今回は,「ロシア」のエネルギー事情について考えたいと思います.考えてみますとロシアのことはほとんど何も知らないことに我ながら驚いています.まず,ロシアの基礎データは以下のとおりです.人口 1億4,549万人(2000年) (日本の1.25倍)面積 1707.5万km2 (日本の45倍)国民総所得 2,410億ドル (日本の約5.3%)1人当たりの国民総所得 1,660ドル(2000年) (日本の約4.6%)輸入額 455億ドル(2000年) (日本の約12%)輸出額 1,052億ドル(2000年) (日本の約22%)二酸化炭素排出量 9.8t/人(1998年) (日本の1.09倍)自動車台数 2,193万台(1998年) (日本の約31%)(出典:集英社,世界情報アトラス2003)参考データ1: 日本 中国 韓国 台湾 人口 1億1,628万人 12億6,583万人 4,614万人 2,239万人 面積 37.78万km2 960.78万km2 9.94万km2 3.62万km2国民総所得 4兆5191億ドル 1兆629億ドル 4,210億ドル 2,692億ドル 国民総所得/1人 3万5,620ドル 840ドル 8,910ドル 1万2,360ドル輸入額 3,795億ドル 2,251億ドル 1,605億ドル 1,400億ドル輸出額 4,792億ドル 2,493億ドル 1,723億ドル 1,484億ドル二酸化炭素排出量 9.0t/人 2.5t/人 7.9t/人 - 自動車台数 7,003万台 1,283万台 1,043万台 522万台参考データ2: アメリカ カナダ ドイツ フランス 人口 2億8,142万人 3,075万人 8,202万人 5,889万人面積 962.84万km2 997.61万km2 35.7万km2 55.12万km2国民総所得 9兆6,015億ドル 6,498億ドル 2兆637億ドル 1兆4,383億ドル国民総所得/1人 3万4,100ドル 2万1,130ドル 2万5,120ドル 2万4,090ドル輸入額 1兆2,576億ドル 2,448億ドル 5,028億ドル 3,054億ドル輸出額 7,811億ドル 2,766億ドル 5,515億ドル 2,981億ドル 二酸化炭素排出量 19.9t/人 15.3t/人 10.1t/人 6.3t/人自動車台数 2億1,549万台 1,701万台 4,474万台 3,249万台参考データ3: イギリス 人口 5,950万人面積 24.3万km2国民総所得 1兆4,595億ドル国民総所得/1人 2万4,430ドル輸入額 3,370億ドル輸出額 2,841億ドル 二酸化炭素排出量 9.2t/人自動車台数 3,093万台 基本データを整理して改めて驚きました.人口は日本よりも多いにもかかわらず国民総所得は日本の約1/20と低く,一人当たりでは中国の約2倍ですが,先進諸国とは1桁近く少ないというデータはある意味で予想外のものでした.旧ソ連時代にいかに軍事産業偏重であったかがわかります.ロシアを含む各国の一次エネルギー消費構成(2001年)は以下のとおりです. ロシア 英 仏 独 加 米 日 中 韓 石油 19.0 34.0 37.4 39.3 32.0 40.0 48.0 28.2 52.6 石炭 17.8 18.0 4.3 25.2 10.5 24.8 20.0 61.4 23.3天然ガス 52.2 38.3 14.3 22.3 23.8 24.8 13.8 3.2 10.6原子力 4.8 9.1 37.0 11.5 6.3 8.2 14.1 0.5 13.0水力 6.2 0.7 7.1 1.7 27.3 2.2 4.0 6.8 0.5(出典:BP統計(2002)) ロシアのエネルギー資源としては天然ガスが極めて重要な役割を果たしています.埋蔵量・生産量は世界でもトップクラスで,国内で使われるだけでなく,パイプラインによってヨーロッパ方面に輸出されています.また,ロシアの原油もドイツ,イタリア,フランス,スペイン等のヨーロッパ諸国に輸出されています.各国のエネルギー自給率(単位:%,1999年) 原子力含む 原子力除くロシア 158 -日本 20 4イギリス 123 112 フランス 50 10 ドイツ 39 26カナダ 152 - アメリカ 75 65中国 95 95韓国 17 3 ロシアの電力の半分近くは天然ガスによるものです.しかし,天然ガスはロシア経済を支える貴重な輸出品であるため,国内消費を抑制する必要に迫られています.そこで,ロシア政府は2000年5月,天然ガス依存から原子力重視へ路線を転換する方針を発表しました.現在,世界第4位の原子力発電国で,2001年に運転を始めたボルゴドンスク原子力発電所1号機を含めて,30基2260万kWの発電設備を有しています.ロシア等の発電電力構成(2000年) ロシア イギリス フランス ドイツ 日本石油 4.8 1.5 1.4 0.8 14.7石炭 19.1 33.4 5.8 52.7 23.5天然ガス 42.4 39.4 2.1 9.3 22.1原子力 14.4 22.9 77.5 29.9 29.8水力他 19.2 2.8 13.2 7.3 9.9 (出典:OECD/IEA,http://www.jepic.or.jp/overseas/data/index03.html) 以上,ロシアのエネルギー事情をまとめると以下のようになります.(1)国内には豊富な天然ガスと石油資源を有する(2)エネルギー純輸出国で,特にヨーロッパ諸国に天然ガスと石油を輸出している(3)電力生産の中心は天然ガスであるが,原子力への重視に転換されつつある(4)エネルギー消費効率の向上とエネルギーの節約に取組んでいる(5)アジア地域へのエネルギー輸出の拡大を目指している ロシアは対外債務返済のための外貨獲得の手段としてエネルギー資源の輸出を継続することが基本政策となっています.なお,これまでの輸出先はほとんどが西欧諸国になっていますが,今後,中国,韓国,日本向けの輸出拡大を念頭にパイプラインなどのインフラ整備にも関心が持たれています. 歴史的な経緯もあり,日本にとってロシアは近くて遠い国という印象があります.しかし,米ロがイラク戦争での利害の対立を抱えていながらも,アメリカがロシアの天然資源に魅力を感じて連携を模索しているように,日本にとっても隣国の一つであるロシアに対して長期的な視点からのアプローチが不可欠な状況となっているように思います. |