No.102:風力発電(第2回)

風力発電(その2)

No.101:風力発電(第1回)

風力発電(その1)

No.100:年始のご挨拶(2006年)

「年始にあたって」

No.099:水素エネルギー・燃料電池(その4)

燃料電池

No.098:水素エネルギー・燃料電池(その3)

水素の製造

No.097:水素エネルギー・燃料電池(その2)

水素エネルギーの位置づけ

No.096:水素エネルギー・燃料電池(その1)

水素生産および需要の現状

No.095:バイオマス(第7回)

バイオマス利活用例(3)

No.094:バイオマス(第6回)

バイオマス利活用例(2)

No.093:バイオマス(第5回)

バイオマス利活用例(1)

No. 045 update 2003.06.25 PDF版(19.6 kbyte)

エネルギー(第29回)

イギリス

 今回は,「イギリス」のエネルギー事情について考えたいと思います.

まず,イギリスの基礎データは以下のとおりです.

人口             5,950万人(2000年)        (日本の約51%)
面積             24.3万km2          (日本の約64%)
国民総所得        1兆4,595億ドル       (日本の約32%)
1人当たりの国民総所得   2万4,430ドル(2000年)     (日本の約69%)
輸入額                 3,370億ドル(2000年)      (日本の約80%)
輸出額                  2,841億ドル(2000年)    (日本の約59%)
二酸化炭素排出量    9.2t/人(1998年)         (日本とほぼ同等)
自動車台数             3,093万台(1998年)     (日本の約44%)

(出典:集英社,世界情報アトラス2003)


参考データ1:    日本      中国           韓国      台湾      

人口        1億1,628万人  12億6,583万人  4,614万人    2,239万人 
面積        37.78万km2     960.78万km2    9.94万km2    3.62万km2
国民総所得     4兆5191億ドル  1兆629億ドル   4,210億ドル   2,692億ドル 
国民総所得/1人    3万5,620ドル   840ドル        8,910ドル    1万2,360ドル
輸入額            3,795億ドル    2,251億ドル    1,605億ドル   1,400億ドル
輸出額             4,792億ドル    2,493億ドル    1,723億ドル   1,484億ドル
二酸化炭素排出量  9.0t/人        2.5t/人        7.9t/人     - 
自動車台数        7,003万台      1,283万台    1,043万台     522万台

参考データ2:   アメリカ    カナダ     ドイツ     フランス 

人口        2億8,142万人  3,075万人   8,202万人   5,889万人
面積        962.84万km2  997.61万km2  35.7万km2   55.12万km2
国民総所得     9兆6,015億ドル 6,498億ドル  2兆637億ドル  1兆4,383億ドル
国民総所得/1人    3万4,100ドル   2万1,130ドル  2万5,120ドル  2万4,090ドル
輸入額            1兆2,576億ドル 2,448億ドル    5,028億ドル   3,054億ドル
輸出額             7,811億ドル    2,766億ドル    5,515億ドル   2,981億ドル    
二酸化炭素排出量  19.9t/人       15.3t/人       10.1t/人      6.3t/人
自動車台数        2億1,549万台   1,701万台      4,474万台     3,249万台


イギリスを含む各国の一次エネルギー消費構成(2001年)は以下のとおりです.


      イギリス  仏   独   加    米   日     中     韓  

石油    34.0    37.4  39.3   32.0  40.0  48.0   28.2   52.6  
石炭    18.0    4.3   25.2  10.5  24.8   20.0   61.4   23.3
天然ガス   38.3    14.3  22.3   23.8  24.8   13.8   3.2    10.6
原子力   9.1     37.0  11.5   6.3  8.2    14.1   0.5    13.0
水力    0.7     7.1   1.7    27.3  2.2    4.0    6.8    0.5

(出典:BP統計(2002))


 イギリスは,1975年頃まで全エネルギーの約40%以上を海外から輸入していましたが,北海油田の発見・開発により現在はエネルギー輸出国になっています.しかし,北海油田の英国側における石油生産量は1999年の290万バレル/日をピークに減少しており,2001年の生産量は250万バレル/日となっています.確認可採埋蔵量も2000年末で50億バレル,2001年末が49億バレルと減少し始めています.これは可採年数として5.6年に相当します.同様に天然ガスの可採埋蔵量は7,300億m3,可採年数で6.9年とやはり豊富な資源とは言えない状況にあります.


