No.032:エネルギー(第16回)

燃料電池

No.031:エネルギー(第15回)

氷雪冷熱

No.030:エネルギー(第14回)

廃棄物燃料製造

No.029:エネルギー(第13回)

廃棄物熱利用

No.028:エネルギー(第12回)

太陽熱利用

No.027:エネルギー(第11回)

バイオマス

No.026:エネルギー(第10回)

廃棄物発電

No.025:エネルギー(第9回)

風力発電

No.024:エネルギー(第8回)

太陽光発電

No.023:エネルギー(第7回)

地熱発電

No. 028 update 2002.10.15 PDF版(14.5 kbyte)

エネルギー(第12回)

太陽熱利用

 今回は「太陽熱利用」について考えていきたいと思います.

 まず,「太陽熱利用」と聞いて最初に思い浮かぶのは屋根の上に設置されている温水器です.現在まで自然循環形,さらに高性能な強制循環形のソーラーシステムが開発されました.用途も給湯の他,暖房や冷房にまで広がり,ピーク時では太陽熱温水器が年間約80万台(1981年),ソーラーシステムが年間約6万台(1983年)の出荷実績となっています.

 「太陽熱温水器」は昔から使われているもっとも簡単な太陽熱利用機器です.集熱器上部に貯湯槽が接続され,貯湯槽に給水された水は下部の集熱器へ流れ込み,太陽熱で温められ比重が軽くなり貯湯槽へ戻りお湯が蓄えられます.循環に動力を用いないため,自然循環型太陽熱温水器と呼ばれています.貯湯量200〜250リットル,集熱器の面積3〜4m2のものが主流のようです. 

 これに対し「ソーラーシステム」には水式ソーラーシステムと空気式ソーラーシステムがあります.例えば水式ソーラーシステムでは集熱器を屋根に乗せ,蓄熱槽を地上に設置し,集熱器と蓄熱槽の間を配管して集熱回路を構成します.太陽熱で集熱器が一定の温度に達すると集熱ポンプが自動運転され,集熱回路の中の熱媒が循環し蓄熱槽にお湯を蓄えます.貯湯量300リットル,集熱器の面積6m2(集熱器3枚)のものが多いようです.


 これらの「太陽熱利用」機器は,エネルギー変換効率が高く,新エネルギーの中でも設備費用が比較的安価で費用対効果の面でも有効と考えられます.しかし,円高や石油価格の低位安定等を背景に導入台数は年々低下の傾向がありますが,2000年度末の累積出荷台数は太陽熱温水器が約628万台,ソーラーシステムが約58万台となっています.

太陽熱利用機器販売台数推移(単位:千台)
 
         1975  1980  1985  1990  1995  2000  2001

ソーラーシステム  0.14  25.5  38.5  16.9  24.1  15.1  12.9
太陽熱温水器      117   803   275   155   197   73    75

(出典:ソーラーシステム振興協会ホームページ(http://www.ssda.or.jp/))


 地域別では関東と中部地区が際立って多いことがわかります.

ソーラーシステム設置実績(累計)の地域別内訳

地域    設置件数  %
 
北海道    7,183   1.2 
東北     25,912   4.5 
関東    215,620  37.4 
北陸      5,622   1.0 
中部    114,717  19.9 
近畿     51,947   9.0 
中国     53,846   9.3
四国     23,059   4.0 
九州     79,325  13.7 
累計    577,231 100.0 

(出典:ソーラーシステム振興協会ホームページ(http://www.ssda.or.jp/))

 
 資源エネルギー庁のホームページによると太陽熱利用の実績は,1999年度で原油換算98万klとなっています.最近では拡大どころか減少傾向があるため2010年度の目標439万klを達成することは容易ではないようです.

新エネルギー導入の実績と目標

         1999年度実績 2010年度見通し 2010年度目標  2010/1999

太陽熱利用    98万kl    72万kl     439万kl    約4倍
廃棄物熱利用   4.4万kl    4.4万kl     14万kl     約3倍
バイオマス熱利用 -       -        67万kl     -
黒液・廃材    457万kl    479万kl     494万kl    約1.1倍
未利用エネルギー 4.1万kl    9.3万kl     58万kl     約14倍
(雪氷冷熱を含む)  

※「目標ケース」の値は,官民の最大限の努力を前提とした目標量.


 若干データとしては古いですがエネルギーに関して総理府が行なった「省エネルギー・新エネルギーに関する世論調査」があります.全国20歳以上の国民3,000人に対して,平成8年2月1日〜11日にかけて行われた調査です.

 この中でソーラーシステム(太陽熱温水器)についての以下のような質問に対する回答が示されています:

質問:「現在はソーラーシステムの利用があまり進んでいませんが,将来価格が下がった場合,あなたは,このシステムを利用したいと思いますか.」

利用したい(既に設置している)  26.9%
どちらかといえば利用したい   35.4%
どちらかといえば利用したくない 13.7%
利用したくない         14.5%
わからない           9.5%

質問:「利用したい人の場合,ソーラーシステム(太陽熱温水器)の価格(設置費用を含む)がいくらであれば利用してもよいと思いますか.」

20万円未満       68.5%
20万円〜40万円未満   20.7%
40万円〜60万円未満   3.7%
60万円以上       0.7%
わからない       6.4%   

 現在のソーラーシステム価格は以下のとおりで,ユーザー側の希望価格20万円以下とするには一段のコスト低減が必要な状況です.

各種ソーラーシステムの参考価格

汲み置き型ソーラー    20万円〜100万円
自然循環型ソーラー    20万円〜40万円
強制循環型ソーラー    40万円〜100万円

(出典:アートソーラーモール社ホームページ)

 
 「太陽熱温水器」はコスト削減という大きな課題を抱えていますが,導入による効果は決して小さいものではないようです.

標準的な住宅用ソーラーシステム1台あたりの年間効果

原油換算    337リットル 
CO2削減効果   243kg-C 


 日本では「新エネルギー」と言うと目新しい「太陽光発電」,「風力発電」,「燃料電池」等ばかりが注目されがちです.その背後で貴重な既存システムへの配慮が不足しているように思えてなりません.「太陽光発電」と比較して古臭さを感じるかもしれませんが,地上に降り注ぐ太陽熱の直接利用ができる「太陽熱温水器」の効用を今一度見直しても良いように感じています.

[文責:スリー・アール 菅井弘]

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