No.012:30年間の変化(第9回)

交通

No.011:30年間の変化(第8回)

再生可能エネルギー

No.010:30年間の変化(第7回)

電力

No.009:30年間の変化(第6回)

エネルギー

No.008:30年間の変化(第5回)

経済

No.007:30年間の変化(第4回)

工業製品

No.006:30年間の変化(第3回)

食料

No.005:30年間の変化(第2回)

No.004:30年間の変化(第1回)

No.003:将来の社会像(第2回)

将来の社会像(第2回)

No. 015 update 2002.04.01 PDF版(17.1 kbyte)

30年間の変化(第12回)

情報

 今回は30年間の変化(第12回)として「情報」について考えてみたいと思います.

  情報について調べてみると東洋大学・三上俊二氏の「情報環境論」(http://sophy.asaka.toyo.ac.jp/users/mikami/kankyo99/)が参考になりました.結局,情報に関する普遍的な定義というものはなく,様々な解釈があるようです.その一例として以下のようなものが示されていました.

・情報とはわれわれが外界に対して自己を調節し,かつその調節行動によって外界に影響を及ぼしていく際に外界との間に交換されるものの内容を指す言葉である(ノバート・ ウィーナー) 
・最広義の情報とは,物質−エネルギーの時間的・空間的,定性的・定量的なパターンのことである(吉田民人)
・情報とは環境からの刺激である(加藤秀俊) 
・情報とは,可能性の選択指定作用をともなうことがらの知らせである(林雄二郎) 
・情報とは人間と人間との間で伝達される一切の記号の系列を意味する(梅棹忠夫) 
・情報とは特定の状況における価値が評価されたデータである(マクドノウ) 
・情報とは不確実性を減らす働きをするものである(クロード・シャノン) 
・微少のエネルギーで複製が可能であり,かつ,複製されたのちもなお元と同一の状態を保つようなものについて,その複製された内容である(野口悠紀雄)

 結局のところ「情報」の意味するところがわかったようなわからないような,という感じです.「情報」とは何らかの伝達される「内容」,「刺激」,「知らせ」,「記号の系列」,「データ」等を意味するようですが,日常生活では「情報」の中身をそれほど意識していないように思います.どちらかと言えば「情報」を伝える媒体となる「情報メディア」として身近なものとなっているように思います.

 例えば「情報」を「通信」により伝える「情報通信産業」と言えばイメージ化しやすくなります.そこで,この情報通信産業と位置付けられる業界の1980年以降の生産額推移データを示します.ちなみに平成10年度における情報通信産業の実質国内生産額は112.9兆円となり,全産業に占めるシェアは12.5%にまで成長しているそうです.
    
     生産額(兆円)        全産業に占める比率(%)

1980年  31.6            5.4
1985年  52.8            7.7
1990年   80.6                 9.3
1995年  96.3         11.0
1998年  112.9(1980年の3.6倍) 12.5

(出典:平成10年度情報流通センサス(郵政省))

 また,情報流通量というのがいくつかの特性に分けて定義されています.原発信情報量とは,流通した情報量のうち,オリジナルな(複製や繰り返しを除いたもとの)情報の総量を意味し,電話やテレビ,インターネットなどのさまざまなメディアから発信された情報量という定義になっています. また,消費情報量とは,情報の消費者が実際に受け取り,消費した情報の総量を意味し,個人が見聞きして消費した情報量という定義になっています.

     原発信情報量 消費情報量

1988年  100      100
1989年  113         107
1990年  128           112
1991年  137           115
1992年  145           118
1993年  157           123
1994年  174           128
1995年  227           156
1996年  316           172
1997年  396           197
1998年  479           223

*昭和63年を100とした指数

(出典:平成10年度情報流通センサス(郵政省))

 この10年間でメディアから発信された情報量は5倍近くになっています.特に1995年あたりから急速に増加していますが,これはモバイル通信(携帯電話やPHSなどの携帯できる小型の情報機器を利用した通信)やインターネットの拡大時期と一致しています.これに対し消費情報量の伸びは2倍強ということで,受け手が消費できる情報量には限りがあることが分かります.

