No.032:エネルギー(第16回)

燃料電池

No.031:エネルギー(第15回)

氷雪冷熱

No.030:エネルギー(第14回)

廃棄物燃料製造

No.029:エネルギー(第13回)

廃棄物熱利用

No.028:エネルギー(第12回)

太陽熱利用

No.027:エネルギー(第11回)

バイオマス

No.026:エネルギー(第10回)

廃棄物発電

No.025:エネルギー(第9回)

風力発電

No.024:エネルギー(第8回)

太陽光発電

No.023:エネルギー(第7回)

地熱発電

No. 026 update 2002.09.15 PDF版(16.7 kbyte)

エネルギー(第10回)

廃棄物発電

 今回は「廃棄物発電」について考えていきたいと思います.

 まず廃棄物(ゴミ)のエネルギーを利用する方法ですが,これは廃棄物発電,廃棄物熱利用,廃棄物燃料製造(RDF)の3つに分類できるようです.

 「廃棄物発電」では,廃棄物を焼却する際の「熱」で蒸気を発生させ,タービンを回して発電します.最近では,発電効率を上げるためにボイラーの高温・高圧化やガスタービンエンジンと併用した「スーパーごみ発電」の導入が行われています.

 「廃棄物熱利用」は,発電した後の排熱を周辺地域の冷暖房や温水として利用したり,発電せずに直接熱を利用する方法があります.また「廃棄物燃料製造」では,可燃ゴミを粉砕,乾燥,加工してRDF(廃棄物固形化燃料)を製造して利用します.
 
 廃棄物焼却処理施設では廃棄物を燃やしていますが,その際,高温の燃焼ガスが大量に発生します.この熱を無駄にせず,有効に利用して発電を行うのが「廃棄物発電」です.「マテリアルリサイクル」に対して「サーマルリサイクル」とも呼ばれます.
 
 この「廃棄物発電」には,以下のような特徴があります:
−発電に伴う二酸化炭素等の追加的な放出がない(前提条件が必要),
−新エネルギーの中では,連続的な発電が可能な安定電源である,
−発電規模は小さいが電力需要地に直結した分散型電源である.

 当然のことながら問題点もあり,焼却施設の高温燃焼に伴う耐食性やダイオキシン発生等には十分な配慮が必要です.
 

 1999年度末における日本の廃棄物発電設備容量は,一般廃棄物が84.5万kW,産業廃棄物が13.6万kW(58カ所)の合計98万kWとなっています.今後の見通しとしては下表のとおりとなっています.

 ところで,この中で設備換算と原油換算に大きな差異があることがわかります.太陽光発電や風力発電では設備規模としては大きく拡大する見通しですが,設備稼働率の関係から原油換算では見劣りする結果となるのかもしれません.


              1999年度    2010年度見通し/目標
          (実績)   現行対策    目標ケース 

            原油 設備 原油 設備 原油 設備  2010/1999 
            換算 規模 換算 規模 換算 換算 倍率
 
太陽光発電        5.3   20.9  62    254   118   482   約23倍 
風力発電          3.5   8.3   32    78    134   300   約38倍 
廃棄物発電        115   90    208   175   552   417   約5倍 

バイオマス発電      5.4   8     13    16    34    33    約6倍 
太陽熱発電          98    -     72    -     439   -     約4倍 
未利用エネルギー
(雪氷冷熱を含む)    4.1  -   9.3  -   58   -     約14倍 
廃棄物熱利用        4.4   -     4.4   -     14    -     約3倍 
バイオマス熱利用    -     -     -     -     67    -     - 
黒液・廃材等        457   -     479   -     494   -     約1.1倍 

新エネルギー供給計  693   -     878   -     1,910 -     約3倍 

単位:原油換算(百万kl),設備換算(万kW)

(出典:新エネルギー庁ホームページhttp://www.enecho.meti.go.jp/policy/energy/enesan2.htm)


 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のホームページによると廃棄物発電のコストは,事業形態(都道府県,市町村,民間),発電システム(従来型,RDF等の新しいシステム等),処理規模等によって異なるようですが一般的には以下のような数値が示されています.

