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No. 039 update 2003.04.01 PDF版(13.9 kbyte)

エネルギー(第23回)

韓国

 今回は,韓国のエネルギー事情について考えていきたいと思います.韓国はお隣の国であるにもかかわらず,米国や欧州諸国のようにエネルギー事情や政策が日本国内で引き合いに出されることはほとんどないように感じています.

韓国の基礎データは以下のとおりです.

人口             4614万人(2000年)      (日本の約40%)
面積             9.94万7873km2      (日本の約26%)
国民総所得       4210億ドル       (日本の約9%)
1人当たりの国民総所得   8910ドル(2000年)     (日本の約25%)
輸入額                 1605億ドル(2000年)   (日本の約42%)
輸出額                  1723億ドル(2000年)   (日本の約36%)
二酸化炭素排出量       7.9t/人(1998年)     (日本の約88%)
自動車台数             1043万台(1998年)    (日本の約15%) 
エネルギー総供給量   1億9200万t(石油換算)  (日本の約38%)
エネルギー自給率    3%(原子力除く)
            17%(原子力含む)
            
(出典:集英社,世界情報アトラス2003, Energy Balance of non-OECD Countries(2001)

参考データ:日本の基礎データ

人口             1億1628万人(2001年3月31日現在)
面積             37万7873km2
国民総所得       4兆5191億ドル
1人当たりの国民総所得   3万5620ドル(2000年)
輸入額                 3795億ドル
輸出額                  4792億ドル
二酸化炭素排出量       9.0t/人(1998年)
自動車台数             7003万台(1999年)
エネルギー総供給量   5億1000万t(石油換算)(1998年)
エネルギー自給率    4%(原子力除く)
            20%(原子力含む)

(出典:集英社,世界情報アトラス2003, Energy Balance of non-OECD Countries(2001)


 韓国の人口,輸出入額,エネルギー総供給量等は日本のほぼ40%で経済活動はほぼ同水準にあります.しかし,国民総所得は日本の1/10程度である一方,二酸化炭素排出量等はそれほど日本と違いがないこと等を踏まえると,「経済活動がもたらす効果」には大きな差があるのようです.

 エネルギー事情は驚くほど日本に酷似しています.原子力を含めないエネルギー自給率は3%,原子力を含めた自給率は17%で日本(それぞれ4%と20%)とほぼ同様な水準にあります.


韓国の一次エネルギー供給構成(%)
                           
石油    53     (参考)日本   44      中国  17 
石炭    22                 17            57
原子力   15                  17             0.4
天然ガス  10                  12             2.4
水力    0.3                 2              1.6
その他     0                   9              19.6

(出典:BP統計2001)


韓国の電力供給構成(%)

石炭    41.1   (参考)日本  20     中国   77.9
原子力   38.9                 39            1.2
天然ガス  11.4                 20            1.3
石油    7.0                  16            3.3
水力    1.6                  4             16.2  
その他   0.0                  1             -

(出典:Energy Balances(1998-1999 OECD))


 一次エネルギー供給構成も日本と良く似ています.石油依存率は50%以上で日本よりも高く,石炭,原子力,天然ガスの構成も大差はありません.すなわち,日本と韓国はエネルギー問題については極めて類似の環境下にあります.

 ちなみに韓国の一次エネルギー確認埋蔵量(1995年)は以下のとおりで,石炭以外の国内エネルギー資源はほとんどありません.

石炭(億トン)    0.8億トン
原油(億トン)    0 
天然ガス(億トン)  0 

(出典)『エネルギー統計資料(海外編)1996年版』(財)日本エネルギー経済研究所
 

 このようなエネルギー事情から,原子力開発が進められており,現在,17基の商業用原子炉が運転中(2002年末現在で18基)です.原子力発電の設備容量は2002年末で,計1498万kWとなっており,韓国の総発電設備容量の29.2%を占めています.

 2002年の原子力による発電電力量は1190億kWhで,総発電電力量の38.9%に達しています.さらに新規の原子力発電所として,蔚珍5,6号機(各100万kW PWR)の建設が進められており,新古里1,2号機(各100万kW PWR),新月城1,2号機(100万kW PWR)の建設計画もあります.

 韓国が原子力に傾注している最大の理由は,日本と同様な極めて低いエネルギー自給率にあると考えることができます.自国のエネルギー自給率を改善した上で,フランスのような周辺諸国への電力輸出国への道を歩む可能性もあります.


 以上のデータから韓国のエネルギー事情を整理すると以下のとおりです.

(1)国産資源の中心は石炭と水力であるが量的には少ない
(2)一次エネルギー供給の中心は石油(約53%)
(3)エネルギー自給率は3%(原子力除く)および17%(原子力含む)
(4)電力生産の中心は原子力(約39%)


 日本国内で,自国のエネルギー事情を十分踏まえた議論はほとんどなされていないのでは,と私自身は感じます.エネルギー問題は新エネルギーで何とかなる,という姿勢は希望に満ちていますが,大きなリスクも内包しています.

 欧州の政策が引き合いに出されることも多いのですが,将来の日本のエネルギー政策を考える上で,文化的な基盤に共通点の多い隣国のエネルギー事情を十分に理解することも有意義と考えます.

[文責:スリー・アール 菅井弘]

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