No.032:エネルギー(第16回)

燃料電池

No.031:エネルギー(第15回)

氷雪冷熱

No.030:エネルギー(第14回)

廃棄物燃料製造

No.029:エネルギー(第13回)

廃棄物熱利用

No.028:エネルギー(第12回)

太陽熱利用

No.027:エネルギー(第11回)

バイオマス

No.026:エネルギー(第10回)

廃棄物発電

No.025:エネルギー(第9回)

風力発電

No.024:エネルギー(第8回)

太陽光発電

No.023:エネルギー(第7回)

地熱発電

No. 020 update 2002.06.16 PDF版(16.1 kbyte)

エネルギー(第4回)

LNG(液化天然ガス)

 今回は,「LNG(液化天然ガス)」について考えてみたいと思います.
 
 私たちの日常生活でも馴染みのある「ガス」ですが,大きく「都市ガス」(国内では7種類のガスがあるとのことです)と「プロパンガス」に分類されるようです.両者の大きな違いは,ガスが届けられる方法と空気と比べたときのガスの重さです.都市ガスは,地下に埋めたガス管を使って輸送していますが,プロパンガスはガスを詰めたボンベで使用されており家庭用として身近なものです.また,都市ガス(一部を除く)は空気より軽いのに対し,プロパンガスは空気より重い性質を持っています.

 一方,液化石油ガスと呼ばれるものがあり,英語名のLiquefied Petroleum Gasの頭文字を採ったのがLPG(LPガス)と表示されています.プロパンガスやブタンガス等はLPガスです.LPガスは石油から66%,天然ガスから34%生産されており,天然ガス採掘量の増大とともに天然ガスからの生産が増加しているそうです.国内では年間約19百万トン使われており,一次エネルギーの約5%を供給しているそうです.LPガスの用途としては家庭用や自動車(タクシー)用が身近ですが,工業用,化学原料用,及び都市ガス用や電力用など幅広く使われています.

 そして,今回のテーマであるLNGは英語のLiquefied Natural Gas(液化天然ガス)の頭文字をとったもので,天然ガスを液化した液化天然ガスと呼ばれているものです.先述の都市ガス原料の約8割は天然ガスということです.天然ガスの主な成分はメタンで無色無臭で,液体にするにはマイナス162℃まで冷やす必要がありますが,液化された天然ガスは体積が気体の約600分の1になるので運搬が容易になります.さらに地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量が石炭や石油に比べて30〜40%も少ないとも言われています.

 日本では石油,石炭に次ぐエネルギー源であり,世界の一次エネルギーの約1/4は天然ガスによる供給となっています.

世界各地域の一次エネルギー構成

         LNG   石炭  石油  その他(%)

日本       13.4  19.3  49.6  17.7
アジア・太平洋  11.1    40.3    41.2     7.4
アフリカ     19.6    33.3    43.3     3.7
中東        43.9    1.9   54.0     0.2
ヨーロッパ    22.7    19.1    41.4    16.8
旧ソ連      53.8    19.1    18.9     8.3
北米        26.2    22.7    40.4    10.7
中南米       22.5     5.4   58.8    13.4

世界(平均)    24.7    25.0    40.0    10.3

(出典:BP Amoco Statistical Review of World Energy 2001)


 しかし,この天然ガスも資源的には中東地域をはじめとする少数の国々に偏在しています.

天然ガスの生産量・埋蔵量(2000年)

       生産量   生産量%   埋蔵量     可採年数
       (10億cf)
アメリカ   20,069   23.8       167,406       8.3 
カナダ     7,082   8.4        61,010       8.6 
メキシコ    1,713     2.0        30,394      17.7 
ベネズエラ    840     1.0       146,800     174.8 
サウジアラビア 1,127     1.3       213,300     189.3 
イラン         1,069     1.3       812,300     759.9 
カタール         728     0.9       393,830     541.0 
アルジェリア   2,311     2.7       159,700      69.1 
オランダ       2,516     3.0        62,542      24.9 
イギリス       4,090     4.8        26,839       6.6 
インドネシア   2,619     3.1        72,268      27.6 
中 国            965     1.1        48,300      50.1 
旧ソ連        24,013    28.4          N.A.       N.A. 
その他        15,255    18.1     1,213,395       N.A. 

