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No.012:30年間の変化(第9回)
交通
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No.011:30年間の変化(第8回)
再生可能エネルギー
No.010:30年間の変化(第7回)
電力
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No.009:30年間の変化(第6回)
エネルギー
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No.008:30年間の変化(第5回)
経済
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No.007:30年間の変化(第4回)
工業製品
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No.006:30年間の変化(第3回)
食料
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No.005:30年間の変化(第2回)
水
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No.004:30年間の変化(第1回)
人
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No.003:将来の社会像(第2回)
将来の社会像(第2回)
No. 010 update 2002.01.15 PDF版(17.3 kbyte)
今回は30年間の変化(第7回)として「電力」について考えてみたいと思います.まず,1973年から最近までの主要国の電源別発電電力量の構成変化を以下に示します. 原子力 LNG 石炭 石油 水力他日 1973年 2 2 8 73 15 1996年 30 20 18 21 10 1999年 34 26 17 11 12 2004年 32 24 21 11 11 (見込み) 2009年 36 22 22 9 11 (見込み) 米 1973年 5 19 46 17 13 1996年 20 13 53 3 3仏 1973年 8 6 19 27 40 1996年 78 1 6 2 13独 1973年 3 11 69 12 5 1996年 29 9 55 1 6 英 1973年 10 1 62 26 1 1996年 27 24 42 4 3出典:OECD/IEA「ENERGY BALANCES OF OECD COUNTRIES (1995-96)」 日本の2004年および2009年見込みは電気事業連合会ホームページ 個人的には各国の台所事情が覗え興味深く感じました.まず,日本については石油依存度が1973年と比べ最近では50%以上も低下していることが際立ちます.そして石油依存の低下には原子力,天然ガス,石炭の順に貢献していることがわかります.日本のエネルギー政策は無策であると言われことがありますが,少なくとも供給源の分散という点では石油ショック以降大幅に改善されているように感じました. 海外の例で際立つのはフランスの80%近い原子力依存率とアメリカ,ドイツの50%を越える石炭依存率です.またいずれの国も石油依存率を数%台まで削減していることは知りませんでした.規模が小さいと言えども自国に北海油田を有するイギリスの石油依存率の低さはある意味で驚異です. すでに大幅な削減を成し遂げた日本の石油依存率については今も低減努力が続けられているようです.一方,原子力依存率について見るとフランスを例外とすれば全て20〜30%台といったところです.ただ,日本では今後30%台半ばまで上昇することが見込まれています. またあまり話題になりませんが,海外における石炭依存率は想像以上に大きいと感じました.これは石炭が世界中に広く分布しかつ豊富で,供給の安定性を有しており,化石燃料の中で最も経済的に優れていると言われていることが原因と考えられます.一方,石炭は酸性雨等の環境問題を誘発する可能性もあります. 日本でも石炭,特に安価で豊富な海外炭の利用により原子力に次ぐベース電源として石炭火力発電の開発が進められています.これら石炭の輸入先はオーストラリアが約60%と過半数を占め,カナダ,インドネシア,中国などがこれに続いています. 次に日本国内における販売電力量の推移と見通し[10電力計]を以下に示します. 販売電力量(億kWh)1965年度 1,440 1975年度 3,4901985年度 5,2191995年度 7,5701999年度 8,169※1995年度は9電力計 日本電気事業連合会によると今後の日本の電力消費は,高度成長期のように前年度比10%というような大幅な伸びではなく,2%弱の伸びで推移するものと予想されています.また最近の電力需要見通しによると,10電力合計で2009年度の販売電力量は9,723億kWhで1998〜2009年の年平均伸び率は1.8%と見込まれています. 電気料金については様々な数値が示されておりどのデータを信頼して良いのかよくわかりません.様々な算出方法があることや,それぞれの立場があり中立的な立場での議論がほとんどなされていないためと思います.