No.032:エネルギー(第16回)

燃料電池

No.031:エネルギー(第15回)

氷雪冷熱

No.030:エネルギー(第14回)

廃棄物燃料製造

No.029:エネルギー(第13回)

廃棄物熱利用

No.028:エネルギー(第12回)

太陽熱利用

No.027:エネルギー(第11回)

バイオマス

No.026:エネルギー(第10回)

廃棄物発電

No.025:エネルギー(第9回)

風力発電

No.024:エネルギー(第8回)

太陽光発電

No.023:エネルギー(第7回)

地熱発電

No. 013 update 2002.03.01 PDF版(19.5 kbyte)

30年間の変化(第10回)

廃棄物

 今回は30年間の変化(第10回)として「廃棄物」について考えてみたいと思います.

 廃棄物処理法では,「廃棄物とは,自ら利用したり他人に有償で譲り渡すことができないために不要になったもので,ごみ,粗大ごみ,燃えがら,汚泥,ふん尿などの汚物または不要物で,固形状または液状のもの」と定義されています.ただし,放射性物質及びこれに汚染されたものは別法律で規制されるため,ここからは除かれています.

 廃棄物は,大きく「一般廃棄物」と「産業廃棄物」の2つに区別されています.産業廃棄物は,事業活動に伴って生じた廃棄物のうち,法律で定められた19種類のものをいいます.一般廃棄物は産業廃棄物以外の廃棄物を指し,主に家庭から発生する家庭ごみとオフィスや飲食店から発生する事業系ごみと,し尿に分類されます.

 一般廃棄物の総排出量及び1人1日当たりの排出量は1985年前後から急激に増加しましたが,1990年以降はほぼ横這い傾向が続いています.ちなみに1996年度の日本における一般廃棄物の総排出量は約5,110万トンで,これは東京ドーム138杯分に相当するそうです.これは国民一人当たり約1kgを排出することに相当します.1975年以降の25年間で約1.2倍程度に増加していますが,増加率自体はアメリカを除く諸外国とほぼ同等です.


一般廃棄物の発生量推移(千トン)

    日本    アメリカ フランス イギリス  スウェーデン

1975年 42,180 116,200  14,330   16,000   2,400 
1980年 43,950 137,400   15,570    15,500    2,510
1985年 41,530  149,100   16,220    17,000    2,650
1990年  50,441  177,500   18,510    20,000    3,200
1995年 50,690
1996年 51,100

(出典:厚生省(厚生労働省)データ)


 一般廃棄物の発生量に関する諸外国との比較では,日本の発生量はフランス,イギリスの約2.5倍程度となっています.フランスの人口は約6,000万人,面積は日本の約1.5倍,イギリスの人口は約6,000万人,面積は日本の約2/3であり,日本の人口約12,000万人のほぼ半分です.したがって,目標として適切かどうかはわかりませんが欧州並を目指すならば現状の発生量から約20%程度削減する必要があります.この数字は日本の1975年から1985年までの実績と同程度ですので決して無理な数字ではないように思います.ちなみにアメリカは世界一のゴミ発生国で人口約28,000万人を考慮しても一人当りの発生量は日本の1.5倍程度となっています.

 次に,発生した一般廃棄物の処理方法について考えてみます.日本では焼却処理が中心になっており,世界一高い焼却率になっています.また,焼却施設数に至っては諸外国と比較してまさに桁違いの数の施設を有しています.最近,話題となっている焼却施設からのダイオキシン発生問題もこれだけ多数の焼却施設を抱えていると対策の実行は容易ではないかもしれません.

 これらは行政制度の問題とも密接に関係しているため,国内全体の廃棄物行政を見直さない限り解決できない問題なのかもしれません.ちなみに焼却処理以外の方法としては,「焼却以外の中間処理」あるいは「埋立て」があります.焼却以外の中間処理施設としては粗大ごみを処理(破砕,圧縮など)する施設(粗大ごみ処理施設),資源化を行うための施設(資源化施設),堆肥を作る施設(高速堆肥化施設)などがあります.


各国の都市ゴミ(一般産業廃棄物)焼却率(%)

日本(1993)      73
デンマーク(1995)   56
フランス(1993)    49
スウェーデン(1994)  41
旧西ドイツ(1990)   28
オランダ(1994)    26
アメリカ(1994)    16
イギリス(1990)    13

(出典:OECD Environmental Data 1997,p.157)


各国のゴミ(一般産業廃棄物)焼却実態

         焼却施設数  発生量     焼却量 

日本      1,854    50,300     38,000
アメリカ      148     207,000     32,900
カナダ        17    23,200      1,200
ドイツ       53      43,500     11,000
オランダ      11      12,000      2,800
スウェーデン    21      32,000      1,700
                               (千トン/年)

(出典:法研「ダイオキシン汚染」) 


 次に産業廃棄物について考えてみたいと思います.まず,産業廃棄物の発生量推移は以下のとおりです.約25年前と比べて約1.7倍に増加しています.これは,一般廃棄物の発生量増加と比べても格段に大きいとともに,発生量自体が一般廃棄物より一桁多い状況にあります.


産業廃棄物の発生量推移(万トン)

1975年 23,600
1980年 29,200
1985年 31,200
1990年 39,500
1991年 39,200
1992年 40,300
1993年 39,700
1994年 40,500
1995年 39,400
1996年 40,500
(出典:厚生省データ)


ところで先述の法律で定められている19種類の産業廃棄物は以下のとおりです.

