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No. 035 update 2003.02.01 PDF版(16.4 kbyte)

エネルギー(第19回)

クリーンエネルギー自動車

 今回は「クリーンエネルギー自動車」について考えていきたいと思います.

 「クリーンエネルギー自動車」という名称は,「ガソリン」や「軽油」ではない石油代替燃料を使用したり,燃料消費を節約することや,窒素酸化物・浮遊粒子状物質や二酸化炭素などの排出を低減できる自動車という意味合いで使われています.
 
 現在,国内でクリーンエネルギー自動車と位置付けられているものには以下のようなものがあります.

(1)電気自動車
(2)天然ガス自動車
(3)ハイブリッド自動車
(4)メタノール自動車
(5)低排出ガス車・低燃費車
(6)ディーゼル代替LPガス自動車
(7)燃料電池自動車
(8)ジメチルエーテル車
(9)粒子状物質(PM)低減装置装着車

 国内における「クリーンエネルギー自動車」の実績および導入目標は以下のとおり
となっています.
            1999年実績 2010年度
                  支援措置  対策ケース

電気自動車        2,600台   *      41万台
ハイブリッド自動車   37,400台   *         180万台
*は併せて100万台
メタノール自動車        200台     22万台   22万台 
天然ガス自動車          5,200台   100万台    100万台 
ディーゼル代替LP自動車  19,200台    22万台   22万台

合計                    6.5万台   244万台   365万台

出典:総合エネルギー調査会需給部会資料,総合エネルギー調査会新エネルギー部会資料,総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会資料等
著作権者:通商産業省


 主な「クリーンエネルギー自動車」の概要は以下のとおりとなっています.

電気自動車

 バッテリー(蓄電池)に蓄えた電気でモーターを回転させて走る自動車です.走行中は排出ガス(窒素酸化物,粒子状物質等)はなく,走行騒音も通常の自動車(ガソリン車やディーゼル車など)と比べて少ないのが特徴です.一方,燃料源となる電力は発電所で発電されたものを利用することから「ゼロエミッション」ではなく,システム全体では窒素酸化物や二酸化炭素を排出します.

電気自動車の導入実績

普通自動車等 軽自動車  合計

1985 47      777       824
1990 72      965       1,037
1995 312          2,180     2,500
1996 348          2,210     2,600
1997 459          2,050     2,500
1998 550          1,840     2,400
1999 559          2,020     2,600

出典:財団法人日本電動車両協会資料
著作権者:財団法人日本電動車両協会


天然ガス自動車

 家庭に供給されている天然ガスを主成分とした都市ガスを燃料として走る自動車です.天然ガスを気体のままで1/200に圧縮して高圧ガス(CNG(compressed natural gas))として使用する圧縮天然ガス(CNG)自動車が代表とのことです.燃料が気体のため1回のガス充填で走行できる距離は普通貨物で約200kmとやや短いのが欠点となっています.

天然ガス自動車の導入実績

       台数
 
1990  21
1995  759
1996  1,211
1997  2,093
1998  3,640
1999  5,252

出典:社団法人日本ガス協会「天然ガス自動車の普及に向けて」2000年版
著作者:社団法人日本ガス協


ハイブリッド自動車

 複数の動力源を組み合わせた自動車で,最近,複数のメーカーで商品化されているガソリンと電気を併称したものが身近です.このタイプのものは,価格が従来のクリーンエネルギー自動車に比べて低価格となっており,燃料も既存燃料をそのまま利用していることから,燃料供給の問題も回避できることから実績も拡大傾向にあります.

ハイブリッド自動車の導入実績

台数

1993 72
1994 128
1995 176
1996 228
1997 3,746
1998 22,528
1999 37,400

出典:通産省資料,著作権者:通産省


メタノール自動車

 メタノール自動車はアルコールの一種であるメタノール(天然ガスや石炭から製造されます)を燃料として走る自動車です.排出ガスに粒子状物質が含まれていないことやディーゼル車に比べて窒素酸化物の排出量が約半分に削減できることなど環境面での長所があります.ちなみにオットータイプ(ガソリン用エンジンと同じ火花点火機関)とディーゼルタイプ(メタノールと軽油を二系統で供給し,軽油を着火用にメタノールを主燃料として用いるディーゼル機関)があります.

