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No.052：環境(第1回)
はじめに
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No.051：エネルギー(第35回)
海洋温度差発電
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No.050：エネルギー(第34回)
エジプト
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スウェーデン
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No.044：エネルギー(第28回)
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ドイツ
No. 009 update 2002.01.03 PDF版(12.3 kbyte)
５回にわたり３０年間の変化について異なった側面から考えてきました．一言で表現すれば｢経済｣は大きく発展し，この面から言えば間違いなく日本社会は豊かになっています．一方，この３０年間，余りに全体を省みることなくひたすら｢経済成長｣を合言葉につき進んできた事実も覗えます．将来を考える時，これまで通りのやり方で走り続ける方法もありますが，一度立ち止まって考えることも重要という気がします． さて，今回は３０年間の変化(第６回)として｢エネルギー｣について考えてみたいと思います． ところで，エネルギーとは何でしょうか？エネルギーの語源はギリシャ語で，"仕事"という意味の言葉ですが，これは１８０７年にイギリスの有名な医師で物理学者でもあったトマス・ヤングが提案したものと言われています．彼は「エネルギーとは仕事をなしうる能力のことである」と定義しました．哲学的な表現ですが，なんとなく意味するところは感じられます． 現代社会では，エネルギーの定義はあまり意識することなく，何気なく利用しています．敢えてエネルギーとは何か，と問われれば明確に答えることは容易ではなく，石油，天然ガスや石炭，これらを燃やして得られる熱，その熱を変換して得ている電気，自動車を走らせるために利用されるガソリンや軽油をイメージするように思います． このように極めて生活と密接に関係のあるエネルギーですが，何となく漠然としています．そこで，私たちの身の回りのエネルギーを｢一次エネルギー｣と｢二次エネルギー｣に分けると理解し易いようです．一次エネルギーとはいろいろな形のエネルギーの出発となるもので正にエネルギーの"源"となるものです． 具体的には石油・石炭・天然ガス等の化石燃料，原子力の燃料であるウラン，水力・太陽・地熱等の自然エネルギー等自然から直接得られるエネルギーのことです．一方，電気・ガソリン・都市ガス等の一次エネルギーを変換や加工して得られるエネルギーが二次エネルギーです． この他，今話題の「新エネルギー」と呼ばれるものがあります．例えば「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法」で以下のように位置付けられています．�＼侈�代替エネルギーを製造，発生，利用すること等のうち，��経済性の面での制約から普及が進展しておらず，かつ，��石油代替エネルギーの促進に特に寄与するものそして，この新エネルギー利用等の具体的な対象となるものは，新エネ法の政令で以下のとおり特定されています．供給サイドの新エネルギー・太陽光発電・風力発電・廃棄物発電・バイオマスエネルギー・太陽熱利用・廃棄物熱利用・廃棄物燃料製造・未利用エネルギー需要サイドの新エネルギー・燃料電池・天然ガスコージェネレーション・クリーンエネルギー自動車 ２００１年６月にとりまとめられた総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会の「今後の新エネルギー対策のあり方について」と題する報告書(http://www.meti.go.jp/report/data/g10705aj.html)で，バイオマス及び雪氷冷熱を新エネルギーとして追加する必要があるという提言がなされています．このように新エネルギーと言っても様々な形態があります． ここで忘れてならないことがあります．現在の社会では石油・石炭・天然ガス等の化石燃料，特に石油が社会の基盤になっていることです．これらを消費することなく原子力発電，太陽光発電，風力発電等に用いる機器を製造することはできません．あらゆる意味で石油を中心とする化石燃料がエネルギーの根源です．これらを如何に有効かつ長期的に利用するかが最大の課題です． 日本は従来から(一次)エネルギーの大部分を海外に依存しています．ただ，過去の二度にわたる石油危機等を背景に，需要面においては，産業部門を中心にエネルギー利用の高効率化，供給面においては，エネルギー源の多様化，原油の自主開発等の安定供給源の確保（現在原油輸入量の１５％程度）等の対策に取組んできました．