計            84,397   100.0     5,278,484      62.5 

(出典:Oil&Gas Journal)


 日本国内では新潟県の南長岡ガス田や福島県の磐城沖ガス田などで天然ガスが採掘されていますが,輸入割合は約97%と極めて高くなっています.しかし,石油とは異なり現在の輸入先はアジア・オセアニア地域が中心となっています.

日本のLNG輸入先(2000年度)
   
        LNG換算万トン
  
インドネシア  1,812    33.50%
マレーシア   1,092    20.20%
オーストラリア  715    13.20%
カタール     600    11.10%
ブルネイ     572    10.60%
アブダビ     480     8.90%
アラスカ          126         2.30%
オマーン           12         0.20%

合計           5,410          100%

(出典)日本貿易月表より作成


 利用面から見た天然ガスは,メタンを主成分とする可燃性のガスで,成分中にCOなどの不純物を含まず,燃焼排ガス中の有害物質の発生が少ないため,他の化石燃料に代わるクリーンなエネルギーとして期待が高まっています.高い発熱量を持ち,安全性の面でも,燃焼範囲が狭いため爆発の危険性が少なく,空気より軽く拡散しやすいので中毒を引き起こす心配がないことも利点です.


化石燃料の単位発熱量あたりのCO2排出係数

       単位量あたり総発熱量 CO2排出係数
                                   (CO2kg/Gcal)

原料炭(輸入)  7600 kcal/kg     363
一般炭(輸入)  6074 kcal/kg     379
原油      9250 kcal/l      286
LNG           13000 kcal/kg          207

(注:Gcalはギガカロリーの意味で1Gcal=10^9cal=10^6kcalとなります)


 都市ガス原料の約8割が天然ガスになっているほか,圧縮天然ガスを燃料に使用した天然ガス自動車が旅客・貨物などの輸送分野で利用されています.また,天然ガスを改質して燃料電池に用いる水素を取り出す技術も確立されつつあります.


 これまで,化石燃料として重要な「石油」,「石炭」,及び「天然ガス」についてデータを整理しながら考えてました.これらを見る限り,エネルギー資源として少なくとも今後,数10年程度は現在と同様に化石燃料が重要な役割を果たすものと予想できます.しかし,より長期的,例えば50年や100年後という時間スケールでは化石燃料の枯渇も念頭におかざるを得ません.

 これまで見てきたとおり日本の石油,石炭及び天然ガスの上位輸入国は以下のとおりで比較的良く分散されています.決して日本のエネルギー政策が無策ではないことが理解できます.

石油(上位3ヶ国で約60%)

アラブ首長国連邦
サウジアラビア
イラン

石炭(上位3ヶ国で約75%)

オーストラリア
カナダ
中国

天然ガス(上位3ヶ国で約65%)

インドネシア
マレーシア
オーストラリア

 また,新しいエネルギー資源として最近では「メタンハイドレート」と呼ぶ資源が注目されています.メタンハイドレートは,水とガスからできている氷のような固体で,それ自身の体積の170倍ものガスを含んでいるそうです.世界中の海底に存在し,そのエネルギー量は今まで見つかっている石油や石炭,天然ガスの合計よりも多いと言われています.まだ,実際に採取されている訳ではありませんが,将来のエネルギー資源として非常に興味深いものです.

 今後のエネルギー問題を考える際には,「資源供給」面での制約とともに「環境への影響」面で制約がより重要な課題となるのかもしれません.温室効果ガスの低減が将来どうなるかは予想もできませんが,理想的なエネルギー源とは,「資源供給」と「環境への影響」の両面の問題を同時に解決できる方法ということは明らかなようです.このようなエネルギー源が本当にあり得るのかどうかをこれから考えてみたいと思います.

[文責:スリー・アール 菅井弘]

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