メタノール自動車の導入実績

オットー ディーゼル 計

1990 85  54     139
1995 81  261    342
1996 140  400    540
1997 145  418    563
1998 136  446    582
1999 147  438    585

出典:財団法人物流技術センター,運輸低公害車普及機構
(旧日本メタノール自動車?),財団法人石油産業活性化センター
著作権者:株式会社三菱総合研究所

LPガス自動車

経済性に優れ,既にタクシーなどで普及しています.LPガス自動車は液化石油ガス(LPG)を用いるため,石油からともに取り出す場合は石油代替効果はありませんが,NOx,黒煙等の排出が少なく環境特性に優れています.

LPG自動車の導入実績
(平成12年3月末)
  
乗用車* 270,380 
貨物車 10,955 
特殊車 8,339
乗合車 1
合計  289,675
*タクシーは236,074台

出典:運輸省車両登録統計(平成12年3月末)


燃料電池自動車

 水素と酸素を反応させて電気エネルギーを直接取り出し,排出物は水だけという非常にクリーンな動力源を持つ自動車で,究極のエコカーと呼ばれています.燃料に直接水素を用いる他,ガソリン,メタノール,天然ガスなどから取り出した水素を用いる方法が考えられています.平成14年12月に政府に市販車第1号が納入されましたが,これらは「高圧水素ガス」を用いたものです.ちなみにリース料金は1ヶ月当り100万円以上となっています.


ジメチルエーテル(DME)自動車

 DMEは天然ガスや他の原料から生産可能で,液化ガスのため燃料の搭載が容易です.ディーゼル車の燃料として軽油の代替として政府系機関が中心となって検討されています.ちなみにジメチルエーテルはスプレー缶の噴射剤として身近なものです.


粒子状物質(PM)低減装置装着車

 ディーゼル車から排出される黒煙などの粒子状物質(PM:パーティキュレイト・マター)を除去するフィルター等を装着した自動車です.既に使用されているディーゼル車へ装着することが可能であることから普及が期待されます.


 新しい燃料を用いる自動車については,燃料充填スタンドの整備が大きな課題となります.新燃料を供給するためのスタンドはエコステーションと呼ばれていますが,エコステーションの新設には多大な資源とエネルギーの投入が必要です.

エコステーションの整備状況

      電気  天然ガス メタノール

1998年4月 26   33       10
1999年4月 26   49       10
2000年5月 26   70       10

出典:財団法人環境情報普及センター「低公害車ガイドブック」
著作者:環境省,経済産業省,国土交通省

全国のLPGスタンド
約1,900か所(平成12年9月末)


 「自動車」の問題は生活に密着しており,私たち自身の問題として考えてみる必要があります.国内での自動車保有台数は約7200万台,このうち年間約500万台が廃車になり,約400万台が廃棄処理されているとのことです.ちなみに廃車台数と廃棄処理台数の差である100万台は海外への輸出分です
(出典:http://eco.goo.ne.jp/magazine/files/interview/key_sep02-1.html).

 1999年時点で「クリーンエネルギー自動車」の導入実績は,LPガス自動車を含めると約30万台で0.5%,LPガス自動車を除くと7万台弱でわずか0.1%です.「クリーンエネルギー自動車」は国内でもてはやされていますが,「自動車」による環境問題の解決はより根本的な「社会」の中での「人」と「自動車」の関係を見直さない限り困難と感じています.

 国・政府・行政の方針に合わない技術への配慮も必要です.例えば政府・業界から認知されていないアルコール系燃料に「ガイアックス」があります.ガイアックスは,既刊メルマガ(エネルギー第11回)でも触れましたが,天然ガスを原料とするア
ルコール系自動車燃料です.「天然ガス」を燃料とした天然ガス自動車を公認する一方で,「天然ガス」を原料として製造した燃料である「ガイアックス」を排除する理由が今一つ理解できません.

 また,バイオマス燃料を導入できる「エタノール」自動車への関心もほとんど見られません.「メタノール」の原料は天然ガスや石炭ですが,「エタノール」は植物を原料に製造されています.「工業生産物」と「農業生産物」の違いが原因なのかもしれません.

 「クリーンエネルギー自動車」の今後の普及を期待する一方で,「自動車社会」の背景にある問題を冷静かつ客観的に考えてみることは無駄ではないように思います.
私自身は,身近な「エコカー」とは「様々な燃料に対応できる」,「燃費に優れ」,「排ガスを適正に浄化きる性能をもった」,「10年以上(できれば15年くらい)乗りつづけても大丈夫」な自動車と考えています.

[文責:スリー・アール 菅井弘]

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