ここでは若狭連帯行動ネットワークのホームページに掲載されていたデータを以下に示します. 電気料金の国際比較(1998.12[円/kWh],上段:為替レート換算,下段:購買力平価換算) 日本 米国 イギリス ドイツ フランス家庭用 23.95(100) 19.62( 82) 16.87( 70) 18.96(79) 17.94(75)電灯 23.95(100) 28.24(118) 21.52( 90) 22.62(94) 22.34(93)産業用 13.65(100) 10.29( 75) 11.04( 81) 10.62(78) 8.73(64)電力 13.65(100) 14.82(109) 14.08(103) 12.67(93) 10.87(80)為替レート(1998年12月) 117.41円/$ 195.75円/£ 70.13円/マルク 20.91円/フラン購買力平価(OECD1997年) 169.00 249.63 83.66 26.04 注)家庭用は280kWh/月のモデルをもとに1kWh当たり単価を算出,対象企業は,日本=東京電力,米=コン・エジソン社(NY),英=ロンドン・エレクトロシティ社,独=RWE社,仏=EDF社.産業用は,契約電力4000kW,年稼働時間4000時間のモデルで1kWh単価を算出,対象企業は日本=東京電力,米=コン・エジソン社(NY),英,独,仏はユニペデ(国際発送電事業者連盟)報告書による. 為替レート換算では日本の電気料金は2〜3割程度欧米諸国に比べて割高ということになります.一方,購買力平価で比較するとほぼ同等ということになります.購買力平価とは,日米の関係で言うと日本国内の円建ての物価水準とアメリカ国内でのドル建ての物価水準が等しくなる通貨の換算率のことを意味します. アメリカで1ドルで買える商品を日本で買う場合,いくらするかということです.たとえば日本で1500円する商品がアメリカでは10ドルなら,両都市の購買力が等しくなる1ドル=150円をこの商品の購買力平価と言うそうです. 別に電力会社さんの肩を持つわけではありませんが,購買力平価でほとんど差がないということは「国際化」されていない商品やサービスは電気料金に限らず2〜3割程度高いと考えてよいのかもしれません. 一方で,比較方法によっては上記以上の国内外価格差があるとの報告もあります.市場の「国際化」が叫ばれている現在,電気料金に限らずいわゆるこの内外価格差を解消することが貿易立国を目指すのであれば最小限の条件とも言えます.「電力自由化」もこの内外価格差を解消するという観点から見て自然の成り行きと考えられます. 最後に少し違った観点から「電力」について考えてみたいと思います.1977年,アメリカのエネルギー学者エイモリ・ロビンスは「ソフト・エネルギー・パス」という論文を発表し,世界で大きな反響を巻き起こしました.20年近く前に私もこの本を読んで共感するところが多々ありました. 私の理解が正しいかどうかはわかりませんが「ソフト・エネルギー・パス」では,「エネルギーの需要(デマンド)面から見た適正配分」と「再生可能エネルギーの導入」が2大テーマでありました.日本ではもっぱら「再生可能エネルギーの導入」ばかりが強調されますが,この需要側すなわち「デマンドサイド」の概念が本当はより重要なテーマと思えてなりません. 「電力」を考える上でこの「デマンドサイド」の概念は特に重要と思います.様々な方法で得た熱エネルギーを電気エネルギーに変換する際に生じるロスは非常に大きいものです(石油,石炭,天然ガス,ウラン等を利用して得た熱ネルギーを電気エネルギーへ変換する際の効率は高々30〜40%程度で,残りは廃熱として廃棄されます).すなわち電力は極めて付加価値の高いエネルギーと言えます.このようなエネルギーを再び熱エネルギーに変えて暖房に用いるのは非常に効率の悪い利用方法と言えます. もちろん変換効率上の問題を解消するための技術開発がなされています.ただ,これらの技術的な改善努力とは別に「デマンドサイド」に立ったエネルギーの適化が重要な課題と思います. これは技術というよりもシステムとしての問題であり,一個人や一企業として取組むには限界があります.できるだけ効率的なエネルギー利用ができる社会システムとする努力,例えば地域単位で熱エネルギー供給を考える等のこれまでにない取組みが必要と考えます. 「構造改革」の対象となっている制度や規制のようなハードを伴わない見直しは比較的短期的に変更できる可能性はあります.一方で,大規模かつ革新的なハードウェアの構築を伴うシステムの変革にはお金と時間を要します. 今,私たちができるとすれば30年から50年先を見据えた目標となる社会システムのイメージ化とそのような社会を構築するために今後とるべき行動内容の具体化のように思います.そして,今後は単なる投資のための投資ではなく,私たちの幸福に役立つような価値あるハードウェアへの計画的かつ継続的な投資が不可欠と考えます. 日本の現状ではそんな先のことを考えている余裕はないかもしれませんが,30年後というのはそれほど先のことではありません.私個人の感覚では30年前はほんのちょっと昔くらいに思えます.明るい話題の少ない昨今ですが,せめて明るい30年後の未来を描けないものかと思います.
[文責:スリー・アール 菅井弘]
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