No.102:風力発電(第2回)

風力発電(その2)

No.101:風力発電(第1回)

風力発電(その1)

No.100:年始のご挨拶(2006年)

「年始にあたって」

No.099:水素エネルギー・燃料電池(その4)

燃料電池

No.098:水素エネルギー・燃料電池(その3)

水素の製造

No.097:水素エネルギー・燃料電池(その2)

水素エネルギーの位置づけ

No.096:水素エネルギー・燃料電池(その1)

水素生産および需要の現状

No.095:バイオマス(第7回)

バイオマス利活用例(3)

No.094:バイオマス(第6回)

バイオマス利活用例(2)

No.093:バイオマス(第5回)

バイオマス利活用例(1)

No. 019 update 2002.06.01 PDF版(18.2 kbyte)

エネルギー(第3回)

石炭

 今回は,「石炭」について考えてみたいと思います.
 石炭と言うと過去のエネルギー資源のような印象を受けますが,世界の一次エネルギーの約1/4を担う重要なエネルギー資源であることにまず驚きます.

 日本においても一次エネルギーの20%を供給しています.日常生活の中で石炭を目にすることも少なくなっているため意識されることも多くはありませんが,想像以上に重要性の高いものであることを十分理解しておく必要がありそうです.

世界の一次エネルギー構成

         石炭  石油  LNG    その他(%)

日本       19.3  49.6  13.4  17.7
アジア・太平洋  40.3    41.2    11.1     7.4
アフリカ     33.3    43.3    19.6     3.7
中東        1.9   54.0    43.9     0.2
ヨーロッパ    19.1    41.4    22.7    16.8
旧ソ連      19.1    18.9    53.8     8.3
北米       22.7    40.4    26.2    10.7
中南米       5.4   58.8    22.5    13.4

世界(平均)   25.0    40.0    24.7    10.3

(出典:BP Amoco Statistical Review of World Energy 2001)


 このようにエネルギー源として重要な石炭ですが,資源としてはオーストラリア,東欧・旧ソ連,アメリカ,中国等の国々に偏在しています.

世界の石炭埋蔵量(2000)と生産量

           2000年可採埋蔵量 1999年生産量
           (単位:10億トン) (単位:百万トン)

日本              1                4
中国            115        1029
インド            75           290
オーストラリア       905              285
その他アジア・オセアニア  127              173
西欧             91            101
東欧・旧ソ連        261              427
南アフリカ          55              224
その他アフリカ・中東      6           7
アメリカ          247         91
カナダ             9               37
その他アメリカ              230               59

(出典:石炭エネルギーセンターホームページ http://www.jcoal.or.jp/)


 日本でも過去においては国内炭の生産がある程度の規模で行われていましたが,生産量は年々減少してきました.一方,石炭の輸入量は増加傾向が続いたことから,輸入依存度は1996年度実績で96.0%に達しています.ちなみに輸入炭の半分以上はオーストラリアからとなっています.

国内炭生産量の推移

    国内炭生産量(千トン)

1972  26,979
1975  18,597
1980  18,095
1985  16,454
1990   7,980
1995   6,317
1999   3,900 

(出典:石炭エネルギーセンターホームページ http://www.jcoal.or.jp/)


日本の石炭国別輸入割合(1996年度)

                  輸入量(千トン)  割合(%)

オーストラリア  64,702     51.6
カナダ      17,605     14.0
中国       11,586      9.2
インドネシア    9,386      7.5
アメリカ      9,040         7.2
南アフリカ     5,841      4.7    
その他       7,161           5.7
合計       125,322

(出典:エネルギー生産・需要統計)


 ところで,石炭は火力発電所の燃料として利用されていますが,その重要性は年々増大しているようです.


主要国の電源別発電電力量の構成 

          石炭 原子力  LNG 石油 水力他

日本   1973年   8    2   2    73    15
     1996年  18   30    20    21    10
     1999年  17    34  26   11    12 
     2004年  21    32  24   11    11 (見込み)
     2009年  22    36  22    9   11 (見込み)

アメリカ 1973年  46     5   19    17    13
     1996年  53    20    13     3     3

フランス 1973年  19    8   6    27    40
     1996年  6    78     1     2    13

ドイツ  1973年  69     3  11    12     5
     1996年  55    29     9     1     6
  
イギリス 1973年  62    10   1    26     1
     1996年  42    27    24     4     3

出典:OECD/IEA「ENERGY BALANCES OF OECD COUNTRIES(1995-96)」
   日本の2004年および2009年見込みは電気事業連合会ホームページ


 発電における利用拡大の理由としては,石炭が低価格であるとともに埋蔵量が豊富であることが考えられます.例えば1980年から2000年までのカロリー当りの価格は石炭が化石燃料中では最も安く,かつ安定していることがデータから理解できます.


