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No.003:将来の社会像(第2回)

将来の社会像(第2回)

No. 046 update 2003.07.01 PDF版(18.4 kbyte)

エネルギー(第30回)

ロシア

 今回は,「ロシア」のエネルギー事情について考えたいと思います.考えてみますとロシアのことはほとんど何も知らないことに我ながら驚いています.

まず,ロシアの基礎データは以下のとおりです.

人口             1億4,549万人(2000年)       (日本の1.25倍)
面積             1707.5万km2         (日本の45倍)
国民総所得        2,410億ドル         (日本の約5.3%)
1人当たりの国民総所得   1,660ドル(2000年)        (日本の約4.6%)
輸入額                 455億ドル(2000年)        (日本の約12%)
輸出額                  1,052億ドル(2000年)    (日本の約22%)
二酸化炭素排出量    9.8t/人(1998年)         (日本の1.09倍)
自動車台数             2,193万台(1998年)     (日本の約31%)

(出典:集英社,世界情報アトラス2003)


参考データ1:    日本      中国           韓国      台湾      

人口        1億1,628万人  12億6,583万人  4,614万人    2,239万人 
面積        37.78万km2     960.78万km2    9.94万km2    3.62万km2
国民総所得     4兆5191億ドル  1兆629億ドル   4,210億ドル   2,692億ドル 
国民総所得/1人    3万5,620ドル   840ドル        8,910ドル    1万2,360ドル
輸入額            3,795億ドル    2,251億ドル    1,605億ドル   1,400億ドル
輸出額             4,792億ドル    2,493億ドル    1,723億ドル   1,484億ドル
二酸化炭素排出量  9.0t/人        2.5t/人        7.9t/人     - 
自動車台数        7,003万台      1,283万台    1,043万台     522万台

参考データ2:   アメリカ    カナダ     ドイツ     フランス 

人口        2億8,142万人  3,075万人   8,202万人   5,889万人
面積        962.84万km2  997.61万km2  35.7万km2   55.12万km2
国民総所得     9兆6,015億ドル 6,498億ドル  2兆637億ドル  1兆4,383億ドル
国民総所得/1人    3万4,100ドル   2万1,130ドル  2万5,120ドル  2万4,090ドル
輸入額            1兆2,576億ドル 2,448億ドル    5,028億ドル   3,054億ドル
輸出額             7,811億ドル    2,766億ドル    5,515億ドル   2,981億ドル    
二酸化炭素排出量  19.9t/人       15.3t/人       10.1t/人      6.3t/人
自動車台数        2億1,549万台   1,701万台      4,474万台     3,249万台

参考データ3:   イギリス 

人口        5,950万人
面積        24.3万km2
国民総所得     1兆4,595億ドル
国民総所得/1人    2万4,430ドル
輸入額            3,370億ドル
輸出額             2,841億ドル    
二酸化炭素排出量  9.2t/人
自動車台数        3,093万台


 基本データを整理して改めて驚きました.人口は日本よりも多いにもかかわらず国民総所得は日本の約1/20と低く,一人当たりでは中国の約2倍ですが,先進諸国とは1桁近く少ないというデータはある意味で予想外のものでした.旧ソ連時代にいかに軍事産業偏重であったかがわかります.


ロシアを含む各国の一次エネルギー消費構成(2001年)は以下のとおりです.

      ロシア  英   仏   独   加    米   日     中     韓  

石油    19.0    34.0  37.4  39.3   32.0  40.0  48.0   28.2   52.6  
石炭   17.8     18.0  4.3   25.2  10.5  24.8   20.0   61.4   23.3
天然ガス  52.2     38.3  14.3  22.3   23.8  24.8   13.8   3.2    10.6
原子力  4.8      9.1   37.0  11.5   6.3  8.2    14.1   0.5    13.0
水力   6.2      0.7   7.1   1.7    27.3  2.2    4.0    6.8    0.5

(出典:BP統計(2002))


 ロシアのエネルギー資源としては天然ガスが極めて重要な役割を果たしています.埋蔵量・生産量は世界でもトップクラスで,国内で使われるだけでなく,パイプラインによってヨーロッパ方面に輸出されています.また,ロシアの原油もドイツ,イタリア,フランス,スペイン等のヨーロッパ諸国に輸出されています.


各国のエネルギー自給率(単位:%,1999年)

       原子力含む  原子力除く

ロシア        158           -

日本     20      4
イギリス   123      112 
フランス   50      10     
ドイツ    39      26
カナダ    152      - 
アメリカ   75      65
中国     95      95
韓国     17      3


 ロシアの電力の半分近くは天然ガスによるものです.しかし,天然ガスはロシア経済を支える貴重な輸出品であるため,国内消費を抑制する必要に迫られています.そこで,ロシア政府は2000年5月,天然ガス依存から原子力重視へ路線を転換する方針を発表しました.現在,世界第4位の原子力発電国で,2001年に運転を始めたボルゴドンスク原子力発電所1号機を含めて,30基2260万kWの発電設備を有しています.


ロシア等の発電電力構成(2000年)

      ロシア  イギリス  フランス  ドイツ  日本

石油    4.8    1.5    1.4    0.8    14.7
石炭     19.1   33.4    5.8    52.7   23.5
天然ガス   42.4   39.4    2.1     9.3    22.1
原子力     14.4   22.9    77.5    29.9   29.8
水力他   19.2   2.8     13.2    7.3    9.9
   
(出典:OECD/IEA,http://www.jepic.or.jp/overseas/data/index03.html)


 以上,ロシアのエネルギー事情をまとめると以下のようになります.

(1)国内には豊富な天然ガスと石油資源を有する
(2)エネルギー純輸出国で,特にヨーロッパ諸国に天然ガスと石油を輸出している
(3)電力生産の中心は天然ガスであるが,原子力への重視に転換されつつある
(4)エネルギー消費効率の向上とエネルギーの節約に取組んでいる
(5)アジア地域へのエネルギー輸出の拡大を目指している 

 ロシアは対外債務返済のための外貨獲得の手段としてエネルギー資源の輸出を継続することが基本政策となっています.なお,これまでの輸出先はほとんどが西欧諸国になっていますが,今後,中国,韓国,日本向けの輸出拡大を念頭にパイプラインなどのインフラ整備にも関心が持たれています.

 歴史的な経緯もあり,日本にとってロシアは近くて遠い国という印象があります.しかし,米ロがイラク戦争での利害の対立を抱えていながらも,アメリカがロシアの天然資源に魅力を感じて連携を模索しているように,日本にとっても隣国の一つであるロシアに対して長期的な視点からのアプローチが不可欠な状況となっているように思います.

[文責:スリー・アール 菅井弘]

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