この結果，全体的にみれば石油依存度が第１次石油危機の１９７３年に７７％であったものが最近では５０％台前半まで減少しており，この減少分を天然ガス，原子力が補う形になっています． 表 主要先進国におけるエネルギー供給構造の比較（１９９５年） 日本 米 独 仏 英 輸入依存度(%) 79.9 21.0 59.8 48.8 ▲14.7 石油依存度(%) 53.6 39.0 36.7 35.8 36.5 石油輸入依存度(%) 99.7 52.1 97.5 97.2 ▲58.6 出典:IEA, Energy Balances(1995〜96) このような努力にも拘わらず日本の石油依存度は未だに５０％を越えており，３０％台の欧米諸国と比べ高い水準にあります．将来のエネルギー源の選択を考えるに当ってはこのようなマクロ的な視点での考慮も不可欠と考えます．エネルギー供給源の中で廃止論もある原子力ですが２０００年時点で日本におけるエネルギー供給率として約１５％を占めています． これを即時全廃するとすれば現時点で直ちに自然エネルギーへ転換することは技術的，経済的に容易ではなく，現実には石油と天然ガスへの依存を高めることで補うことになります．このような選択は決して不可能ではありませんが石油依存度が再び６０％以上になることは明白です．現時点で言えるのは原子力の利用に伴う事故のリスクは確かにありますが，利用しない場合に生じる別のリスクもあると言うことです． 国としてのエネルギー源の選択に際しては本質的な問題を十分に議論する必要があると考えます．過去において，この種の根本的な問題について政府が国民に問いかけることも，国民が政府に強く議論を求めることもなかったように思います．なんとなく曖昧にしておく方は都合が良かったようにも見えます．都合が悪くなったらみんなの責任として曖昧に処理できますから．｢政府｣は何も考えていないと批判しがちですが，自ら意思表示しなかったことを反省し，今後何らかの行動を起こすべきはサイレント・マジョリティと言われる大多数の｢私｣たち自身であるのかもしれません． 余談ですが自分自身の意思を示すと必ず批判を受けます．賛否両論となっている話題では特にこの傾向が強くなります．ネット上では特に顔が見えないという安心感と匿名性からか，対面では絶対に言えそうにない中傷も平気で言うことができます．一方，お会いしたこともない方から心のこもったメールをいただく場合もあります．たとえネット上と言えども冷静な議論にはお互いの人格を尊重するとともに，｢発言者｣と｢発言内容｣を明確に区別することが最小限の前提となるように思います． 次に，１９７０年以降のエネルギー消費の変遷について考えてみます．以下に日本を始めとする５カ国の一次エネルギー消費量と一人当たりの一次エネルギー消費量の変化を示しました．一次エネルギー消費(石油換算百万トン) 日本 アメリカ1973年 324 1,736 1985年 367 1,782 1998年 510(1.57) 2,182(1.26) ドイツ イギリス フランス1973年 338 221 1771985年 361 204 2001998年 345(1.02) 233(1.05) 256(1.45)※( )内数字は１９７３年を基準にした比一人当り一次エネルギー消費(石油換算トン/人) 日本 アメリカ1973年 2.99 8.19 1985年 3.04 7.49 1998年 4.04(1.35) 8.07(0.99) ドイツ イギリス フランス1973年 4.28 3.93 3.391985年 4.65 3.60 3.631998年 4.20(0.98) 3.94(1.00) 4.34(1.28)※( )内数字は１９７３年を基準にした比 これらのデータは見方により色々な解釈ができると思いますが，私自身は以下のようにまとめました．○アメリカでは多消費・安定である○日本の消費は１９９０年代にはほぼ欧州並となった○ドイツ，イギリスにける消費はここ３０年ほぼ一定である○日本，フランスにおける消費の増加が顕著である そして日本については今後も消費量の増加傾向が続くのか，頭打ちになるのかが非常に興味深い点となります．また，何故日本とフランスのエネルギー使用量の増加が際立つのか興味深いところです．国内資源に恵まれていないことや原子力発電の利用を積極的に進めている点などが共通点かもしれません．原子力発電の推進がある意味で逃げ道となり節約努力がおろそかになっているようにも解釈できます． いずれにしても，日本のエネルギー消費量は既に欧州並となり，今後，アメリカのようなエネルギー多消費国となるのか，あるいは現状程度の消費量維持を前提としながらその枠の中で豊かさを追求するドイツ，イギリス型となるのかの岐路に立っているようです．
[文責：スリー・アール 菅井弘]
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