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No.002:将来の社会像(第1回)
将来の社会像(第1回)
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No.001:発行にあたって
発行にあたって
No. 038 update 2003.03.15 PDF版(15 kbyte)
今回から,諸外国のエネルギー事情をできるだけデータに基づいて考えていきたいと思います.第1回目として中国を取上げます.ところで海外の状況をより具体的にイメージするためには,常に日本社会の現状を踏まえて考えることが有効と思います.人口 1億1628万人(2001年3月31日現在)面積 37万7873km2国民総所得 4兆5191億ドル1人当たりの国民総所得 3万5620ドル(2000年)輸入額 3795億ドル輸出額 4792億ドル二酸化炭素排出量 9.0t/人(1998年)自動車台数 7003万台(1999年)エネルギー総供給量 5億1000万t(石油換算)(1998年)エネルギー自給率 4%(原子力除く) 20%(原子力含む)日本のエネルギー供給構成 石油換算(100万t) 国内構成比(%)天然ガス 60 12石油 226 44石炭 85 17水力 8 2原子力 87 17その他 46 9合計 510 日本の電力供給構成(1999) 単位(%)石炭 20% 石油 16% 天然ガス 20%原子力 39%水力 4%その他 1%(出典:集英社,世界情報アトラス2003, Energy Balance of OECD Countries(2001))中国の基礎データは以下のとおりです.人口 12億6583万人(2000年) (日本の約11倍)面積 960万7873km2 (日本の約25倍)国民総所得 1兆629億ドル (日本の約25%)1人当たりの国民総所得 840ドル(2000年) (日本の約2.5%)輸入額 2251億ドル(2000年) (日本の約60%)輸出額 2493億ドル(2000年) (日本の約50%)二酸化炭素排出量 2.5t/人(1998年) (日本の約28%)自動車台数 1283万台(1998年) (日本の約18%) エネルギー総供給量 10億3100万t(石油換算) (日本の約2倍)エネルギー自給率 約95% (出典:集英社,世界情報アトラス2003, Energy Balance of non-OECD Countries(2001) 中国は米国に次ぐ世界第2位のエネルギー消費国となっています.エネルギー供給面では,豊富な国内石炭資源を有し,エネルギー消費を支える主要燃料となっており,エネルギー消費に占める石炭の割合は57%に達しています. 中国の一次エネルギー供給構成(1999) 単位(%)天然ガス 2.4 石油 17.4 石炭 57.3水力 1.6原子力 0.4地熱/太陽エネルギー -その他* 19.6合計 100.0(出典: http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/energy/pdfs/toukei_e_1.pdf)*その他は再生可能燃料と呼ばれるもので主にバイオ燃料ですが,詳細は不明です.中国の電力生産構成(2000) 単位(%)石炭 77.9 石油 3.3 天然ガス 1.3原子力 1.2水力 16.2その他 −(出典:http://www.jepic.or.jp/overseas/data/index03.html)確認資源量および推定潜在量石炭 1145億トン水力 1.92兆kWh原子力 2.5兆kWh相当(6.4万t-U)石油 203億m3天然ガス 2.2兆m3風力 15万kW(1997年)太陽 60万kW(1997年) 平松茂雄(杏林大学社会科学部教授)(http://www.glocom.ac.jp/eco/esena/resource/)によると,中国のエネルギー需給構造は,石炭を主体とする自給自足型であると特徴付けることができ,大規模な陸上および海底の石油資源開発が実現しないかぎり,この構造は今後も長期にわたって持続すると考えられています.この捉え方は上記データからも理解できます. 中国の石炭依存による弊害として重大な環境汚染が指摘されています.酸性雨の範囲・面積は年々拡大しているようです.これは中国の発電所に脱硫装置がついていないことに起因し,イオウ酸化物(SO2)の排出量が非常に多い状況にあります.また石炭等の化石燃料消費の増加に伴い,CO2排出の世界に対するシエアは92年の11%から2010には18%に上昇すると見込まれています.イオウ酸化物による酸性雨の問題は日本にも直接影響があります.(出典: http://www.asianclub.or.jp/monthly/4/getu4.html) 以上のようなデータから中国のエネルギー事情を整理すると以下のとおりです.(1)一次エネルギー供給の中心は石炭(約60%)(2)2000年のエネルギー自給率は約95%(3)石油への依存度は約20%(4)電力生産の中心も石炭(約80%)(5)水力および原子力発電の拡大を模索中(6)国内保有資源量は豊富で今後も自給自足型を維持(7)酸性雨を始めとする環境問題は深刻 今後,中国のエネルギー事情がどのような方向に向かっていくのかという点は,隣国の日本としては無関係ではありません.電力供給面では石炭依存から脱却するため,水力発電や原子力発電が期待されています.水力では長江中流に建設中の三峡ダムの開発があります.三峡ダムの工事は1994年末に着工され,2009年頃に完成の予定です.このダムには70万kWユニット26基の建設が計画されており,中国の総発電電力量の約6%が賄われる見通しです. 原子力発電所は2002年に新たに3基の原子炉が運転を開始した結果,2002年末現在,広東省に100万kWクラスの原子炉3基,上海市近郊に30万〜70万kWの原子炉が3基,合計6基が運転中となっています.この他に60万〜100万kWクラスの原子炉5基の建設が進められており,このうち3基は2003年中に運転開始が見込まれています. 酸性雨等の環境問題は日本にとっても無関係ではありませんが,環境保全よりも経済成長が優先となるのは,日本でも1955年から74年にかけて経済成長率が年平均10%と驚異的に高かった高度成長期に経験済みの出来事です.今後の中国の経済発展に対し,同様な時期を経験した隣国として押し付けとはならない形でどのような役割を果たせるか,を考えることは重要な課題と感じています.
[文責:スリー・アール 菅井弘]
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