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No. 047 update 2003.07.16 PDF版(19.6 kbyte)

エネルギー(第31回)

スウェーデン

 今回は,「スウェーデン」のエネルギー事情について考えたいと思います.

まず,スウェーデンの基礎データは以下のとおりです.

人口             887万人(2000年)         (日本の7.6%)
面積             45万km2          (日本の1.2倍)
国民総所得        2,407億ドル       (日本の5.3%)
1人当たりの国民総生産   2万7,140ドル          (日本の76%)
輸入額                 728億ドル(2000年)     (日本の19%)
輸出額                  869億ドル(2000年)    (日本の18%)
二酸化炭素排出量    5.5tU/人(1998年)     (日本の61%)
自動車台数             426万台(1998年)     (日本の6.1%)

(出典:集英社,世界情報アトラス2003)


参考データ1:    日本      中国           韓国      台湾      

人口        1億1,628万人  12億6,583万人  4,614万人    2,239万人 
面積        37.78万km2     960.78万km2    9.94万km2    3.62万km2
国民総所得     4兆5191億ドル  1兆629億ドル   4,210億ドル   2,692億ドル 
国民総所得/1人    3万5,620ドル   840ドル        8,910ドル    1万2,360ドル
輸入額            3,795億ドル    2,251億ドル    1,605億ドル   1,400億ドル
輸出額             4,792億ドル    2,493億ドル    1,723億ドル   1,484億ドル
二酸化炭素排出量  9.0t/人        2.5t/人        7.9t/人     - 
自動車台数        7,003万台      1,283万台    1,043万台     522万台

参考データ2:   アメリカ    カナダ     ドイツ     フランス 

人口        2億8,142万人  3,075万人   8,202万人   5,889万人
面積        962.84万km2  997.61万km2  35.7万km2   55.12万km2
国民総所得     9兆6,015億ドル 6,498億ドル  2兆637億ドル  1兆4,383億ドル
国民総所得/1人    3万4,100ドル   2万1,130ドル  2万5,120ドル  2万4,090ドル
輸入額            1兆2,576億ドル 2,448億ドル    5,028億ドル   3,054億ドル
輸出額             7,811億ドル    2,766億ドル    5,515億ドル   2,981億ドル    
二酸化炭素排出量  19.9t/人       15.3t/人       10.1t/人      6.3t/人
自動車台数        2億1,549万台   1,701万台      4,474万台     3,249万台

参考データ3:   イギリス    ロシア

人口        5,950万人   1億4,549万人
面積        24.3万km2   1707.5万km2
国民総所得     1兆4,595億ドル 2,410億ドル
国民総所得/1人    2万4,430ドル   1,660ドル
輸入額            3,370億ドル    455億ドル
輸出額             2,841億ドル    1,052億ドル    
二酸化炭素排出量  9.2t/人        9.8t/人
自動車台数        3,093万台      2,193万台


 スウェーデンは人口が887万人と小さい国ですが,輸出入額は人口と比較して格段に大きく,さらに一人当りの国民総所得もドイツ,フランス,イギリスよりも大きな値なっています.スウェーデンというと高度な福祉国家というイメージが強いのですが,これも貿易国としての社会基盤があればこそなのかもしれません.


スウェーデンを含む各国の一次エネルギー消費構成(2001年)は以下のとおりです.

      スウェーデン 露  英   仏   独   加   米   日    中    韓  

石油    30       19.0 34.0  37.4  39.3  32.0 40.0  48.0  28.2  52.6  
石炭   4            17.8  18.0 4.3  25.2 10.5 24.8  20.0  61.4  23.3
天然ガス  1            52.2  38.3 14.3 22.3  23.8 24.8  13.8  3.2   10.6
原子力  31           4.8   9.1  37.0 11.5  6.3  8.2   14.1  0.5   13.0
水力他  34          6.2   0.7  7.1  1.7   27.3  2.2   4.0   6.8   0.5

(出典:BP統計(2001,2002))


 スウェーデンのエネルギー資源としては石油,原子力,水力他が3本柱となっています.水力他はいわゆる再生可能エネルギーで,特にバイオマスの利用が中心となっており,バイオマスの一次エネルギー供給に占める割合は20%前後に達しています.

 スウェーデンは森林資源が豊富な国で,燃料に用いられるバイオマス燃料は,森林を伐採した後に残される樹木の枝や製材に使われない端材などです.また,バイオマスエネルギーは化石燃料に対する炭素税や硫黄税,窒素酸化物税等の環境税を免除されるという税制面での優遇もあり,経済的にも魅力的なものとなっています.


各国のエネルギー自給率(単位:%,1999年)

       原子力含む  原子力除く

スウェーデン 67.5     -

ロシア        158           -
日本     20      4
イギリス   123      112 
フランス   50      10     
ドイツ    39      26
カナダ    152      - 
アメリカ   75      65
中国     95      95
韓国     17      3


スウェーデンの発電電力構成(2000年)

     スウェーデン ロシア  イギリス  フランス  ドイツ  日本

石油   1.9      4.8    1.5    1.4    0.8    14.7
石炭   2.1      19.1   33.4    5.8    52.7   23.5
天然ガス 0.3      42.4   39.4    2.1     9.3    22.1
原子力    47.2     14.4   22.9    77.5    29.9   29.8
水力他  48.6     19.2   2.8     13.2    7.3    9.9
   
(出典:OECD/IEA,http://www.jepic.or.jp/overseas/data/index03.html,
http://www.jnc.go.jp/park/front/jnc_data/data/swe_index.htm#primary_energy)

 以上,スウェーデンのエネルギー事情をまとめると以下のようになります.

(1)国内に化石燃料資源はほとんど存在しない
(2)一次エネルギー供給は石油,原子力,再生可能エネルギーが主力
(3)再生可能エネルギーとしてはバイオマスエネルギーが中心
(4)電力生産は原子力と再生可能エネルギーが主力
(5)原子力発電所の閉鎖は再生可能エネルギー等の進展で判断


 スウェーデンでは1980年の国民投票の結果を受けて,国会は2010年までに12基の原子力発電所を全て閉鎖することを決定しました.この決定を受けて1999年にバーセベック1号機が閉鎖されましたが,2001年に閉鎖する予定となっていたバーセベック2号機については,閉鎖による電力損失を国内の新規再生可能エネルギー電源や電力消費の削減によって補填できる見込みがないとの理由により延期されました.  

 このようなエネルギーを取り巻く状況変化を踏まえ,2002年6月に政府の新エネルギー政策案が議会で承認されました.新エネルギー政策では,2001年現在,約60億kWhの再生可能エネルギーによる発電を2002年から2010年までに100億kWhまで拡大すること,その中でも特に風力発電の電力量は2015年までに100億kWhまで拡大することが目標となりました.

 原子力発電に関しては,バーセベック2号機の閉鎖は2003年には可能と判定されましたが具体的な手続きは規定されませんでした.同様に他の10基の発電所の停止も可能性を検討することを述べるにとどめ,具体的な対応は将来の課題として残されました.


 日本ではスウェーデンのエネルギー政策に関する情報は,部分的な側面が強調される傾向があります.しかし,現実のスウェーデンの政策は,自ら答えを見つけるよう試行錯誤を行っている途上にあることが理解できます.決してエネルギー問題に対する模範解答を見出したということではありません.本来,日本が参考とすべきは,スウェーデンを含む諸外国の「政策そのもの」ではなく,より良い回答を得るための試行錯誤を厭わない「姿勢」や「過程」のように思います.

[文責:スリー・アール 菅井弘]

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