No.102:風力発電(第2回)

風力発電(その2)

No.101:風力発電(第1回)

風力発電(その1)

No.100:年始のご挨拶(2006年)

「年始にあたって」

No.099:水素エネルギー・燃料電池(その4)

燃料電池

No.098:水素エネルギー・燃料電池(その3)

水素の製造

No.097:水素エネルギー・燃料電池(その2)

水素エネルギーの位置づけ

No.096:水素エネルギー・燃料電池(その1)

水素生産および需要の現状

No.095:バイオマス(第7回)

バイオマス利活用例(3)

No.094:バイオマス(第6回)

バイオマス利活用例(2)

No.093:バイオマス(第5回)

バイオマス利活用例(1)

No. 036 update 2003.02.15 PDF版(14.3 kbyte)

エネルギー(第20回)

メタンハイドレート

 今回は「メタンハイドレート」について考えたいと思います.

 「メタンハイドレート」は,メタンガス分子と水分子から成る氷状の固体物質と言われ,永久凍土層の下や深海地層中に存在することが明らかになってきました.そこで,「メタンハイドレート」からメタンガスを回収して新エネルギー資源として利用することが検討されています.

 「メタンハイドレート」を氷状の物質と表現しましたが,より正確には,水分子が5〜6オングストロームの空隙を持った立体網状(包接格子)構造を形成し,この格子中にメタンが捕捉(包接された)された化合物(包接化合物と呼んでいます)であると考えられています.氷の中に形成されたミクロの孔にメタンが閉じ込められているというイメージです.

 すなわち,「メタンハイドレート」は,メタンガスが水に溶けて飽和した状態から,一定の温度・圧力条件(低温かつ高圧)を満たす状態で固体となる際に形成される,と考えることができます.これが深海地層中等に「メタンハイドレート」が生成する理由と考えることができます. 

 「メタンハイドレート」に含まれるメタンの生成起源としては「生物起源説」と「熱分解起源説」が有力です.生物起源説は微生物によるメタンガス発生が起源とするもので,一方の熱分解起源説は原油や天然ガスの起源と同様に堆積物中の有機物から生成されるケロジェンを起源とする説です.最終的にはいずれの経路も生成に関与している,と考えられています.

 
 実際に「メタンハイドレート」を考える場合には,主成分として同一(メタンガス)である「天然ガス」と比較すると理解し易いかもしれません.「天然ガス」についてはメルマガ「エネルギー(第4回)」をご覧下さい.


天然ガスの生産量・埋蔵量(2000年)

       生産量   生産量%   埋蔵量     可採年数
       (10億cf)
アメリカ   20,069   23.8       167,406       8.3 
カナダ     7,082   8.4        61,010       8.6 
メキシコ    1,713     2.0        30,394      17.7 
ベネズエラ    840     1.0       146,800     174.8 
サウジアラビア 1,127     1.3       213,300     189.3 
イラン         1,069     1.3       812,300     759.9 
カタール         728     0.9       393,830     541.0 
アルジェリア   2,311     2.7       159,700      69.1 
オランダ       2,516     3.0        62,542      24.9 
イギリス       4,090     4.8        26,839       6.6 
インドネシア   2,619     3.1        72,268      27.6 
中 国            965     1.1        48,300      50.1 
旧ソ連        24,013    28.4          N.A.       N.A. 
その他        15,255    18.1     1,213,395       N.A. 

計            84,397   100.0     5,278,484      62.5 

(出典:Oil&Gas Journal)

 天然ガスは「可採年数」は約62年とされていますが,「究極可採資源量」としては約260〜330兆m3と推定されています.しかし,資源分布には偏りがあり,日本の天然ガス自給率は3%程度で大部分は輸入に依存しています.


 これらは「在来型天然ガス」と呼ぶことができますが,今回の取上げた「メタンハイドレート」や石炭層中に封じ込められた「コールベッドメタン」などはこれまでの天然ガス資源量には含まれていない「非在来型天然ガス」という位置付けになります.「メタンハイドレート」の資源量としては以下のような試算が報告されています.


代表的なメタンハイドレートの資源量試算値
(天然ガス換算m3)
            陸域    海域         全域

トロフィミック他(1977) 5.7×10^13 (5〜25)×10^15 
マクイーバー(1981)   3.1×10^13 3.1×10^15
メイヤー(1981)     1.4×10^13 
ドブリーニン他(1981)  3.4×10^16 7.6×10^18
クベンボルデン                      2.01×10^16
クラソン(1992)           (2.21〜16.5)×10^16  
地質調査所/エネ総研(1992)      (2.5〜5)×10^14

(出典:松本良/奥田義久/青木豊著「メタンハイドレート」,日経サイエンス社)


天然ガス,メタンハイドレートの資源量

天然ガス確認埋蔵量          141兆m3(BP統計)
天然ガス究極可採資源量        328兆m3(Masters他)
在来型天然ガスの原始資源量      437兆m3(佐藤ら)
メタンハイドレートに含まれるメタン量 17,600〜40,000兆m3(Kvenvolden他)

(出典:エネルギー総合工学研究所のホームページhttp://www.iae.or.jp/DATA/TENBOU/1997-HIZAIRAI/0shou.html)

 ちなみに「メタンハイドレート」に含まれる天然ガスを全てメタンと見なして算出した総量を「メタン量」と呼び,資源の総量を「原始資源量」,長期的な観点から技術的・経済的にとりだせる資源の総量を「究極可採資源量」と定義しています. 


 地球上における「メタンハイドレート」の資源量は膨大で,国産資源としても注目されています.日本列島はメタンハイドレートについては恵まれた地形であり,なかでも四国,紀伊半島沖合いわゆる南海トラフ,北海道奥尻島海域では実際にメタンハイドレートが採取されています. 

 日本海域全体の資源量については種々のデータが報告されていますが,おおよそメタンガス量で約7×10^12(7兆)m3と見積られています.この量は全世界における「メタンハイドレート」資源量と比較するとごく僅かですが,国内での天然ガス年間総消費量(1995年度約540億m3)と比較すると約137年分に相当する膨大なものです. 


 「メタンハイドレート」は,純国産資源として採取できる可能性があり,今後の展開が期待されます.しかし,実際の採掘には技術的な困難や,環境汚染等の問題に直面する可能性があります.したがって,国産エネルギー資源確保の観点での長期的・戦略的な取組みが必要なのかもしれません. 

[文責:スリー・アール 菅井弘]

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