廃棄物発電(300t/日以上)の発電コスト

廃棄物発電コスト 9〜11円/kWh
火力発電コスト  7.3円/kWh
コスト比     約1.2〜1.5倍

 上記発電コストは他の新エネルギーの発電コストと比較してかなり競争力の高い状況にあると言えます.

新エネルギー発電コストの推移等 (単位:円/kWh,万kW) 

エネルギー名  発電コストの推移   既存エネルギーとの比較

太陽光発電   314(H5)→81(H11)   家庭用電力料金の約3倍 
風力発電    26(H1) →19(〃)    火力発電単価の約2倍
燃料電池    67(H3) →28(〃)    火力発電単価の約3.5倍 
 
※家庭用電力料金:約25円/kWh,火力発電単価:約8円/kWh 
(出典:総務庁ホームページ http://www.soumu.go.jp/kansatu/energy.htm)


 この「廃棄物発電」のコスト競争力から新エネルギーの中で廃棄物発電が突出する可能性が指摘されています.例えば平成14年6月7日に公布となった「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法案」(いわゆるRPS 法)には「自然エネルギー促進法」推進ネットワーク,気候ネットワーク,グリーンピース・ジャパン,北海道グリーンファンド,自然エネルギー推進市民フォーラム,「太陽光・風力発電」トラスト,FoE(地球の友) Japanらの団体が強く反対してきました.

 特に上記法律における新エネルギーの定義として,風力,太陽光,地熱,水力の他に「石油を熱源とする熱以外のエネルギーで政令で定めるもの」という記述がある点が問題視されています.「石油を熱源とする熱以外のエネルギーで政令で定めるもの」の中に「廃棄物発電(ゴミ発電)」が含まれることから,コスト競争力の高い「廃棄物発電」ばかりが進展することとなり,「ゴミ発電促進法」となるという批判です.


 ところで,廃棄物発電の問題を考える際に,日本における廃棄物焼却処理の特殊性を理解しておく必要があります.具体的に日本は一般廃棄物処理において世界一高い焼却率となっています.

各国の都市ゴミ(一般産業廃棄物)焼却率(%)

日本(1993)     73
デンマーク(1995)  56
フランス(1993)   49
スウェーデン(1994) 41
旧西ドイツ(1990)  28
オランダ(1994)   26
アメリカ(1994)   16
イギリス(1990)   13

(出典:OECD Environmental Data 1997,p.157)


 焼却施設数の観点からも諸外国と比較してまさに桁違いの数の施設を有しています.最近,話題となっている焼却施設からのダイオキシン発生問題もこれだけ多数の焼却施設を抱えていると対策の実行は容易ではないかもしれません.これらは行政制度の問題とも密接に関係しているため,国内全体の廃棄物行政を見直さない限り解決できない問題なのかもしれません.

各国のゴミ(一般産業廃棄物)焼却実態

       焼却施設数 発生量    焼却量 

日本    1,854   50,300    38,000
アメリカ    148    207,000    32,900
カナダ      17   23,200     1,200
ドイツ     53     43,500    11,000
オランダ    11     12,000     2,800
スウェーデン  21     32,000     1,700
                           (千トン/年)

(出典:法研「ダイオキシン汚染」) 


 「廃棄物発電」により「火力発電」における化石燃料の利用を抑制できた場合には二酸化炭素の追加的な放出がないと考えることができます.しかし,発電量自体の増大に伴い「化石燃料」を「廃棄物」燃料に代替したというような状況下では「廃棄物発電」と言えども二酸化炭素の放出を伴う「発電」と位置付ける必要があります.

 さらに「廃棄物発電」は「新エネルギー」としての観点の他,廃棄物問題としての観点から総合的に考える必要があるように思います.「廃棄物発電」自体は,焼却処理に伴って発生する「熱」の有効利用(「サーマルリサイクル」)で今後の展開が期待されますが,「焼却」対象となる廃棄物発生の抑制(Reduce)こそ本来達成すべき目標であることを忘れてはならないように思います.

[文責:スリー・アール 菅井弘]

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