日本におけるエネルギー別カロリー当りのCIF価格(¢/1,000kcal)

     LPG   LNG   原油  石炭

1980   1.6     2.2     2.4     0.9
1985      2.0     2.0     1.9     0.8
1990      1.5     1.5     1.5     0.8      
1995      1.8     1.4     1.3     0.7
1999      2.0     1.4     1.4     0.5
2000   2.9   1.9   1.9     0.5

(出典:IEEJ、EDMC編 「エネルギー・経済統計要覧2002 年版」)
ちなみにCIF価格とは Cost=FOB価格,Insurance=保険料,Freight=運賃の三要素から構成される価格のことです.


 可採年数も石油の43年と比較すると5倍以上であり,当面,資源供給面での不安は少ない状況にあります.

確認可採埋蔵量  10,316億トン 
年生産量        44.7億トン
可採年数         全世界 231年

(出典:世界エネルギー会議(1995年10月開催))


 一方,石炭の利用における問題点は,大気へのCO2の排出と硫黄酸化物及び窒素酸化物の排出と考えられます.CO2排出については,単位発熱量当りのCO2排出係数が原油やLNGよりも高い値となっています.最近,国内でLNG利用が推進されている理由もCO2排出係数が低いためと考えることができます.


化石燃料の単位発熱量あたりのCO2排出係数

       単位量あたり総発熱量 CO2排出係数
                                   (CO2kg/Gcal)

原料炭(輸入)  7600 kcal/kg     363
一般炭(輸入)  6074 kcal/kg     379
原油      9250 kcal/l      286
LNG           13000 kcal/kg          207

(注:Gcalはギガカロリーの意味で1Gcal=10^9cal=10^6kcalとなります)


 また,石炭を燃やすと酸性雨(pH5.6以下の酸性度を示す雨)の原因となる硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)が発生します.これらは石炭以外に石油等を燃焼させても発生しますが,特に発電のための燃焼では硫黄酸化物が多く発生し,自動車の利用では窒素酸化物が多く発生するようです.


各国の硫黄酸化物と窒素酸化物排出量

        硫黄酸化物  窒素酸化物    年
       (万t)     (万t)
旧ソ連      2500      --          1989  
米国        2073      1876        1991  
中国         1795           600        1993  
英国          357           275        1991  
旧西ドイツ     94           261        1990  
旧東ドイツ    476            63        1990  
韓国          160            88        1991  
日本           88           130        1989  

(出典:団藤保晴氏の「インターネットで読み解く」)


 日本では石炭は過去の「エネルギー資源」と考えられがちですが,実態は石油と並んで極めて重要な「エネルギー資源」として再認識することが重要と考えます.特に資源として比較的豊富である点は魅力です.しかし,「地球温暖化」との兼ね合いを考えると利用の拡大もままならず,「エネルギー問題」の難しさを痛感します.

 話はかわりますが,石炭は固体であるため扱い難いという欠点があります.エネルギー資源の中でもっとも使い勝手が良いのは液体状の「石油」であると考えられます.今回は触れませんが石炭液化やガス化については様々な技術開発が行われており,使い勝手の改善も不可能ではありません.いずれにしても「石炭」は「石油」に次ぐ基盤資源の一つと捉えることができそうです.

 一方,石炭採掘現場の苦労も忘れてならないように思います.国内では炭鉱の多くが閉山したため,炭鉱災害も激減し,ニュースで報道されることもほとんどないようです.しかし,例えば中国では炭鉱での災害により1998年だけで1,463人の死者が出ていると報告されています.このようにエネルギー資源の採掘は常に大きな犠牲の上に成立っています.

 これは石炭に限ったことではなく,あらゆるエネルギーや工業資源の確保に共通する問題です.天然資源の大部分を海外依存している限り,日本は資源輸出国に大きなリスクを転嫁していることを忘れてはならないと思います.

[文責:スリー・アール 菅井弘]

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