今回は,「フランス」のエネルギー事情について考えたいと思います.まず,フランスの基礎データは以下のとおりです.人口 5,889(2000年) (日本の約51%)面積 55.12万km2 (日本の1.46倍)国民総所得 1兆4,383億ドル (日本の約32%)1人当たりの国民総所得 2万4,090ドル(2000年) (日本の約68%)輸入額 3,054億ドル(2000年) (日本の約80%)輸出額 2,981億ドル(2000年) (日本の約62%)二酸化炭素排出量 6.3t/人(1998年) (日本の約70%)自動車台数 3,249万台(1998年) (日本の約46%)(出典:集英社,世界情報アトラス2003)参考データ1: 日本 中国 韓国 台湾 人口 1億1,628万人 12億6,583万人 4,614万人 2.239万人 面積 37.78万km2 960.78万km2 9.94万km2 3.62万km2国民総所得 4兆5191億ドル 1兆629億ドル 4,210億ドル 2,692億ドル 国民総所得/1人 3万5,620ドル 840ドル 8,910ドル 1万2,360ドル輸入額 3,795億ドル 2,251億ドル 1,605億ドル 1,400億ドル輸出額 4,792億ドル 2,493億ドル 1,723億ドル 1,484億ドル二酸化炭素排出量 9.0t/人 2.5t/人 7.9t/人 - 自動車台数 7,003万台 1,283万台 1,043万台 522万台参考データ2: アメリカ カナダ ドイツ 人口 2億8,142万人 3,075万人 8,202万人面積 962.84万km2 997.61万km2 35.7万km2国民総所得 9兆6,015億ドル 6,498億ドル 2兆637億ドル国民総所得/1人 3万4,100ドル 2万1,130ドル 2万5,120ドル輸入額 1兆2,576億ドル 2,448億ドル 5,028億ドル輸出額 7,811億ドル 2,766億ドル 5,515億ドル 二酸化炭素排出量 19.9t/人 15.3t/人 10.1t/人自動車台数 2億1,549万台 1,701万台 4,474万台 フランスを含む各国の一次エネルギー消費構成(2001年)は以下のとおりです. フランス ドイツ カナダ アメリカ 日本 中国 韓国 石油 37.4 39.3 32.0 40.0 48.0 28.2 52.6 石炭 4.3 25.2 10.5 24.8 20.0 61.4 23.3天然ガス 14.3 22.3 23.8 24.8 13.8 3.2 10.6原子力 37.0 11.5 6.3 8.2 14.1 0.5 13.0水力 7.1 1.7 27.3 2.2 4.0 6.8 0.5(出典:BP統計(2002)) フランスのエネルギー政策は世界でも類を見ない独特のものです.一次エネルギー消費の4割程度が石油である点は他国と大差がありませんが,原子力の比率が際立って高い点が大きな特徴です.各国のエネルギー自給率(単位:%,1999年) 原子力含む 原子力除くフランス 50 10 日本 20 4ドイツ 39 26カナダ 152 - アメリカ 75 65イギリス 123 112 中国 95 95韓国 17 3 原子力を国産エネルギーと位置付けた場合,日本と同様にほとんど国産エネルギー資源を有していないフランスのエネルギー自給率は50%と大幅に改善します.この結果,石油依存率も国内に石炭資源を有するドイツよりも低くなっています.フランス,ドイツと日本の石油依存度(1999年) フランス ドイツ 日本 石油依存度 38(%) 40 52輸入依存度 98(%) 97 100中東依存度 41(%) 7 85(出典:IEA統計) フランスでは,発電電力の約8割が原子力で,石油,石炭等の化石燃料への依存率は非常に小さいものとなっています.フランス,ドイツと日本の発電電力構成(2000年) フランス ドイツ 日本石油 1.4(%) 0.8 14.7石炭 5.8(%) 52.7 23.5天然ガス 2.1(%) 9.3 22.1原子力 77.5(%) 29.9 29.8水力他 13.2(%) 7.3 9.9 (出典:OECD/IEA,http://www.jepic.or.jp/overseas/data/index03.html) 以上,フランスのエネルギー事情をまとめると以下のようになります.(1)国内資源は日本と同様にほとんどない(2)このため,原子力を除くエネルギー自給率は10%程度である(3)石油は海外に依存するが中東依存率は日本と比べて低い(4)電力生産の中心は原子力であり,約8割を占める(5)原子力を含めたエネルギー自給率は50%程度である フランスではドイツのように原子力やエネルギー全般に関する包括的な法律はありません.したがって,フランスでは,当面,原子力利用によるエネルギー自給率の維持が継続されるものと推定されます(明確な記載のある文書を見出すことはできませんでした). ところで,エネルギー政策の重要課題である原子力の研究開発は原子力庁(CEA)が中心となって取組んでいます.商業化は,核燃料サイクル事業はコジェマ社が,原子炉製造は主にフラマトム社が担当しています. 最近,フランスのフラマトム社はドイツのシーメンス社の原子力部門と統合し,また2001年9月にフラマトムグループは持株会社アレヴァ社(AREVA)傘下の核燃料サイクル企業・コジェマ社グループ,原子力庁持株会社CEA−アンデュストリ関連企業との整理・統合が行われています.AREVA社の資本はCEAが約79%,政府が約5%であり,原子力を「国策」として進めていることが明確です. フランスとドイツは,目指す方向は正に正反対ですが,自国のエネルギー政策を明確にしている点は共通です.そして,いずれも中心的役割は「国」が担っています. 事業主体を「国」とすることには拘る必要はないのかもしれませんが,日本でも「国民的な議論」を前提として「国」の責任で八方美人ではない「政策」を打ち出す必要があるように私個人は感じています.ただし,「国民的な議論」を踏まえて決めた「政策」がもたらす結果については,私たち自身に責任がある,と考えることが前提と思います. |