各国のエネルギー自給率(単位:%,1999年)

       原子力含む  原子力除く

イギリス   123      112 
日本     20      4
フランス   50      10     
ドイツ    39      26
カナダ    152      - 
アメリカ   75      65
中国     95      95
韓国     17      3


イギリス,フランス,ドイツと日本の石油依存度(1999年)

        イギリス  フランス  ドイツ  日本 

石油依存度   35(%)   38       40    52
輸入依存度   △55(%)   98       97    100
中東依存度   4(%)    41      7     85

(出典:IEA統計)


 北海油田の石油や天然ガスを利用することで高いエネルギー自給率を維持することが可能でした.しかし,北海油田の資源としての有限性は明らかであり,新たなエネルギー資源の確保が求められています.

 また,95%以上の電力は天然ガス,石炭,原子力の3つのエネルギー源で賄われています.しかし,天然ガスの国内資源としての限界から,将来の電源用資源の確保は大きな課題となっています.


イギリス,フランス,ドイツと日本の発電電力構成(2000年)

      イギリス   フランス  ドイツ  日本

石油    1.5(%)    1.4      0.8    14.7
石炭     33.4(%)   5.8      52.7   23.5
天然ガス   39.4(%)   2.1       9.3    22.1
原子力     22.9(%)   77.5      29.9   29.8
水力他   2.8(%)    13.2      7.3    9.9
   
(出典:OECD/IEA,http://www.jepic.or.jp/overseas/data/index03.html)


 ところで,電気事業は発・送・配電を分離し,小口の供給事業者の参入を促す構造になっています.2001年現在,29社の小売供給事業者があり,全面自由化により激しい価格競争が行われています.このような競争激化により民間原子力発電会社British Energy(BE)は経営危機に陥り,政府の資金援助でかろうじて事業を継続しています.


 以上,イギリスのエネルギー事情をまとめると以下のようになります.

(1)国内の北海油田があり石油,石炭はほぼ自給されている
(2)エネルギー純輸出国で,2000年の純輸出量は石油換算で約4,300万トンである
(3)北海油田の石油,天然ガス資源の可採年数は10年未満である
(4)電力生産は石炭,天然ガス,原子力が3本柱である
(5)原子力利用に関係なくエネルギー自給率は100%以上である


 貿易産業省は,2003年2月のエネルギー白書で,再生可能エネルギーとエネルギーの効率改善を柱としたエネルギー政策の長期展望を提示しました.具体的には2050年までに,CO2排出量を60%削減すること,2020年の再生可能エネルギーの電力比率を20%まで拡大すること,再生可能エネルギーへの投資を拡大すること,クリーンエネルギーへのシフトを促す炭素取引システムを構築すること等が目標となっています.

 原子力について,経済性及び放射性廃棄物の観点から新設を見送られていますが,将来的な利用については態度を留保するような内容となっています.これは,北海油田に代わる新たな国内資源を見出すことの難しさから,一種の保険として原子力を選択肢として残しておくことが得策と判断したのかもしれません.

 最後に,イギリスのエネルギー事情を理解する上で,英系石油メジャーの存在は重要です.日本にも馴染みのあるBP(英国石油)やロイヤル・ダッチ・シェルなどです.いわゆるメジャーはイギリス,アメリカ,フランス系のいずれかであり,国家のエネルギー戦略上,重要な機能を果たしています.

 メジャーは原油の探鉱,開発,生産から輸送,精製,販売までを手がけ,石油支配権を有する組織ですが,日系やドイツ系の石油メジャーはありません.今後,日本資本のいわゆる民族系からさらに進んだ日系メジャーへの展開は国家戦略として考える時期にきているように感じています.しかし,中東依存度の高い日本はOPEC依存の道しか残されていないのかもしれません.

[文責:スリー・アール 菅井弘]

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