燃え殻 
汚泥 
廃油
廃酸
廃アルカリ 
廃プラステック類 
紙くず
木くず
繊維くず
動物性残さ
ゴムくず 
ガラス及び陶磁器くず
鉱さい 
がれき類 
動物のふん尿 
動物の死体
ばいじん類 
上記産業廃棄物を処分するために処理したもの

 産業廃棄物の排出量を業種別でみると,排出量の最も多い業種が電気・ガス・熱供給・水道業(下水道業を含む)です.次いで建設業,農業,パルプ・紙・紙加工品製造業,鉄鋼業,鉱業と続き,この上位6業種で総排出量の約8割を占めています.また,産業廃棄物の排出量を種類別では,汚泥の排出量が最も多く,全体の半分近くに達します.次に,動物のふん尿,がれき類の順で,これらの上位3種類の排出量は総排出量の8割に相当します.

 また,最近25年間で一般産業廃棄物及び産業廃棄物の発生量はそれぞれ約1.2及び1.7倍に増加しました.一般産業廃棄物については努力次第でこの25年間の増加分を削減できる可能性があります.一方産業廃棄物については増加幅が大きいことや生産活動に密接に結び付いているため削減にはかなりの努力が必要と思われます.

 ところで,一般廃棄物,産業廃棄物の区別なく発生した廃棄物のうち可燃性の廃棄物は,焼却処理を行うことで減量化が行われる一方,焼却残さや排ガス・排水処理による廃棄物が発生します.これらの廃棄物や焼却処理されない不燃性廃棄物は,最終的に廃棄物処分場へと運ばれ,埋立てられます.

 廃棄物処分場は,遮断型処分地,管理型処分地,安定型処分地の3タイプがあります.遮断型の場合は,屋根・覆いによって雨水の浸入を防止し,さらに腐食しない強固な外周仕切り構造によって地下水の浸入や廃棄物に含まれる汚水の漏出を防止する構造となっています.したがって適正な管理が行われている限り,有害な浸出水の漏洩などによる環境への影響はほとんどないと言われています.

 一方,管理型や安定型処分地は,雨水などによって廃棄物からの浸出水が排出され,環境を汚染する可能性が指摘されています.ある意味で放射性元素のような半減期に従って毒性が時間とともに低下する廃棄物と異なり,永久に廃棄物の有害性が継続するこれらの廃棄物は永久管理が原則です.しかし,実際には放射性廃棄物の後始末と比較して極めて安易に扱われているようにも思えます.

 最近,これら最終処分場の容量が残り少なくなっていることが大きな問題となっています.以下に最終処分場の残余容量と残余年数に関するデータを示します.

最終処分場残余容量(1999年4月1日現在)

                                       (単位:m3)  
遮断型処分場                 35,005     (39,527)
安定型処分場 総数        84,119,823 (83,548,305)
管理型処分場 総数    106,157,029(127,471,435)
       内海面埋立 36,524,517 (37,412,740)
計            190,311,857(211,059,267)
              ( )内数字は1998年度

(出典:産業廃棄物行政組織等調査(1999年4月1日現在))


 なお,1999年4月時点での最終処分場の残余容量は約19,031万m3であり,1998年度と比較し2,075万m3(約10%)減少しています.


最終処分場の残余年数(1999年4月1日現在)

区分   最終処分量(万t)   残余容量(万m3)  残余年数(年)

首都圏 1,769(1,923)      1,380( 1,519)    0.8(0.8)
近畿圏  806( 985)      1,540( 3,015)    1.9(3.1) 
全国  5,800(6,700)     19,031(21,106)    3.3(3.2)
              ( )内数字は1998年度

(出典:産業廃棄物行政組織等調査(1999年4月1日現在))


 なお,1998年度の最終処分量及び1999年4月1日現在の最終処分場の残余容量から最終処分場の残余年数を推計すると,全国では3.3年,首都圏では0.8年と厳しい状況にあります.


 最後に,廃棄物処分場や焼却施設の設置に伴って起こる反対運動について考えてみたいと思います.いわゆる迷惑施設に対する反対運動は国内に限ったことではなく,欧米でも地域住民にとって望ましくないと考える公共施設の建設に反対する事例が多数あります.このような反対運動は,今日では一般に「NIMBY : Not In My Back Yard(私の近くには困る)」と称されています. 

 「NUMBY」という言葉は,施設立地の社会的必要性は認めるとしても自分の近隣には来てほしくないという住民感情を指すものと言われています.これには迷惑施設の立地に直面した地域住民グループが示す地域擁護の姿勢や,迷惑施設に反対する運動なども含まれます.この種の迷惑施設としては,犯罪者の社会復帰施設,廃棄物処理及び処分施設,原子力施設等が挙げられています. 

 日本における迷惑施設の建設では,立場の強い者や声の大きい者の意見が通り,最終的には弱いところにしわ寄せして解決してきたようにも思えます.しかし,最近は反対運動の盛り上がりで処理施設や処分施設建設が中止に至る事例も見られます.これは大きな変化として注目できますが,特定施設の建設中止が本質的な問題の解決になる訳ではありません.

 社会全体から見れば自分たちで自分たちの首を絞めることになりかねません.人間が生活し廃棄物を発生する限り廃棄物処理施設や処分場がどこかに建設できなければ明らかに廃棄物処理処分行政は破綻します.これらの問題の解決は容易ではありませんが,避けては通れない問題ですから幅広い視野で冷静な議論が必要と考えます.

[文責:スリー・アール 菅井弘]

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