       国内のモバイル通信契約数(万件)

1995年度末  1171
1996年度末  2691
1997年度末  3825
1998年度末  4731
1999年度末  5685
2005年度末  7903(予測) 

(出典:平成12年版通信白書(郵政省))


日本におけるインターネットの利用人口と普及率

       利用人口(万人) 企業普及率(%)

1995年度   −       11.7
1996年度   −       50.4
1997年度   1155      68.2
1998年度   1694      80.0
1999年度   2706      88.6

(出典:平成12年版通信白書(郵政省))


 ところで,本マガジンもインターネットがあればこそ発行できる訳ですが,インターネット自体の普及は極めて最近の出来事です.1995年度までは国内企業でさえ,約10%程度の普及率でしたが1996年度には50%に急拡大しています.考えてみますと30年前どころか,10年前にはほとんど国内に存在していなかったものがこの10年にも満たない短時間のうちに広がっています.アメリカでは大学や研究所間での通信網が1990年頃までにネットワーク化されました.

 一方,インターネットに繋がるすべてのサーバーのディスクにある文書が簡単に相互に閲覧,転送のリンクが可能になる様にURL(共通の文書名の表記)とHTML(共通の書式)とHTTP(転送する為のプロトコル)を考案,自作プログラム「WWW」を開発,そしてこの構想(仕組み)自体をWWW(World Wide Web)と名づけたのはスイスのティム・バーナーズ・リー氏で,1992年頃の出来事です.このWWWにアメリカの学生たちが共感し,次第に現在のようなブラウザとして完成され,インターネットが私たちに身近なものとなってきました(出典:インターネットの歴史 http://hp.vector.co.jp/authors/VA008237/f9.htm ).

世界のインターネット利用者数の推移(百万人)

1990年    2.6
1991年    4.4    
1992年    6.9
1993年    9.4
1994年    16
1995年    34
1996年    56
1997年    92
1998年    145
1999年    257

(出典:ITU Telecommunication Indicators)


 インターネットの開発経緯を考えるとインターネットがアメリカ主導で世界に普及したことは明らかで,これはホスト数にも顕著に現われています.

インターネットホスト数シェア(2001年1月)

第1位  アメリカ  73.4%
第2位  日本    3.6%
第3位  イギリス  2.6%
第4位  ドイツ   2.4%
第5位  カナダ   2.3%

(出典:平成12年版通信白書(郵政省))

 ホスト数では断然アメリカが多いのですが,人口普及率では北欧諸国が高く,逆に「ドイツ」や「フランス」が上位にいないのが驚きでした.

世界各国のインターネット人口普及率(2000年2月)

第 1位  アイスランド  45.0%
第 2位  スウェーデン  44.3%
第 3位  カナダ     42.3%
第 4位  ノルウェー   41.3%
第 5位  アメリカ    39.4%
第 6位    オーストラリア 36.4%
第 7位  デンマーク   34.0%
第 8位  フィンランド  32.0%
第 9位  オランダ    24.0%
第10位  イギリス    23.7%
第11位  スロベニア   23.0%
第12位  台湾      21.7%
第13位  日本      21.4%
第14位  韓国      21.3%
第15位  ベルギー    19.6% 

(出典:平成12年版通信白書(郵政省))


 「情報化時代」と呼ばれる現代社会において国内に流通する情報量は飛躍的に増加しているようです.また,海外情報は日本でも入手が容易になってきました.このような豊富な情報の中から本当に有用な情報は何かを見極める作業が現代社会では不可欠なように感じます.

 現在のような閉塞感の漂う時代には「情報」に対して「正確さ」よりも「刺激」を求める傾向があるように思えてなりません.「刺激」による爽快感は何となく理解できますが,不確かな「情報」に基づく「判断」は非常に危険と感じます.各個人が様々なメディアを通じて「情報」を入手し,その根拠を十分に確認した上で自らの判断材料とすることが非常に重要になっているように感じます.

[文責:スリー・アール 菅井弘]

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