnc.go.jp/park/front/jnc_data/data/swe_index.htm#primary_energy) インドでは新エネルギーとしてバイオガス,太陽光,風力,小規模水力発電プロジェクト,バイオマス等の利用に取組んでいます.1999年12月31日時点で発電容量の7%(約1,063メガワット)がこれらの新エネルギーによるものと報告されています.(出典:http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/foreigninfo/01-4/P021-P041.pdf) 以上,インドのエネルギー事情をまとめると以下のようになります.(1)一次エネルギー供給の95%以上は石炭,石油,天然ガスに依存(2)特に石炭への依存率は55%以上と高く,中国に似た供給構造(3)エネルギー自給率は74%で,石油等は主に中東諸国から輸入(4)電力供給の75%は石炭に依存(5)原子力も比率は小さいが利用(6)水力以外の再生可能エネルギー利用率は現時点では小さい ところで,インドは遠く離れた国と考えがちですが,インドのエネルギー政策は日本へ大きな影響を与える可能性があります.ERINA(環日本海経済研究所)のウラジミル・イワノフ氏(出典:新潟日報2001年4月23日付)によると,インドは石油・石油製品の3分の2を輸入しており,その多くはペルシア湾諸国からのものとなっています. インドの石油輸入は10年後に現在の3倍の1日400万バレル規模にまで拡大すると,現在,日本が輸入する石油量の約3分の1に匹敵する規模となる可能性があります.このため,中国の石油需要に加え,インドの中東諸国への石油依存の拡大は,石油市場にさらなる圧力をかける可能性があり,日本の中東諸国からの石油輸入にも大きな影響を与えかねない,と指摘しています. 石油という限られたエネルギー資源に対する世界規模での争奪戦は,ますます厳しくなる可能性があることを常に考慮しておく必要があると感じています. |