No.052:環境(第1回)

はじめに

No.051:エネルギー(第35回)

海洋温度差発電

No.050:エネルギー(第34回)

エジプト

No.049:エネルギー(第33回)

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No.047:エネルギー(第31回)

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フランス

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ドイツ

No. 040 update 2003.04.15 PDF版(12.9 kbyte)

エネルギー(第24回)

台湾

 これまで22回にわたってエネルギー関連のテーマで考えてきました.21号からは諸外国のエネルギー情勢について調べています.今後,台湾,アメリカ,カナダ,ドイツ,フランス,イギリス,ロシア,スウェーデン,ブラジル,インド,エジプトの11カ国について考えることを予定しています.月2回のペースでは半年近くを要しますので,できる限りペースアップしていきたいと考えています.

 「台湾」のエネルギー事情について考えたいと思います.

台湾の基礎データは以下のとおりです.

人口             2,239万人(2000年)     (日本の約20%)
面積             3.62万km2        (日本の約10%)
国民総生産        2,692億ドル       (日本の約6%)
1人当たりの国民総生産   12,360ドル(1998年)    (日本の約35%)
輸入額                 1400億ドル(2000年)   (日本の約37%)
輸出額                  1484億ドル(2000年)   (日本の約31%)
自動車台数             522万台(1998年)     (日本の約7%) 
            
(出典:集英社,世界情報アトラス2003, Energy Balance of non-OECD Countries(2001)

 台湾は日本と同様にエネルギー資源を輸入に依存しています.具体的なエネルギーの需給に関するデータは以下のとおりです.


一次エネルギー国内生産・消費量(単位:千toe)

       国内生産  国内総需要

1990     3,462    47,984
1997     3,011    72,546
1998     3,251    76,822   
1999     2,860    79,654

年平均伸び率(%)

       国内生産  国内総需要

1980-1990     -1.9        5.3
1990-1999     -2.1        5.8
1998/1999     -12.0       3.7

(出典:経済部能源委員会「台湾能源平衡表1999」)

        エネルギー構成(%)

石油      48
石炭      31
原子力     11
天然ガス    7
水力      3

(出典:http://www.ieej.or.jp/edmc/public/03Chinese_Taipei.pdf)


 以上のデータから台湾のエネルギー事情を整理すると以下のとおりです.

(1)日本と同様に国内エネルギー資源はほとんどない
(2)一次エネルギー供給の中心は石油(約48%)である
(3)エネルギーの国内生産は減少する一方,総需要は増加している(自給率は低下している)
(4)エネルギー不足が生じない前提として原子力利用の縮小を目指している


 台湾では,原子力利用についての政策転換が議論されてきました.2000年10月,台湾における4カ所目の原子力発電所として30%以上も工事が進んでいた「台湾第4原発」の建設中が発表されました.これは陳水扁総統が率いる民主進歩党の公約である脱「原子力」政策を実践したことを意味しています.ちなみに政府発表ベースの建設中止の根拠は以下のとおりです.

・第4原子力発電所がなくても十分な電力供給能力が得られていること
・代替エネルギー計画(LNG 火力の建設)があること
・放射性廃棄物処理が困難であること
・事故への懸念(日本の同型(ABWR)原子炉の停止率が他の型式のものの2倍)
・建設コストが高いこと
・持続的な経済発展と脱原子力体制の構築を目指すこと
・台湾の電力需給がさほど逼迫していないこと

(出典:(財)日本エネルギー経済研究所,河合氏,http://eneken.ieej.or.jp/data/old/pdf/taiwan1.pdf)

 この問題について,2001年1月に台湾の大法官会議(憲法解釈法廷)は,本行政院の決定が手続き的に瑕疵(適法性を損なう欠点)がある旨の判断を下し,当該発電所の建設続行の可否は立法院と行政院との調整に委ねられることになりました.2001年2月に立法院と行政院間で協議し,第4原子力発電所の建設を以下のような条件付きで再開することで合意しました.

・行政院は建設再開を直ちに発表し,その後の予算措置は関連法で処理すること
・エネルギーが不足しない前提で,脱原子力体制の実現を最終的な目標にすること
・行政院は将来の原子力エネルギー計画を定める原子力エネルギー関連法案をまとめ,立法院の審議に付すこと
・野党連合は行政院による建設続行宣言の後,両院協議を行うことに同意すること

(出典:(財)日本エネルギー経済研究所,河合氏,http://eneken.ieej.or.jp/data/old/pdf/taiwan2.pdf)


 日本や台湾のような自国にエネルギー資源を持たない国々では石油への依存率の低下を図る一方,代替エネルギーを開発する必要に迫られる点は共通です.台湾のエネルギー事情は日本のエネルギー問題を考える上で,参考になる点が多々あるように思います.

[文責:スリー・アール 菅井弘]

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